「、っ、もう、やめて、」
聞こえる声、見える画像、全てが私を混乱させる。
どれもモノクロなのに、どうしてこんなにも鮮やかに映るのか。(気持ち、悪い、)
眩しすぎる日差しに、くらくらする。
頭痛も吐き気も眩暈も、もう、止まらない。
意識を手放す瞬間、誰かの影を、見た気がした。
純粋な黒
ぼんやりとした視界が、徐々にクリアになっていく。(ここは、)
身体を起そうとして、やめた。
米神が、ずきりと痛んだ。
「っ、よかった、ずっと目を覚まさないから、心配で……っ、」
頭痛。
吐き気。
眩暈。
「早く出てって、」
「、、」
「早く出てって言ってるでしょ!」
沢田綱吉
いつも、私を苛つかせる男。
この男と同じ空間にいるだけで、気分が悪くなる。(それを知っていながら、)
「でもっ、「だから言っただろ、沢田綱吉。そんな女、早く殺してしまえって」
鋭い、男の声。
任務でどこか異国へ行ったと、誰かに聞いた気がする。(六道骸だったか、山本武だったか、)
そんなことはどうだっていいけれど、どうしてこの男が、ここへ?
私をひどく嫌って、いつもまっさらな殺意を向ける男。
顔を合わせる度、私の死を望んでいると呪詛を吐き続ける男。
「……ヒバリさん……、もう、帰ってたんですか」
「なんだい?その言い方は。まるでまだ帰って欲しくなかったようだ」
「………そうですね、出来れば」
「それは、僕が彼女を傷つけるから?」
大きな音を立てて、沢田綱吉が座っていた椅子が、倒れた。
どくりと、心臓が脈打つのが聞こえた。(どうして、)
「ヒバリさん、今すぐこの部屋から出て下さい」
「その必要はないよ。……君が、出ていけばいい」
私に、まっさらな殺意を向ける男。
私を憎む、男。
ボンゴレ10代目、最強の守護者と呼ばれる、男。(どうして、忘れていたのか、)
「出ていかないのなら、力づくでも」
「ワオ、彼女の前でそれをするのかい?」
あの日、絶望に沈む私に手を差し伸べた、男。(そうだ、彼は、)
「…………雲雀、恭弥……、私が、ここへ来た日の夜、」
「そうだよ。君の、本当の味方。僕だけが、君を暗闇から助け出してやれる」
「っヒバリさん!何を言う気だ!!」
全ての音が、沢田綱吉の怒声さえ、ぼんやりと霧がかっている。
くすりと、雲雀恭弥は笑みを零した。
そうだ、この男は、私を助けると言った、男だ。
彼は、暗闇から逃れる、たった一つの方法を、私に教えると言った男。
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