「久し振り、




この、声。(違う)
この、感じ。(……違う。違う違う。だって、ここにいるわけ、)




「俺のこと、もう忘れた?」




どうして?
なんで?




「、どうして、ここに、いるんですか?……薫さ、ん、」
「……カオリ?……、知り合い、か?」




「イタリア人の男と結婚したっていうのは、本当らしいな」




ディーノが、あたしの前に立った。(やめて、)
薫さんが、すっと目を細めたのが、見えた。(やめて、やめてディーノ、)




「あんた、のなんなんだ?」
「おい、不当な占拠者が何言うんだよ」
「、不当な、占拠者……?」




薫さんの意地悪そうな笑みが、あたしに、向けられる。(言わないで、)




、お前何も言ってないのか?」
「どういう意味だ。……、?」




やめて。(言わないで、)
やめて。(お願い、ディーノにだけは、)








「今お前が当たり前みてぇな顔して腰据えてる場所は、本来なら俺のモンなんだよ」








Love Sick! Medicine15:パニックマスキオ!








「、どういう、こと、だ?」




ディーノの声が、震えてる。
感情を、一生懸命押し殺してるみたいに。




「、ディーノ、」
「教えてやれよ、。何も知らないままじゃ、旦那サマが可哀想だろ?」




怖い。(薫さんの、目が、)
怖い。(ディーノの、視線が、)




だって、やっと、分かり合えたと、そう、思ってたのに。(失いたく、ない)




「っ、」
「……?」
「お前が言えないなら、俺が言ってやろうか?」




身体の震えが、止まらない。




「っさっきからなんなんだ、あんた」
「だから、それを説明してやろうかって言ってんだろ。お前、知りたくないのか?俺との関係」
「、それはっ、」




ダメ。
ダメよ、ディーノ。(お願いだから、)


ズルイのは分かってる。
いつか、きっとあなたが知る日がくるのも、ちゃんと、ちゃんと分かってる。




でも、お願いよ、ディーノ。




知らないでいて。
聞かないでいて。(だって、知ってしまったら、)

















































きっと、もう元には戻れない――――――――。














































「しおらしく振る舞って、悲劇のヒロインってか?……いい加減にしろよ、
お前の身勝手な選択で、俺がどれだけ苦しんできたか分かってんのか?」


「っ、ごめ、なさっ、」
「………おい、があんたに何をしたか知らねーが、女一人にずいぶんな物言いじゃねーか?」
「はっ!イタリア男は女に弱いんだったっけか?……テメェはこの女が俺にした仕打ちを知らねぇだろ」




あの日の記憶が、鮮明に、頭の中を駆け巡った。
全てを捨てて、全てを得ることになった、あの日の記憶。




「――――――どういうことか、私が納得出来るよう説明してみなさい」




もう、戻れない。(仲良かった親子には、もう)
でも、引き下がれない。(だってあたしは、)




「……、他に一緒になりたい男性が出来たので、高見さんとの縁談はお受け出来ません」




「ふざけるのもいい加減にしろ!私が今までどれだけお前を大事にしてきたか分からんのか!!
高見との縁談を断って、他の男と一緒になる?それも、イタリア旅行で出会った男とだと?
お前はどこまで私を馬鹿にすれば気が済むんだ!!私は絶対に許さんぞ!」




絶対に、絶対に。





「なぁ、俺がどうしてここにいるのか、分かるか?」
「っ、薫さっ、」








「誠治さんに言われて、来たんだよ。の正当な夫として、お前を迎えに来たんだ」








これで全部。
何もかも。













































終わり―――――――――。
















































***


薫は「かおる」じゃなくて「かおり」です笑。男性ですけども。あえての「かおり」で。

ヒロインの過去も絡まってくる第2章!
色んな人が動きます。

混乱が混乱を呼び、嘘が真実になる

そんな感じに進めていきたいと思っております。
今後とも、応援よろしくお願い致します!


マスキオ:イタリア語で男性




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