「あんな言い方ねーだろ」
ホテルに着いて、部屋へ入った瞬間の、ディーノ一言。
あたしは、ただただ困惑した。
ディーノはむっとした不機嫌そうな顔で、じっとあたしを見つめてくる。
「………はい?(な、何が?)」
まだバッグも置いてないうちに、一体なんだって言うのよ。
車の中でも、なんだか妙に不自然な態度だったし。
あたしの返事が気に入らなかったのか、ディーノはますます表情を歪めて、一言。
「……、着替えてこいよ。メシ、外で食おうぜ」
それからさっさと部屋を出て行ってしまった。
ホテルのレストランでいいじゃない、っていうか朝夕は食事あるでしょフツー。
とも言えず、分かりました、とだけ後ろ姿に言うと、着替えの入ったスーツケースへ向かった。
Love Sick!
Medicine5:モッリエセンセーション!
「…………10代目、お優しそうな方でしたね」
「……あぁ、アイツはいいボスになる」
食事ももうそろそろ終わってしまうけれど、交わした言葉はこれだけだった。
彼の、ディーノの態度は、どう考えてもおかしい。
おかしいんだけども、こうなった理由が分からない。
何かした記憶は、ない。(多分)
何かあった記憶も…………なくない!
そういえば、10代目とリボーンさんとお話ししてた時、なんだかおかしかった。
………、あぁ、でもなんでかは分からないわ……。
何か、何かディーノの機嫌を損ねるようなことがあったんだろうけど。
「………、なぁ、、」
「!あ、はい、何か?」
よく考えてみたら、あたし、ディーノのこと、あまり知らないかもしれない。
妻として、2年も傍にいたのに。
今年で、もう3年目なのに。
「、…………離婚、するか……?」
ディーノのこと、何も知らない
浮気性で、だらしないけど。
すぐ、他の女と寝たり、するけど。
仕事中心で、あまり、家に帰ってこなかったり、するけど。
それでもあたしは、ディーノのこと、
「……、っ、……、」
「………そうですか」
愛して、たのに。
「、離婚したいって、こと、か……?」
「………書類は後でも構いませんか?先に、屋敷を出て行きます」
2年前、観光でイタリアに来たあたしに、ディーノが声をかけてきたのが、最初だ。
でも、よくよく考えてみると、あれが最初で最後のデート、だったかもしれない。
その日のうちに、結婚して欲しい、なんて言われて、結婚してしまった。
流されたとか、仕方なく、なんて言い方ばかりしてきたけど。
ホントは、ディーノの気持ちだけを想って、いつも不安だった。
「……ホテルには、帰りません。あなたが日本に滞在している間は、実家にでも泊まりますから。
………ここからだと、時間もかかりますので、失礼します」
指輪を外す指先が、震えた。
***
モッリエ:妻(イタリア語)
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