「………ここ、ですか?」
「おう」
いやね、ボンゴレ10代目のご自宅って言うから、なんていうか、こう、豪邸を想像してたのよ。
だって、ゴッドファーザーなんて言われてるわけでしょ?ボンゴレのボスって。
結婚する時、9代目のご自宅(というよりもアジトか、あれは)にもお邪魔したけど、豪邸だった。
噴水があって、庭園があって、みたいな感じだったのよ。
でもここは、普通の住宅街じゃないっ!
Love Sick!
Medicine4:どうも、ディーノの妻です……一応。
どうしよう。
普通の住宅街にある、普通の家よ、ここ。
スーパーのビニール袋をぶら下げたおばさまや、ランドセルを背負(しょ)った小学生が通り過ぎていく。
……不審そうな目で、こちらをじろじろ見ながら。
あきらかに、ディーノやロマーリオ達は浮いてるわ。(でも、あたしもその中の一人として数えられるのか)
「ツナ、オレだ」
こんな平和を絵に描いたような所で、マフィアマフィアって、おかしいでしょ。
まったく、世の中どうなってるのかしら。
……いや、あたしもどうかなっちゃってる世の中の一部なんでしょうけども。
「ほ、ホントに奥さん連れて来たんですか?!」
「おうよ。んじゃ、ちょっくらジャマすんぜ」
あら、カワイイ坊や。
中学2、3年生くらいと見える。
でも、こんな子どもがどうしてここに?
マフィア(しかも天下のボンゴレ)だし、なんでもありだ。
10代目の下で働いていたりするんだろうか。
そういえば、ボンゴレ門外顧問のところにも、この子と同じ年頃の男の子が働いていたっけ?
じっと、少年の顔を見つめる。
ススキ色の髪に、大きな目。
きれいな顔だちをしている。
飾らない素朴な感じが、実にいい。
「あ、あの、どうぞ、」
あら紳士。
どっかの誰かさんと違って、レディに対するマナーがしっかりとしてらっしゃるわ。
これも、10代目のご教育の賜物なのかしらね。
じっと注いでいた視線がくすぐったかったのか、なんとも言えない顔をした少年。
いけないいけない、あたしも、相応しい態度でいないと。
少しでも品良く見えるよう、控え目ににこりと笑ってみせた。
「ありがとう」
***
「んじゃ、改めて紹介すんな。コイツが、オレの奥さんの。ツナと同じ日本人だ」
ディーノの言葉に、にっこり笑って、軽く頭を下げた。
少年も、つられたように、あ、どうも、と同じようにした。
「で、こっちがボンゴレの10代目、沢田綱吉だ」
「どうも、お初にお目にかかりま…………は?」
「ひょろっちくてビックリしただろーが、コイツが10代目だぞ、」
ひょろっちいは余計だ!と叫ぶ、少年の声。
おい、大丈夫か?と囁く、ディーノの声。
全部通り抜けていく。 (だって、こんなことってないでしょう!)
「、あ、貴方、が、ボンゴレの……?」
「え?!あ、いやっ、オレはマフィアとかなる気ないんで!」
あ、あたし10代目に、なんて口の利き方……っ!(坊やどころかゴッドファーザーよ!)
「先程は失礼致しました。お初にお目にかかります。キャバッローネのと申します、10代目」
「え、いや、ですから!……あ、どうも。えっと、沢田綱吉です……。(なんかもう、10代目確定だ……)」
しょっぱなから印象悪いよね、あたし。(あぁ、最悪……)
「あ、あの、ディーノさんの奥さん、なんですよね?、さんは」
「え?あ、あぁ、まぁ、そうですね」
「なんだよ、その曖昧な言い方!」
む。
なんだよディーノ。
アンタが先に、10代目はこういう人だって言ってくれれば、こんなことにはならなかったんだよ!
……まぁさ、聞かなかったあたしも悪いけどね。(でも、マフィアのボスが普通の住宅街に住む?!)
けど、今まで、仕事の話とかは全然してくれなかったし。
というかむしろ夫婦間の愛情は、もうとっくに冷めてるようだし。(まだ3年目だけど!)
「「どうも、ディーノの妻です……一応」としか言えないような仲なんですよ、10代目」
リボーンさんが、そうだな、とにやりと笑って。
10代目が、そっ、そうなんですか?と、少し困ったように笑って。
ディーノだけが、少し怒ったように、あたしを見つめていた。
***
愛の病です!
ジャッポーネ編として、ちょこっと続きます。
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