!!注意!! ちょっと百合くさい 「な、なんスかアレ……!」 「黄瀬君、キミって人は毎回毎回「なんスか」「なんスか」って馬鹿の一つ覚えに……馬鹿なんですね、救いようのない」 オレは驚愕した。いつものこと(黒子っちとちゃんのラブラブ光景)であれば、オレもここまで驚くことはなかっただろう。そして黒子っちは今日も通常運転。 べ、別に気にしてないッスよ! いつものことだし!!(震え声) でも! これは違う。今日のは違う。いつもと同じじゃない。ここに黒子っちがいる時点でおかしいのだ。だっていつもはちゃんにべったりで、近づくことすらむずかしいっていうのに!! そしてその原因! そしてありえない光景! アレ! だってあんな、あんなのありえない!!!! とオレの背中側、少し離れたところで繰り広げられているいつもとは違うイベント――“いつもの”は繰り返しになるけど、黒子っちとちゃんのラブ(認めたくないけど!!)イベント――発生中のそこを思いっきり指さしながら叫んだ。 「いやいやいや! いや! 黒子っち! アレ! 見えてる?! 見えてる!?」 オレが指差したところで発生中のイベント――それは……。 *** 「うふふ、今日も一生懸命励んでいらっしゃいましたわね。試合ですもの、一段と忙しかったでしょうに……流石は帝光バスケ部一軍マネージャーですわ。征十郎さんもお喜びでしょう」 “あの”サユリさんが……ヅカ・プリンスオーラで多くの女の子を魅了しているらしい“あの”サユリさんが……! お、オレの天使・ちゃんのふにふにそうなほっぺ(触ったことないけど絶対そうッス!!)に手を滑らせている……!! オレやったことないのに!! したいのに!! しかもちゃん、黒子っちにしか見せない照れ顔(コレがまた超絶かわいい)を見せている……!! 何?! 何が起きてんの?! どういうフラグ回収したらそんなの起きんの?! 「さ、小百合ちゃん、そんなことないの、わたし、いっぱい失敗しちゃうし、……赤司くんだって、わたしなんか……」 いやそれは違うッスちゃん! ちゃんの頑張りは他の誰よりもちゃんのコト見てるオレが保証するッス!! 今日も(超絶かわいく)一生懸命だったッスよ!? 誰より頑張ってたッス!! ずぅっとちゃんを視界に入れてるオレが言うんだから間違いないので安心してほしい。でもこの距離からじゃ言えない……。いや今ちょっとそれは置いといて! あっ、後でちゃんと言うし!!(黒子っちにジャマされなかったら) 「まあ、そんな悲しいことを仰らないで。貴女の働きは皆さん認めていますわ、」 ――わたくしの愛らしい天使ちゃん。 *** 「◇♯&%☆♀×♀〜!?(言葉にならない叫び)」 「仲が良いのは結構ですけど、小百合さんも懲りない人だな。練習試合ですし、応援に来るとは思ってましたけど……ああ、赤司君が戻ってきたらなんて言うか……(※諸々キャプテンのお仕事のため、ただいま離席中)」 何?! 何が起きてんの?! と未だ混乱中のオレだったが、はたと気がついた。こ、こういうとき……ちゃんのコトならこの人! オレは黒子っちにがばっと抱きついた。どっ、どういうコトなんスか……! オレの空前絶後のキューティーエンジェルちゃんを“天使ちゃん”だなんて呼んであの人どういうコト?! ちゃんはオ・レ・の! “天使ちゃん”なんスけど!! 「く、黒子っち〜!!」 黒子っちに泣きつく以外、今は方法がない。 ちゃんどういうコトなんスかあんなかわいい照れ顔を惜しげもなく……!! 「ちょっ、何するんですか抱き着かないで下さい気色の悪い! なんです? 今日はいつにも増して頭がおかしいんですか? 死にたいんですか?」 「ああ今なら何言われてもへっちゃらッスから黒子っち……いや、救世主黒子っち様! 天使ちゃんのさいきょーのディフェンダー!! ……あのヒトがオレのちゃんの友達ってのは桃っちから聞いたッスけど! でも黒子っちなら! オレのちゃんを取り返してくれるッスよね!? ねっ?! オ・レ・の! “天使ちゃん”なんスよ!?」 