「拒んでくれて、いいんだ」
そう言った沢田綱吉に、私は笑った。(この男はどこまでも、)
彼は、私の上で困ったような顔をした。(汚い、男だ)
「汚い男だわ、貴方は。今ここで拒んだとして、貴方、そのままでいられるの?
私を放してくれるの?この屋敷から逃がす気もないクセに、ふざけないで」
そう言うと、沢田綱吉は、私の首筋に顔を埋めた。
純粋な黒
六道骸は、もう行ったらしい。
そういえば今日は、何か重要な会議がどうとかと言っていたような気がする。(よく、覚えていない)
気だるさが残る身体を、無理矢理起こす。(頭が、痛い)
乱れたシーツを引っ張って、床へ落とす。
窓へ目を向けると、もう外は闇色だ。
六道骸が部屋に来て、あの後。
私は一体、どれだけ眠っていたんだろうか。(こんなに、暗くなるまで)
「、あ、め?」
闇色の中、銀色の線がうっすらと見える。(よく、見えない)
あまり視力のいい方ではない私は、ベッドから降りて窓へ近づいた。
ぱらぱらと、小降りの雨。
これからまだ降るのか、もう止むのか。(……分からない、)
「っ、」
雨の日。
暗闇。
独りきり。
頭が、痛い。(吐きそう、)
鐘の音が聞こえる。
頭の中で響いて、響いて、何倍にも膨れ上がった音が、私の神経を叩く。(駄目だ、意識が、)
「、?」
こんな時に、どうして。(この男は、)
私を見下して、嘲笑って、崩れていく様を見ることが、そんなにも楽しいのか。
「っさわだ、つなよし……!」
雨の音が、大きくなった。
どうやら、これからが本降りらしい。(土砂降り、だ)
「真っ青じゃないか!何してたんだ!!」
生温い体温。
甘い戯言。
私の身体を抱く沢田綱吉の肩に、爪を食い込ませた。
「、あんたに、とやかく言われる筋合いはないわ、出てって、」
「何馬鹿なこと言ってるんだ!こんな状態の君を一人に出来る訳ないだろ!?」
「あんたに傍に居られるくらいなら、独りの方がマシだって言ってるのよ!」
雨の音。
雨の音。
憎い。
かっと身体が熱くなって、近くにあった置物か何かを、窓に向かって投げた。
派手な音が、響いた。(結局私は、何を投げたのかしら)
「………っ、いやぁあああっぁぁあああぁっぁああああぁぁっ!」
***
ボンゴレが、グロリゼファミリー殲滅計画を実行した夜は、雨の日。
ボスが亡くなったことを思い出してしまうことの他にも、ヒロインには雨に纏(まつ)わる嫌なエピソードがあるので、こうした日には精神的に不安定に。
文中にも登場した、雨 暗闇 独りきり この言葉達が物語の重要なパスワードになっていくと思います。
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