『オレ、が好きだ』






大好きで、大事な、たった一人の幼馴染。
生まれた時からずっと一緒で、離れたことなんて一度もない。
離れることを望んだことだって、一度もない。







どんなことがあったって、たーくんだけは、いつもわたしの味方だったから。







たーくんのことは、大好き。
でもわたしは、枠に当てはめられる関係には、なりたくない。
たーくんとわたしの関係は、そういう風にくくれるものじゃないもの。





















『、ごめん、なさい、』
























01:切ない過去



















「……嫌な夢、見ちゃったな、」





随分昔の夢を見た。
昔といっても、ほんの1年前の話だけど。






大好きで、大事な、たった一人の幼馴染に、告白された日の夢。






今考えれば、ただ単に、わたしは怖かったんだと思う。
わたしだって、たーくんが好きだった。
断る理由なんて、本当はなかった。






でも、彼氏彼女の関係になっちゃえば、別れた時、もう、一緒に笑いあえる関係には戻れない。







だったら、幼馴染でいて、遠い未来でも、一緒に笑いあえることを、わたしは選んだ。
結局わたしは、たーくんにだけ苦しい思いをさせた。
ズルくて最低な、最悪な女だ、わたしは。








ちゃーんっ、お迎え来たわよー!!」







お母さんの声にはっとして、嫌な考えを振り払う。
ぎゅっと目をつぶって、ゆっくりと開く。


もう昔のことなんだから、いつまでも引きずってちゃダメだ。
しゃきっとしなくちゃ、いつものわたしじゃない。












「はーい!今いくーっ!!」












***

















「おはよ、たーくん。ごめんね!今日、ちょっと寝起き悪くて、」











苦笑いをしながら言うと、たーくんは笑った。
お母さんも、笑ってる。






よかった、わたし、普通に振舞えてる。






「いつもごめんね?武君。この子ったら、武君がお迎えに来てくれるからって、毎朝ぐっすりなのよ〜」
「や、オレの方も、を迎えに来なきゃ、ずっと寝っぱなしだし!お互い様っスよ」






トーストを口に押し込みながら、わたしは小さく笑った。






「なーに笑ってんだよ」
「ふぁらっふぇふぁいっ!」
「……何言ってんだか分かんねーし」
「っ、笑ってないっ!」




、食べ終わったんなら、さっさとしなさい。遅刻するわよ」




時計を見ると、もう8時5分前だった。
慌てて、牛乳を流し込む。










「「いってきますっ!」」











***











「た、たーくん、ホントに、ホントに、ごめんね。遅刻だったら、わたしのせーにしていいからっ」
「まだ遅刻って決まったわけじゃねーだろ。それに、遅刻だったとしても、別にオレは構わねーから」





家から全力疾走して、やっと校門が見えてきた。
ほっと安心したのも束の間、あと少しで門が閉まりそうだ。





「っ、や、ヤバイよたーくんっ!」
「スピード上げるけど、へーきか?」
「ん、へーきっ、」






野球部のエースなたーくん。
そうだよね、ホントなら、もっと速く走れる。





遅刻しちゃいそうだっていうのに、わたしに合わせてくれてたんだ。





なんだか嬉しくなって、思わず頬が緩んだ。
けど、すぐに自分の置かれてる状況を思い出して、再び校門に視線を向ける。






ぴたりと、足が止まってしまった。






それに気づいて、たーくんも足を止めてくれる。
わたしの前に屈んで、優しく声をかけてくれるけど、その声も、全部通り抜けていく。













































「遅い。遅刻だよ、








































彼はそう言って、淡く微笑んだ。
あぁ、そうだった。
そういえば、今日はわたしも当番だったんだ。
すっかり、忘れてた。





「っ、遅刻なら、オレもそうだろ。コイツだけ責めんな」





たーくんがわたしを庇ってくれると、彼、雲雀恭弥は、あからさまに嫌な顔をした。
思ってること、顔に出すなって、あれ程キツク言ったのに。





「………君には関係ないよ。これは、風紀の問題だ」





たーくんは、何か言い返そうとしてくれたけど、キョーヤ先輩の言ってることは間違いじゃない。
わたしは、たーくんを止めた。






「っ、、」
「たーくんの遅刻は、わたしがナシにしとくから、教室、先に行ってて」
「で、でもよ、」
「へーきだから」






いつものように笑ってみせると、たーくんは、渋々、という感じだったけれど、先に行ってくれた。






「……勝手は認めないよ」
「たーくんが遅刻したのは、わたしのせいなんです」
「………気に食わないね、きみ」










機嫌最悪なキョーヤ先輩に、わたしは応接室に引きずり込まれた。











































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