あの男、沢田綱吉が私に贈ったというのが気に入らないけれど、この庭そのものは、気に入っている。




どこにでも咲いているような花から、誰でも知っているような花。
北の花から南の花まで、様々な種類の花が身を寄せ合うようにして共に存在している。




暖かい光が、溢れる場所。(私には、あまりにも不釣り合いだけれど、)










純粋な黒










さん」




曖昧な笑いと、パラソル。
どこまでも憎らしい男。(沢田、綱吉、)




「沢田綱吉の犬も大変ね。どんなに仕事があっても、こんなくだらない命令まで聞くんだもの」




そう言うと、獄寺隼人はひどく、傷ついたような顔をした。
けれど私は、超能力者でもなく、呪われた赤ん坊と忌み嫌われた男とも違う。




この男の本心なんて、分からない。(分かろうとも思わないし、分かりたくもないけれど)




「いえ、これはオレが勝手にしてることです。今日は日差しも強いですし」
「私に構ってる暇があるなら、どこかのファミリーを根絶やしにする計画にでも精を出したら?」
「……さん、お茶とお菓子もありますよ」




沢田綱吉と同じくらい、腹が立つ。




私を見ると、いつも悲しそうに笑う。
怒りの感情の他、全てを消してしまった私が見ても分かるくらいに、濃い悲しみの色。




同情しか思いつかない。




あの憎らしい男や、山本、武と一緒の時には、ころころ表情を変えるくせに。
私と一緒の時だけ、いつも同じ顔。




気に入らない。




そんなに私が可哀想に映るなら、ここから出して。
私を見る度そんな顔をするなら、私に近づかないで。




「……うざったいわ、あんた」




どうして私に構うのか、全く見当がつかない。
山本武とはいつも、楽しそうにしていて、それで、いいじゃないかと思う。




「………山本には甘えられても、オレには甘えられませんか?」




強すぎる日差し。
真っ白なその光に、獄寺隼人の銀髪が淡く光る。




「私がいつ山本武に甘えたって言うの?」
「感情を露わにして取り乱す時、貴女はいつも山本だけ拒まない」
「山本武だって、いつか殺すわ」












「きっと貴女は、山本は、殺せない、」












どきりと、してしまった。(どう、して、)
指先に、上手く力が入らない。




「っ、あんたも山本武も、沢田綱吉も!殺すわ、絶対に、殺すの、」
「、さん、」
「うるさい!全部全部いらない!……全部、いらな、っ、」




両手で顔を覆っても、光の侵食は続く。
じわじわと、ゆっくり浸み込んでは浸透してしまう。




「……、さん、」




少し掠れた声が、耳に障る。
脳に、心臓に、引っかかっては、残ってしまう。




「………私に構わないで」




なんとかそれだけ口にして、獄寺隼人に背を向けて歩き出した。
日差しに、くらくらしながら。




「っ、痛い、」




米神に手を当てて、ぽつりと呟く。
神経が、血管が、疼くような痛み。


こうした頭痛が、最近度々ある。
米神の辺りが、なんだかズキズキと痛むような頭痛。




それはやがて吐き気を伴って、そして、大事な部分が欠けた映像が、何度も繰り返し再生される。




「お前は―――――――――の所有物なんだよ」
「さぁ、こっちへおいで?可愛いガット」





男の、声。




「いや……、いやよ、やめて、」
「触らないで!やだっ、誰か!誰か……!」





私の、叫び。




「名乗れるような名前はないよ。……でも、忘れないで欲しい。―――――――――から」
、か。……うん、綺麗な名前だ。君にぴったりだよ」





優しい、誰か。




「っ、どうしてこんなことに……、―――――――――だけは、絶対に許さない、」
「もう他に方法はない」
「それしか方法がないとしても、それにだって対価は必要なはずだ」
















































対価は、彼女の―――――、です。





































































***


今回は獄寺くんがメインに。
やっぱり、ファミリー内でヒロインを知る人達からすればたけしは「特別」っていう認識があるんですね。
むしろ、ボンゴレ幹部達の中では浮いてるくらいなんです。

なんだかんだでヒロインに受け入れられてるたけしに、獄寺くん嫉妬。
ヒロインはヒロインで、ファミリーに対する態度と自分に対する態度が違うことに嫉妬。


つまり擦れ違い。


次回で綱吉、それとリボーンか恭弥さんを出したいです。


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