「、」
首筋に顔を埋めて、名前を呼ぶ。
は、くすぐったそうに笑った。
「ん、ディーノ、」
耳元で、の声が甘く弾ける。(ずっと、これが欲しかった)
そのまま首筋に唇を寄せて、キスマークを残す。
「――――――もう、こんなことしてるヒマがあるんだったら、早く仕事行ってよね」
赤くなった顔に、思わず口元が緩んだ。(やべ、仕事行きたくねーわ)
とりあえず頬にキスをして、分かった、とだけ返す。
そしたら、さっさと仕事終わらせて、今日は早く帰るしかないよな。
Love
Sick!Medicine12:ベタ惚れダーリン
【―――――――――ってことだから姐さん、ボス迎えに来てやってくれ】
時計を見て、溜息。
だって、仕事に行ってまだ3時間しか経ってない。(ロマーリオの疲れきった声に、更に溜息)
「………とりあえず迎えには行くけど、あたしが行くまでにキツく叱っといてちょうだいね」
【俺なんかがとやかく言うより、姐さんが言った方が効くと思うぜ。……それより、】
「えぇ、すぐ行くわ。だから大人しく待っててって言っておいてね」
通話を終えて、また溜息。
あのバカ、一体何考えてんのかしら。(……何も考えてなさそう)
ま、今はそれより早く行かないと、ロマーリオ達が可哀想ね。
とりあえずきちんとした服に着替えて、髪も結い直してから行かなくちゃ。
ボスの妻はだらしない、なんて言われちゃお終いだし。(そういえば、車のキーどこだったかしら)
***
「――――――――――ボス、姐さんに連絡したぜ。大人しく待ってろってよ。ったく、仕方ねぇな」
デスクに突っ伏したまま、頷く。
ロマーリオの溜息に、ものすごく申し訳ない気持ちになった。(実際申し訳ないんだけど)
「……、怒ってたか?」
「カンカンだったぜ。また離婚話が出るんじゃねーか?」
「うっせぇなもう!………、早く来ねーかなぁ」
電話したばっかだし、そんなすぐ来るわけねーんだけどさ。(そりゃそうだけど!)
「しっかしまぁ、気になって仕事が手ぇ付かねーたぁ、お熱いじゃねーかよ」
「……だって、やっとオレに愛してるって言ってくれたんだぜ?今はもう1秒だって離れたくねーよ」
とか言ってると、余計逢いたくなってくんだよな。(!)
頭ん中こればっかりだ。
こんなんじゃ、に愛想つかされちまうかなぁ……。(………そしたらどうすんだオレ)
「ま、姐さんも迎えに来てくれるっつったんだし、おんなじようなモンじゃねーのか?」
「……………、そ、うか?」
「(……単純だな)そうだと思うぜ」
***
「あ、何か持っていった方がいいのかしら?」
いつもディーノがお世話になってるわけだし、お菓子とか、お茶とか。
ま、皆お菓子って年じゃないし、持っていくならお酒よね。(んー、この辺に酒屋さんってあったかしら?)
「…………この辺だと、近くてココしかないか。……仕方ない、30分くらい遅れてもいいわね。
なるべく早くとは言ったけど、時間は指定されてないし。ディーノも子どもじゃないし」
ナビをセットして、ディーノの前にワインを挟む。
一応連絡を入れようかとケータイを取り出して、止めた。(気を使うなって言われちゃうし)
あ、樽で買うとして、どうやって持っていこうかしら?