言いながらオレの視線はちゃんとサユリさんに釘づけである。 ……あんなちゃん、黒子っちと一緒のとき以外見たことない! 何?! どういうコト?! 黒子っちとちゃんのラブラブ光景には慣れたけど(悔しいことにね!!)、これはワケが違う! 黒子っち以外の人間にちゃんがあんな……あんなかわいい顔を……!!!! 今にも崩れ落ちそうなオレに追い打ちをかけるように、黒子っちは言い放った。 「あぁ、そういえばキミの前にとっくに(強調)彼女を“天使ちゃん”と呼んでる方がいるんですよって教えてませんでしたね。あちらにいる小百合さんです。それから彼女はボクの(強調)親友(さらに強調)であってキミのじゃありません。何当たり前のコト聞いてるんですか恥知らずな人ですね、ハッ!(嘲笑)」 今は黒子っちの嫌味なんかどうでも(よくはないけど)いい! 今はそれどうでもいい! 今重要なのはたった一つ……! 「なんっであのヒトあんなオ・レ・の(強調!)天使ちゃん(強調!!!!)に馴れ馴れしいんスか!?」 オレの悲痛な声に、黒子っちはというと真顔だった。いや、これ通常運転だけどね! それからその真顔のまま、「……この間ボクはキミに懇切丁寧に説明してあげたと思いますけど、小百合さんは帝光バスケ部のファン活動を監督しているので、当然マネージャーであるちゃんとも面識があるに決まってるじゃないですか馬鹿なのは知ってますけどアホなんですねキミ。それに小百合さん、彼女のことが大のお気に入りなんですよ当然ですけどね、ボクの親友(強調)はあんなに可愛い女の子なので」と怒涛の攻め……。 とうとうオレは崩れ落ちた。どうしたんスか黒子っち……なんでなんスか黒子っち……いつもの真っ黒子モードはどこいっちゃたの……。(悲しいけど)黒子っち専用のあの天使すぎる笑顔が他の人に向けられてるのに! それともそれが親友の余裕ってやつなの? そうなの?! でもオレはあんなのガマンならないッスよ……! とぶるぶる震える手で黒子っちの腕に縋る。その手はいとも簡単に振り払われたけども! 「……な、なんで?! 黒子っち真っ黒子モードは!? ファンクラブのリーダーだかなんだか知らないッスけど、ちゃんにあんな馴れ馴れしいんスよ?!」 オレの言葉を鼻で笑うと、黒子っちはさも当然というように「女の子同士仲が良いのはいいじゃないですか。……キミ、何言ってるんです?(真顔)」と言ってさっさとどっかへ消えようとしたので、もう一度その腕をガシッと掴む。だ、だって、だってアレ! なんっであんなイチャついてんスか?! 女の子同士といえど絶対おかしいじゃないッスか!! *** 「うふふ、わたくしの愛らしい天使ちゃん」 「さ、小百合ちゃん……ちかいよっ! ……は、はずかしい……!」 「ふふ、怖がらないで下さいな。わたくしは、貴方には特別優しくして差し上げたいのよ」 「さ、小百合ちゃん……(きゅん)」 「うふふ、わたくしの愛らしい天使ちゃん……」 百合でも舞ってんじゃないの?! というほどに、なんか! なんか!! 二人の世界〜☆ミみたいなことになってる!! しかもあんな至近距離で!! 羨ましいにもほどがある!! オレだってあんな至近距離でちゃんとお話ししたい!! このまま二人を放っておく? そんな選択肢オレにはない! 黒子っちならともかく(いや、ヤダけどね?!)いくらちゃんの友達といえどもそうはいかないッスよ!!!! 女の子同士とはいえあんなの見過ごせるはずない!! そんなわけでちゃんとサユリさんのところへダッシュ。二人の間に割り込んだ。 「あらまあ、驚きましたわ。……どちらさま?」 「黄瀬涼太ッス! てか試合見てたんスよね?!」 初っ端からこの人オレにケンカ売ってるとしか思えない。どちらさま?! ……どちらさま?! こっちが言いたい。アンタ何様だよ!! オ・レ・の!