真っ暗で、何も見えない。
そう、暗闇。
ノイズなのか、何も聞こえない。
そう、雨音。
何の気配も感じない。
そう、独りきり。
か ワイ い が っド
純粋な黒
「―――――――――――っ!」
「わっ、」
勢いよく起き上がった私が、最初に見たもの。
「………、だれ?」
「あ、オレはランボといいます。お会いするのは初めてですね、さん」
少年といえばいいのか、青年といえばいいのか。
まだ何の穢れも知らないような、幼さを感じる笑顔。
随分大人っぽく見えるけど、実際はまだ子どもだと思う。(15、16辺りの)
「………っ、わたし、どうして、」
「急に具合が悪くなって、倒れてしまったらしいです」
「…………、そう。……あなた、が、看病、してくれてたの?」
笑顔いっぱいに元気よく返事をする姿は、やっぱり子どもだ。(とても、無邪気、)
もう一度、そう、と私が言うと、今度はどこかがっかりしたような顔をした。
「あ、まだ具合悪いですか?」
「え?……いいえ、大丈夫よ、あなたのおかげ」
何だか、とても優しい気持ちに、なれた気が、した。(そんなわけ、ないのに、)
私の言葉一つ一つに、いちいち大袈裟すぎる程の反応を返す様子が、かわいいと、思う。(そんな、はずは、)
「っ!……さんは、笑っていた方が素敵ですよ!」
「……、何、急に、」
「………笑っていた方が、素敵、です」
答えになっていない答えだったけど、それでも、構わない気がした。
何だか、ひどく疲れている。
だるいし、少し頭が痛い。
前にもこんなことがあった。
………前、にも……?
そうだ、倒れる前、私は雲雀恭弥と、沢田綱吉と、六道骸と、何か大事な話をしていた。
そう、私の過去の話。
思い出さなくては、いけない。
「――――――――ねぇ、雲雀恭弥がどこにいるか、あなた分かる?」
「は?……雲雀氏、ですか?」
「そう、雲雀恭弥」
彼は困ったような顔をして、言った。
「今、会議中なんです。それで今忙しいようなので、オレがこうしてさんの看病を任されました」
「………、そう。………ねぇ、あなたは私のこと、何か知らないの?」
私が言うと、彼はひどく傷ついたような顔で、ゆっくりと口を開いた。
「……残念ですが、何も。………さんのことは、話で聞いたことしか」
「誰が、何て?」
「お美しさは、リボーンや獄寺氏から、よく。一番新しいボンゴレの愛人は、とても美人だって。
……それだけです。あとは、何も。……だから、今日会えてよかった。不謹慎、だけど、」
ずきりと、頭が痛んだような気が、した。
「………私と、一緒、」
「え?」
「何も知らないこと程辛いことって、ないわ、」
この様子だと、彼は、何も、知らない。
約1ヶ月前、何が起きたのか。
ボンゴレが何を、壊したのか。
私がこうしてここにいる理由を、知らない。
「………ねぇ、1ヶ月前、何が起きたか、知ってる?」
「1ヶ月前、ですか?……すみません、その頃はオレ、長期の任務で出ていたので、」
やっぱり。
何て悲しくて、辛いことだろう。
どうして、神はこうも残酷なのか。
彼は何も知らずに、こうしてここにいる。
私が、ボンゴレをとんでもなく憎んでいて、いつか、全てを壊そうとしているなんて、知らずに。
自分の所属する組織が、どんなことをしたかも、知らずに。
それも、そうだ。
だって誰一人として、彼には何も、教えてはくれなかったのだ。
「ランボ君、だったわね。………私も、今日あなたに会えて良かったわ」
「!ほ、本当ですか?嬉しいです!あっ、あの、さん!また、お会い出来ますか?」
「会えるわ。……何よりも、私があなたと一緒に居たいもの」
誰だって、独りきり、は、怖い、もの。(そう、独りきり、は、)
***
10話のヒロインサイド。
守護者達が会議してる中、ランボがいなかったのはこういう理由。
それにランボは何も知らない模様。
謎は深まる?
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