最低2つ、3つは買わなくちゃいけないし、入らないわよね……。
あぁ、軽じゃなくてワゴンにすればよかった。
***
「…………ロマーリオ、まだか?」
「あぁ、ちょっと遅いな。ま、女は仕度がかかるもんだ、大人しく待ってろよ」
そうだよな、とは言ったものの。(マジで遅いと思うんですけど)
だって、ウチからここまで20分もかかんねーだろ、車なら。(なのに、もう30分は経った)
「そわそわすんなよボス。堪え性がねーと、姐さんに嫌われるぜ」
「っ、ソワソワなんかしてねーよ!」
「(……単純)そーかよ」
に嫌われるのは、嫌とかいうレベル超して嫌だけど、心配なもんは心配だ。(トラダートの件があったわけだし)
***
「そうね、じゃあこれにするわ」
「さすが、お目が高いね。スィニョリーナ」
お金を渡す瞬間、さりげなく手を重ねられた。(うわ、そういう属性か)
さすが、手が早いわね、イタリア人。(寒い寒い)
「(結局樽4つね……)……配達、とかはしてないのよね?この店」
「あぁ、配達はお断りしてるよ」
「………そう(時間はかかっちゃうけど、一度戻ろうかしら?それでワゴンで来れば問題ないし)」
「そうだね、ベッラな君が困ってるんだ、助けないわけにはいかないな。僕が車を出してあげるよ」
彼はそう言って、すっと手を差し出してきた。
何よ、握れっていうの?(素面でここまでキザなのは、きっとイタリア男だけね)
「そうね、無償でやって下さるんなら構わないわ」
***
「……ロマーリオ」
「確かに遅すぎる。急かすようで悪いが、連絡入れてみるか」
「いや、オレがする」
ケータイを取り出して、リダイヤル。
無機質な機械音を聞きながら、の声を待つ。(ちょっとくらい文句言ってもいーよな?)
【―――――――――ディーノ、運転中よ】
「分かってるよ。なぁ、今どこだ?」
【あと少しよ。もう所有地の道に入ったから】
「……早く来てくれ」
【今急いでるところよ。あ、それと、何人か力のある人をゲートまで出してくれる?】
「いいけど、どうした?」
【ちょっとね。じゃ、切るわね】
「……、オレのこと愛してる?」
【………運転中って言ってるでしょ?ふざけてるヒマはないの】
「言ってくれたら切る」
【……もう。……愛してるわ、ディーノ。じゃあね】
プツっと音を立てて、通話は終わった。
ヤバイ、ニヤニヤしてる。(愛してる、か)
「あんまニヤニヤすんなよ、ボス」
「わぁーってるよ。なぁ、何人か玄関ゲートに出してくんねーか?なんか人手がいるらしい」
「………あぁ、なるほどな。じゃ、そっちは手配しとくから、ボスは帰る仕度でもしときな」
「悪い、頼んだぞ」
「任しとけ(ボスもまぁ、気の利くいい嫁さんもらったよなぁ)」
***
「―――――――――こんなこと仕事内容にないんでしょ?ご丁寧にありがとう」
大きなワゴンから出てきた彼は、人の良さそうな笑みを浮かべた。(………女ウケ考えてる笑い方ね)
とりあえずあたしも笑ってみせると、馴れ馴れしく手を握ってきた。(……なんなのさっきから)
「キミの役に立てたのなら嬉しいよ、スィニョリーナ。ねぇ、お礼としてこの後――――「!!」
………大人しく待っててって頼んだじゃない。(ロマーリオったら、きちんと言ったのかしら)
あらあら、あんなに急いで走ってきて。(仕方ない人ね、ホントに)
「もう、大人しく待ってて言われたでしょ?ロマーリオに」
「うっ、そ、そうだけど……っ」
「……仕方ないんだから」
甘えるように抱きついてくるディーノの髪を、そっと撫でる。(いい年して、恥ずかしい)
そして、彼の甘いハンサムフェイスにヒビが入った。
まぁ、比べればディーノの方が、それなりにイイ男、だし、仕方ないか。(比べれば、ね、)
「恋人かい?」
「まさか。違うわ」
「、誰?」
「酒屋さんの人よ。樽を運んでもらったの。あたしの軽には積めないから。それだけ」
「……それで遅くなったのか?なぁ、」
「そうよ。もう、人前でベタベタしないでって言ってるでしょ?」
「な、仲がいいんだね、二人」
引きつった口元に、心の中で吹き出した。(ついにボロが出たわね)
あたしは、これ以上ないってくらいに優しく微笑んで、言った。
「えぇ、あたしが溺愛してるダンナだもの」
***
かなり久々更新ですが、大丈夫でしょうか?
今回はめっちゃ長いです;
もうちょい短く収めるはずだったんだけどな;
とりあえずこんな感じの二人。
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