「、お前は本当によく出来た子だ」
ボスはいつも、そう言って優しく頭を撫でてくれた。
お前はいい子だ、お前は何でもよく出来る子だと、いつも。(だから私は)
褒めてもらいたくて、一生懸命だった。
「ボス、お茶を」
「あぁ、ありがとう。の淹れる紅茶は美味いからなぁ」
私が欲しいものを、与えてくれた人。(だったのに)
どうして。
どうして。
どうして。
今、私を助けに来て下さらないの?
暗闇が。
独りきりが。
貴方を失った日を思い出させる、雨が。
怖くて。
苦しくて。
仕方ないのに。
純粋な黒
「っ、ボス、ボス、ボス!私には、貴方だけだったのに……!」
割れた窓から、強い風と雨粒が入ってくる。
カーテンが、髪が、舞う。
「」
「私にはボスしかいないの。私に与えることが出来るのも奪うことが出来るのもボスだけなの。
ボスさえいてくれれば、私は何もいらないの。全部全部いらないの!ボスがいなくちゃ、」
涙か雨か、どちらか分からない透明な液体が、私の頬を伝う。
髪も身体も、全て、忌々しい雨に濡らされていく。(それを防ぐ術は)
「全部全部全部壊してやるわ!あんたの大事なもの全部壊してあげる!殺してあげる!
それをあんたが邪魔するって言うのなら私を今すぐ殺しなさいよ!!簡単でしょ!?」
「……、お願いだ。落ち着いて、俺の話を聞いて」
「いやよいやよいやよ!あんたの話なんて聞きたくないっ!」
音が溢れている。
私の叫び。
雨音と風の声。
近づいてくる、無数の人影。
「10代目!何が……!」
「……、獄寺君、悪いけど救護の人を呼んでもらえるかな?」
「は、はい、」
獄寺隼人は、ちらりと私を見た。(様々な感情の入り混じった、目)
「っ、いやぁあぁああぁぁぁあああっ!独りは嫌なの!暗闇が怖いの!
どうして分かってくれないの!?怖い怖い怖い!ボス!ボス……っ!」
「、大丈夫だ。オレが傍に居る」
私を抱き上げて、まるで赤ん坊をあやすように、優しく優しく、背中を撫でる。
落ち着く、体温。
「、山本、武、」
「今日はオレの部屋で寝るか?どっちにしろ、この部屋は使えねーけど」
山本武の首にしがみついて、頷く。
このまま、眠ってしまいそうだ。
そっと目を伏せる瞬間、向こう側で、泣き出しそうな顔をしている沢田綱吉が、見えた。
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