「ねぇ、」
「!……っ、な、なに?




本当に、バカな男。




私が話しかけただけで、どうしてこうも嬉しそうな反応をするのかしら。
それはとてもうざったいと思うけど、同時に、可哀想と思う。(憎らしいくらいに、)




「ランボ君っているでしょう?彼、呼んで」
「………え?……ごめん、今なんて?」




曖昧に笑って、沢田綱吉は、言った。
私は出来るだけ優しい笑みを浮かべて、言った。(もう、一度)




「ランボ君を呼んで欲しいって言ったのよ」
「、どうして?」






どうして?






「どうして、言わなくちゃいけないの?」
「………っ分かった、」




何も知らせていないから、私の面倒を見させたんだろうけど、それが、仇(あだ)よ。








純粋な黒








さん!」
「今日も元気ね」
「はい!さんに会えるの、楽しみにしてたんです」




無邪気な、子。(何も、知らないから)




私も、あの頃はこんな顔を、していたのかもしれない。
幸せで、嬉しくて、楽しくて、全てが満たされていた時。




「ねぇランボ君、紅茶でいいかしら?」
「大好きです」
「そう」




誰かの為に、紅茶を淹れる。
なんだかひどくやさしい気持ちになってしまって、居たたまれない、と思った。
そんな生温かいものを振り払う様に、私は口を開いた。




「一つ、聞いてもいいかしら?」
「もちろん。なんですか?」
「あなた、私が沢田綱吉の愛人って、聞いたのよね?」




彼が、眉根を寄せた。




「はい、初めにリボーンからそう聞いたし、獄寺氏やボンゴレからも、そう聞いています」
「ふぅん、そう」




愛人?
笑わせないで欲しい。


あんな男に、どうして私が媚びなくちゃならないの?
愛なんかないし、あの男から与えられるものなんて、どれも価値なんてない。




そんなつまらない作り話をしてまで、自分の身を守りたいの?




正直に、全部話してあげればいいのに。
教えないことや、遠ざけることが優しさなんて、そんなの嘘なんだから。




知らないことこそが罪なのに、こんな子どもまで騙して、憎たらしい。




あの、と、大きな声で彼が言った。
なぁに?と朗(ほが)らかに返したつもりだけれど、分からない。(憎しみを込めたひどい顔を、していた?)




「あ……っ、その、すみません、」
「あら、どうして謝るの?」
「あ、だって、失礼、ですよね、こんな……、」




愛人と、私に言ったことか。




「そんなことないわ。……それは、事実でないし」
「……え?そ、それって、どういう?」








「知りたい?」








きっと、甘い誘惑。
秘密、内緒、隠し事はいつだって、甘美な芳香を撒き散らし、人を惑わす。




「、っ」
「あなたが知らないことを、知っているわ、私」




ゆっくりとした動作で、彼に近づく。
衣擦れの音が、やけに大きい。




「そ、れは、」
「知りたい?あなたが知りたいって言うなら、教えてあげるわ。……全部、ね」




、子どもに手を出してはいけませんよ」




この男はいつもそうだ。
私の邪魔を、する。(悔しい悔しい悔しい)




それはきっと、全てを知っているから、だ。(瞳が、そう言っている)




「っ、六道氏……!」
「クフフ、君もいけませんよ、ランボ君。の相手は、君にはまだ務まりません」
「……何をしに来たの?邪魔よ、帰って」




頭が痛くなってくる。




苛々する。
吐き気までする。




「相変わらず酷い人だ。……淋しかったんでしょう?近頃、お相手してあげられなかった」
「自意識過剰もそこまでくると聞き苦しいわ」
「クフフ、その憎まれ口もいつまで利けることやらね。……口を開けば喘ぎしか出なくなりますよ」
「っさん!また後日お話しに伺います!それじゃあ!」




どたばたと、牛柄のシャツの子どもは部屋を出て行った。




「………邪魔者が消えてよかった。……、身体の方は大丈夫ですか?」
「私は彼に用があったの。あなたじゃなくてね。……それで、何の用?」
「おや、今日は随分と優しいですね。………どうかしたんですか?」




笑みを浮かべながら、嫌な男。




「……ねぇ、知ってるんでしょう?私が知りたいこと」
「さぁ?何のことやら」
「………そうよね、そういう人間ばかりだったわ、ここは」




気分が悪い、と言うと、六道骸はあっさりと部屋を出て行った。(結局、何だったのか)




それでも、何かが確実に動き始めていることは、確か。
それが私にとって良いものか、悪いものか。(もう、この先の地獄はないけれど)






早く、全てを壊さなくちゃ―――――――――――。














































***


いよいよ復讐開始?


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