「あ、姐さん、どうか、どうかご勘弁を!」





ロマーリオを先頭にして、20人くらいのスーツ男が追ってくる。
情けないにも程があるし、火に油。

それにしても、なんて溜息が吐きたくなる光景だろうか。
キャバッローネの名が泣くわ!
いい年した大の男が、丸腰の、しかも女にへこへこしてるんだから。

だいたいね、いくらボスの命令だからって黒を白と言い張るの?


部下はなんでもボスの言うことを聞くのが仕事なの?違うでしょうが!
間違いを正すためにいるんでしょ部下っていうのはねぇ違う?!


……どっちが悪いかなんて、考えるまでもなくはっきりしてるじゃない!

と、怒りのまま怒鳴り散らしてやりたいけど、あいにく思慮深い大人に育ったあたし。
よく考えれば、後ろを必死の形相で追いかけてくる彼らだって被害者だ。
仕事といえば主人の尻ぬぐいだなんて、由緒正しいキャバッローネの恥だと思ってるでしょう。
そう考えればやっぱり可哀想!あんな男に付き従わなければならないなんて!




いっそのこそ、あたしがファミリー全員にお暇をだしちゃおうかしら?




なんてことを考えていたら、問題の部屋に到着。
ここまで来てしまっては、さすがにもうロマーリオ達も諦め顔だ。


まぁ、あたしの立場を考えれば、止めることなんて不可能だものね、仕方ないわ。
それに、あたしが出てった方が問題は素早く解決するわけだし。
本音を言ってしまえば、鬼ごっこなんてしたくないでしょう。(この男の命令がなけりゃね!)








あたしは勢いよく、扉を開けた。






大きなベットの上に、仲良く寝そべっている男女。


完全にヤることヤった後だ。
あまい雰囲気に、眩暈がしそう。
ま、もうこのくらいでふらふらするような純情さはとっくの昔に捨て置いたけどね!




あたしを見た瞬間、あからさまにしまった!という顔をしたこの金髪男のせいで。









「あなた?こんなホテルのベットで、しかも女と一緒に、何をしてらっしゃるの?」










Love Sick! Medicine1:離婚の危機












「ま、待て、、違うんだ、」












浮気男の常套句「ま、待て、違うんだ、」。
実際現場を押さえられた修羅場で、そんな言い訳言えるわけないだろう。
ドラマっていうのはやっぱり作り物!


なーんて思ってたけど、この男のおかげでそんな考えは消えうせた。(もう2年も前に)


浮気男っていうのは超がつくバカだから、筋の通った嘘がない言い訳しか思いつかないのだ。
バカだから。


違うんだ?違うってなにが?笑わせんな!と冷笑を浮かべる。
ベットの上で、女と一緒で、しかも裸で何を言う。
今更慌てたって遅いんだよバカ野郎。





「……もう分かってますから、結構です。実家に帰らせていただきますので、そのおつもりで」





にっこり笑ってやると、ディーノは真っ青になった。
だらしない、浮気するんならそれ相応の覚悟しろっつってんだろ毎回。

まさかの妻の登場に、ビビった様子を見せていた女も、今は明らかに引いた顔をしてる。
はっ、ざまぁみろっつーの!
だいたいアンタみたいな男を不倫相手に選ぶ女なんか、みんな遊びに決まってんだろへなちょこ!!






「ちょ、ちょっと待ってくれ!オレ「名前で呼ばないでいただけます?」






あたしの後ろで、ロマーリオ達がビクっとした。
そりゃあ何回見ても慣れはしないでしょうよ、浮気現場取り押さえた瞬間の修羅場なんか。
……見たくもないだろうけどね、ボスのこんな情けない姿。
でも、あたしはなんとも思ったりなんかしないわ。
だってそうでしょ。
















































悪いのは全部、女癖の悪いディーノなんだから。



















































というかまず、家に帰らないアンタの言い訳を、毎回一生懸命考えてる部下の身にもなれっつーんだ。
あたしは一応アンタの奥さんだから、皆あたしを傷つけないような言い訳を、毎回考えてくれてるんだよ。
それを聞いてるこっちだって、何も思わないわけないでしょうが。(考えてみろ、その色欲にまみれた低能をフルに作動させて)






「――――――――――――アンタみたいな最低男にかける言葉なんか、もう何一つないわ。
慰謝料取ってやろうなんて思ってませんから、離婚届にはさっさと判を押して下さいね」







結婚3年目で、ついに破局か。
……これでも随分頑張った方だと思うけど。

コイツの女癖の悪さときたら、イタリア一どころか宇宙一だ。
あっちにフラフラこっちにフラフラ、だったら結婚なんかすんなっつーの!

おかげであたしは、2年もの時間を無駄にしちゃったわ。
ま、まだやり直しはきくし、何十年と経つ前に決断してよかった。















「………………っ、、頼む、離婚だけはカンベンしてくれ……。
ど、土下座でもなんでもすっから、離婚は、オレ、したくない、」














はっ、パンツいっちょで、マフィアのボスがなんですか、だらしない。
これこそキャバッローネの名折れだっていうのよ。








「あなたはね、女にだらしがないんです。こんなこと言ったって、もう昔からだから今更ですけどね。
そういうあなたを叱る人は、あたし意外にいないんですか。毎回毎回、こうやって懲りずに」











ディーノの浮気癖は病気みたいなものだけど、あたしもホントは、人のことを言えやしない。











「、わ、分かってる、ごめんな?…………でも、これが原因で、がオレと別れるって言うなら、
オレ、もう浮気なんか絶対しねーから。………オレ、お前のこと、ホントに、本気で愛してるよ」














































何度浮気されたって、こうやって謝られると、許しちゃうんだもん。







































































***


急に思いついて、急に連載開始笑。

今回ヒロインさんは可哀想な感じですが、次回から愛満載でいきたいと思ってます。
ディーノさん目線で、浮気について語っていただきましょう!




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