「……父が何を言ったかは存じませんが、私は、彼と別れる気なんて、ありません」
喉が、渇いてる。
痛い、くらいに。
「この男と一緒になる時にも、同じように誠治さんに逆らったのか」
薫さんはそう言って、一歩、私に近づいた。
ディーノは、何も言わない。
「っ、わた、しは、「もういいだろ」
そうはっきりと、ディーノが、言った。
そっと、指先が絡む。(どうしてこんなに、)
「何があったかは知らねーし、知ろうとも思わねー。大事なのは、今がオレの隣にいることだ。
それ以外はなんでもねーんだ。……だから、を泣かせるようなことだけは、どんなことでも、」
許すことはしないし、出来ないと、彼は、そう、言ってくれた。
Love
Sick! Medicine16:パニックと乱闘!
「っく、ははっ、あー、お前も可哀想な男だな!この女の腹ン中知らねーからそう言えんだよ。
俺を悪者って風に認識されちゃ困るぜ。俺は被害者でこの女は加害者なんだよ」
ディーノの指先が絡んだ方じゃない左手で、ぐっと、拳を握る。
加害者という言葉だけが、頭の中でうるさく響く。(でも、間違ってなんかない、)
「……あんたの話からすると、大体予想は出来る。けど、オレはの過去には興味ねーんだ」
薫さんの表情が、変わった。
拗ねたような、顔。
「………まぁ、全然気にならねーってわけじゃねーし、知りたいとも思う。けど、聞かねーよ。
オレなんかの気持ちより、の気持ちの方がずっと大事だからな。守ってやんなきゃなんねー」
目の奥が、つんと熱い。
どうしていつも。
どうしてこうやって。
あなたはあたしがその時一番欲しい言葉をくれるの?
「へぇ、そうかよ。随分とご執心なわけだ」
「ま、オレの一目惚れから始まったわけだしな」
「だけど、その気持ちもびっくりする程簡単に冷めるぞ」
どくんと、心臓が大きく弾んだ。
また、喉が渇きを覚え始める。(痛い、)
「……どういう意味だ?」
「そのまんまだ。この女はお前を捨てるぞ」
「オレの気持ちが冷めることなんかないし、はオレを捨てたりしない」
薫さんと、視線がかち合った。(どうしてそんなに、)
「お前はに酷く傷つけられて、失望して、燃え上がってた気持ちは一瞬で消える。
そしてはもう一度選択を迫られ、今度こそ正しい道を選ぶ。……絶対にな」
こわい。
こわい。
怖い。
怖い。
どうしてそんなに、うれしそうなの―――――――――?
「はオレを傷つけたりしねーし、オレはに失望することもねー」
「そう思ってればいい。けど、この予言は絶対だ」
右手の指先に、力を込めた。
「………オレがこんなこと言うのはなんだが、あんた、のことが好きなんじゃないのか?」
「っディーノ!」
薫さんは、不自然なくらいに表情を歪めた。
「オレがを好きかって?っは、笑わせんな」
「違うのか?ならに関わんないでくんねーか。オレはを泣かせたくねーんだよ」
「関わるな?泣かせたくない?オレはお前みたいに恋愛ごっこ、夫婦ごっこがしたいんじゃねーんだよ。
のことが好きかだと?ふざけたこと言うなお前。好きじゃねーよ。むしろその真逆だな。
お前と違ってオレは、この女が死ぬ程憎らしいし、殺してやりたいとさえ思うよ」
がくっと、膝が折れた。(もう、ダメ、だ、)
「っ、!?」
「そうやって被害者ぶるとことかな、もう反吐が出そうだ」
「おい、いい加減にしろよ!」
涙が、止まらない。
ごめんなさい。
ごめんなさい。
いくら謝ったって、頭を下げたって、許してくれはしないだろうし、許してもらおうなんて思わないけど。
でも、こうしてあたしに縛られてるあなたを見るのは、あたしだって悲しいんです。
あたしを憎むことでしか自分を保てない程に傷ついたなら、いっそ本当にあたしを殺してくれたっていい。
そうよ、自分の幸せを守ろうとするなんて、あたしはしちゃいけない。(この人を、差し置いて、)
「、俺はお前が本当に憎いよ。なんでお前みたいな女が、こうして生きてられるんだろうな」
「っテメーいい加減にしろって言ってんだろ!、立てるか?」
「また逃げるのか、お前」
「もう黙れよ!……、もう今日は帰ろうな」
そうしてディーノがあたしを抱き上げた時、薫さんの唇が、告げた。
***
大変長らくお待たせしました!
愛の病16話でございますー。
前回の書き忘れ:誠治さん→せいじさんです!(ヒロインのパパ)
次回で、物語を進展させる予定!
ヒロインとディーノさん。
ヒロインと薫さんの関係、過去。
などを中心にしつつ、ここらで愛の試練といきたいと思います!
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