Love Sick!番外編




‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐ O月X日(月・快晴)

キャバッローネに来て、早3日。
いくらボス直々にスカウトされたといっても、オレは日本人。
受け入れてもらえるかどうか心配だったが、それは余計だったようだ。
先輩方はみんな優しくて、本当の家族みたいにオレに接してくれる。

日本人はオレだけと思っていた。(だってイタリアマフィアなわけだし)
でも、いざ屋敷に入ってみれば、意外に日本人も多くいたからビックリだ。
それに、聞いた話じゃボスの奥様も日本人らしい。
オレはまだお会いしたことがないが、かなりの美人だそうだ。

今日は、その奥様について、先輩から聞いた印象深い話を記録しておく。

‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐‐

「ロマーリオさん!」


オレの教育係である先輩、ロマーリオさんの後姿を見つけた。
どの先輩もみんなイイ人だけど、やっぱり初日からお世話になってるこの人が一番話しかけやすい。


大きな声で名前を呼んで、駆け寄った。


「おぅ、どうした?新入り」
「あ、はい!あの、気になることがあって、」


言葉を濁すオレを見て、ロマーリオさんは面白そうに笑った。


「なんだ?早速気になる女でも出来たか?」
「違いますよ!そうじゃなくて、ボスの奥様のことです」




ボスの奥様、とオレが言うと、ロマーリオさんはニヤニヤ笑いをやめた。




「姐さん?あぁ、お前はまだ会ったことねーのか」
「噂ではよく聞くんですけどね。日本人だってことと、美人だってことしか知りませんけど」


そうだ。 昨日知り合った日本人のメイドの子も、奥様はとても素晴らしい方だって力説してた。(軽く2時間は付き合わされた)
先輩ファミリーも、よく奥様の話をしてるから、まぁホントにイイ人ではあるんだろうけど。


……それにしても、あのメイドの子は、もうなんか崇拝っていう感じだったなぁ……。(奥様はなんかの教祖かよ)


「屋敷だけじゃねぇ。屋敷の外でだって、姐さんの噂が止むことなんてねぇ。
その噂通り、姐さんはボスにはもったいねーくらいのお人だよ」


「オレは、ボスだって素晴らしい方だと思いますけど」

























あ、やべ。 と思った時にはもう遅くて、ロマーリオさんはなんとも言えない顔をしてオレを見ている。(やべえ……!)












「あ、あのっ、「姐さんとボスは、つい最近まであまりいい関係じゃなかったんだ」












呟くように、ロマーリオさんは語り始めた。
オレがイタリアに来る数週間前に起きた事件のことを。




***




「――――――――姐さんは、ボスの為、キャバッローネの為に、命を懸けられるような女だ」




そういえば、駅前の空きビルから飛び降りた女性の話が、マスコミを騒がせてた時期があった。
飛び降りた女性は、中学生くらいの少年に受け止められて、何かから逃げるように去っていった。
そしてその後を、スーツ姿の男二人組が追っていった、という事件だ。
しかし、女性と少年、男二人組の行方は知れず、オレがこっちへ来る頃には、もうその話は消えていた。




「トラダートといえば、過激派で有名だと聞いています。……勇気のある方なんですね、奥様は」
「まぁ、その辺の女と違うことは確かだな。マフィアのボスの妻として、なんの文句もつけられねぇよ」




「………オレ、一度でもいいから、奥様にお会いしてみたいです」




ロマーリオさんは、ビックリしたような(実際ビックリしたんだろうけど)顔をした後、豪快に笑った。
腹を抱えて、ひーひー言うロマーリオさん。
オレはなんだか恥ずかしくなって、なんで笑うんですか!とムキになって言った。




「っ、くくっ、悪い悪い、」
「……べ、別に構わないですけど、」
「オレも、お前みたいなヤツにはぜひ姐さんに会わしてやりてぇが、ボスが許さねぇだろうからな」













………、ぼ、ボス……?















「ぼ、ボス、ですか?」
「そりゃもうベッタ惚れだからなぁ、姐さんに。それなりに信用出来る野郎じゃなきゃ、ボスは姐さんに男なんざ会わせねぇ」





マジか。





なんか、オレの中のカッコよくて完璧なボス像が崩れていく……。
いやまぁ、それでも憧れだけど!(仕事も出来るし、なんかもう全部カッコイイだろあの人!!)







「部下にも見せたくねぇって言ったと思えば、マフィア社交界にも出さねぇ。
そんなんだから、キャバッローネの深窓の佳人!なんて言われてんだ」


「へ、へぇ……」
「姐さんに会うことが許されりゃ、お前も立派なファミリーだな!ま、頑張れよ」
「あ、はい。頑張りますので、ご指導の程よろしくお願いします!先輩」
「おぅよ」




***




「………はぁ、」




これからここで、上手くやってけんのかなぁ?オレ。
なんか、改めて回想してみたら、ちょっと気持ち沈んできちまったよ……。




だってなんか、あんまイイ意味での「印象深い」じゃなくね?(……ここだけ書き直すかな……)

















「どーした?溜息なんか吐いて」


























「ぼぼぼ、ぼ、ボス!!」
「おぅ。ん?なんだ、日記か?」
「え、あ、はい!」
「……何か悩みでもあんのか?」
「いえ!全くないです!!」
「そっか。ま、何かあったらすぐ言えよ?オレはキャバッローネの大黒柱だからな!」






「は、はい!!(やっぱボスかっけー!!)」















































***


SubTitle Font:軟式やま部屋


元拍手です。
新入りくんを気に入りすぎてレギュラー化決定!(うわぁ)
Medicine?(番外編):熱愛メモリーズ!
に早速登場しました。
そちらもぜひ!(CMか)




top