「も言いたいことがあったんでしょ?先にいいよ」
キョーヤ先輩は、優しく微笑んだ。
それが、申し訳なくて、わたしは真っ直ぐ見れなかった。
「、風紀を、辞め、たいんです、」
顔を歪めたのは一瞬で、きっと、瞬きをしていたら見逃してしまった。
一瞬にして切り替わった、いつもの、無表情なキョーヤ先輩は、静かに口を開いた。
「そんなの、認めるわけないでしょ」
06:囁き
「、わ、たし、キョーヤ先輩に、失礼なことしちゃいましたし、言いました、」
だからなんなの?と、不機嫌そうにキョーヤ先輩は言った。
でも今は、それどころじゃない。
たーくんが、待ってるんだから。
「わたしの話は、それだけ、です」
「その話は、また後日ね。急いでるんでしょ?」
小さく頷くと、キョーヤ先輩は、笑った。
「そんなに、」
「大事?」
「山本武が」
ぎゅっと、拳を握った。
同時に、心の中で叫ぶ。
世界中の誰よりも、たーくんが大好き。
「でもね、」
「君が山本武を想うように、」
「僕も君を、想ってるんだよ」
耳元で、キョーヤ先輩の声が弾けた。
身体中が、かっと熱を帯びて、熱い。
「、自分でも、気づかないうちに、僕は君を、こんなにも、好きに、なってた、」
かたん、と、何か物音がした。
頭の中で、何度も何度も、まるで、ループみたいに、ぐるぐると繰り返されていく。
「………、好きだよ」
それは、聞いてはいけない、言葉だった。
それは、全てに終止符を打つような、終わりの、音だった。
応接室の扉が、派手な音を立てて、開いた。
「っ、」
「やぁ」
「………帰んぞ、」
それは。
全てに。
終止符を。
打つような。
終わりの。
音。
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