オレはお前が、愛しくて愛しくてしょうがないんだ。




出会った日からずっと、ずっと。
今までもこれからも、永遠に、オレにはお前だけだよ。




お前の気を惹きたいが為に浮気したり。(困らせたし、悲しませたし、苦労もかけた)
それでも、こんなしょうもねー男を黙って支えてくれた。




お前がオレを受け入れてくれて、本当に、嬉しかった。(それなのに、)




やっぱり、お前はオレを許せねーか?
もう、オレの言葉なんか信じたくねーのか?




オレはお前みたいに完璧な人間じゃねーから、お前が何考えてるかなんて分かんねーよ、




Love Sick! Medicine18:ヒステリックとディヴァイド!




が家を出て、しばらく経った頃。
指で遊んでいたチェス駒が、ふと床へ転がった。




もうオレ達は揺るがないと思っていても、言いようのない不安に、飲まれつつある。(信じて、いるのに、)




昨日の、あの、男。
あの男の一言が、どうしても、離れない。








その気持ちもびっくりする程簡単に冷めるぞ








そんなはずがない。
あの日、遠回りはしたものの、オレ達はやっと本当の夫婦になれた。




あれだけ深く繋がった想いが、そう簡単に冷めて、別れてしまうことなんて、あるわけがない。




……じっとしているから、こんなにも塞ぎ込んだ気持ちになるんだ。(そうだ、こんなありもしないこと、)
いつものオレらしくもない。(そうに決まってる)




「……、オレも気晴らしに出るか」
















































































この選択が、間違いのスピードを加速させたことなど、この時はまだ、気づいていなかった。













































***




「っ、ごめんなさい、あたしっ、薫さんには何度謝っても足りないって分かってます、でも、」




がたがたと、身体の震えが止まらない。
どうして、こんなことになったの?




どこから間違ってたの?(それは、)




「いいよ、謝らなくて。その代わり、今度こそ俺と一緒にいてくれ」
「っそれは、出来ません!あたしだけが幸せになるなんて、あってはいけないことだけど、でもっ、」




きっと、あたしがイタリアに来てしまったことから、全ての歯車が狂ってしまったんだ。




あたしがワガママを言わなければ、ディーノと出会うこともなかった。
ディーノと出会わなければ、薫さんを傷つけることもなかった。




全部全部、あたしが悪い。(それでも、)




「なぁ、俺は本当にお前を愛してる。お前しかいらねぇと思ってる。
浮気なんか絶対しねぇし、何よりもお前を優先する。それでもか?」




こんなに優しい人が、あたしを求めてくれても、それでも。




「マフィアの妻なんてのは、お前には似合わねぇよ。そんな危険なところに身を置く必要があるのか?
あんな男より、俺の方が愛してやれる。なぁ、お前を迎えに来る為だけに、この2年費やしたんだ」












それでも、あたしはディーノと、出会いたかった。












「………もう、あの人のいない生活なんて、あたしには考えられないんです。
あたしっ、あの人のこと、ほんとに、あいして、るんです、」




誰よりも何よりも、愛おしい人。(何もかもを失っても、あなたと一緒にいたかった、)




「結果、薫さんを傷つけてしまったけど、でも、もう、離れられないんです……っ!
あたしに出来ることはなんでもします、だからっ、あの人だけは、」


「誰も、お前から奪ったりしねぇよ。………そうか、あの男が、そんなに大事か…………、」




















































































でも、あの男はお前をそんな風に思っちゃいねぇみたいだぜ、















































***




違う、何かの見間違いだ。(じゃあなんで、)
だって、こんなことありえねーだろ。(あの男は、)




とあの男が、キスなんて、そんなこと、(こっちを見て笑った?)




かっと、身体が熱くなった。
鼻の奥がツンとして、目頭が熱い。












と男の座るテーブルまで、走った。












「………っ、どういうことだよ、っ、」




どうして、と言いたげな目で、オレをじっと見つめる。
どうしてなんて、オレが一番言いたい。(買い物って言ったし、すぐ帰ってくるって言った、それに、)






「………あいしてるって、言ったじゃねーか、」






昨日買えなかった、露店の指輪。
ポケットの中で、それのボックスを握り締めると、情けなくなった。(オレは、)




「ディーノ?……、どうしてここに、」
「お前こそ、なんでコイツと一緒なんだよ」
「……それはっ、あたし、薫さんに謝らなくちゃいけないことがあって、」




そんな風に、親しげに名前呼ぶなよ。
お前の中にいる男は、オレだけじゃなくちゃ嫌だ。(お前を、こんなに愛してるのに、)































































「……………、日本に帰れ」








「っどうして、そんなこと……!待ってディーノ、話を聞いて!」
「裏切ったのはお前の方だろ」




もう、振り返れない。(もう、ずっと離れないと、信じてたのに、)




「待ってっ、ディーノ!お願い!」
「やめろ、追いかけたって仕方ねぇよ」
「やだっ、放してっ!いやっ、ディーノ!……お願い、行かないでっ、ディーノ……!」




行かないで、ディーノ




お前の声を聞いて、立ち止まれば。(それだけ余裕があったら、)
お前の話を聞いて、ごめんなって言えたら。(それだけ冷静だったら、)































































お前を失わずにいれたのか――――――――――――?
















































***




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