“天使ちゃん”なのに!! ちゃんはオレの天使だ。もう一回言わせてもらうけどちゃんの友達だからってあんな……あんなの許せるわけないじゃないッスか!! オレは敵意をまっっっっっっったく隠さずサユリさんの前に立ちはだかったわけだが、当のサユリさんは余裕の表情である。にこにこ笑って、こっちの敵意なんかどうだってよさ気だ。腹立つ〜ッ!! 女の子相手にこんな感情、オレ的にはナシだけど……オレの優しいあったかい感情はぜーんぶちゃんに捧げてる今――、 サユリさんを気遣ってる余裕など皆無である。 しかもあんな光景見せつけられて黙ってられるわけない。(黒子っちはともかく)女の子だからってちゃんとあんな……あんな……!!(※ラブラブとは言いたくない) ギリィッと歯軋りするオレに反して、やっぱりサユリさんは余裕の表情だ。っく、オレも女の子だったならあんなおいしい思いが……いやいや、それじゃあちゃんの彼氏になれない!! ますますどうしたらいい!! と歯軋りなオレだが、サユリさんは「まあ、あなたが“黄瀬涼太”さん? ちょうどよかったわ、わたくし貴方にお話があって参りましたのよ」なんて言って――。 「わたくしの大切な天使ちゃん、向こうで黒子君とお話でもしてらして?」 「へ? ――って、ああ! ちゃん! ま、待っ――」 ちゃんを黒子っちの元へ送り出した。うう、やっぱりそのぱあっと輝く笑顔は黒子っち専用――そしてどういうことだか、この目の前のサユリさんにも向けられているわけだ。なんで?! なんで?! 遠ざかるちゃんの後ろ姿……あぁ、後ろ姿さえ愛しいッス……! とちゃんに視線を奪われていたオレを、「黄瀬君」とサユリさんの声が連れ戻した。そうだった。今はこの人に話がある! 「なんスか?」とできる限りフツーに(たぶん)返事したオレに、サユリさんはにこにことしている。余裕にもほどがある。なんなの? オレと決闘(ケンカ)でもしたいんスか? っていうか……コレ、どっかで見たことある。 な、なんかこわい……! で、でもオレはそんなことじゃ怯まない。ハッキリキッパリ、ちゃんとあんな(羨ましい)コトするのやめてって言うんだから! と固く決意するオレに気づいているんだかいないんだか、サユリさんは話を続けた。 「あなたのファンの方たち、どうもお行儀がよろしくなかったものですから……少々注意させていただきましたの。でもご安心下さいね。彼女たちも今後は節度ある行動をして下さいますわ。ああ、わたくしのことは小百合とお呼びになって下さる? 皆さんそうなさるの」 あの廊下での様子見てたらなんとなく分かるけど……。 でもそういうことじゃなくてですね……。 「はあ……」 サユリさんの話に対するオレの返事は、ものすごいテキトーだった。というかもはやこれは溜息。だってサユリさん越しにちらちら見えるちゃんと黒子っちから目が離せない。なんか急に冷めてしまった。あっちでもこっちでもちゃんのた・だ・の! 友達がラ……ラブラブ……とか……。ああ、ちゃん黒子っちと楽しそうにしてる……! やっぱり黒子っちずるいッスよ!! ちゃんあんな笑顔オレには見せてくれないし……そんな気配もないのに!! い、いや、そのうちあの笑顔を手に入れてみせるし、それに彼氏ってポジションだってゲットしてみせるけど!! で、でも黒子っちずるい……!! だって(大)親友でしょ?! 彼氏じゃないじゃん! なのにあんな……な、仲良し(もうラブラブって表現つらい)……とか……! で、でもオレが彼氏になったら!! あの笑顔はオレのものになるわけだし! 黒子っちだけにイイ思いなんか絶対させないッス!! 何がなんでもちゃんと付き合って、それで「――それで?」……ん? 目の前には笑顔のサユリさん。ということは今のはサユリさんの言葉ってことになるワケだけど……。 「? ……それ、で……? ……って?」 次の瞬間、オレは慌てふためいた。 「あら? 貴方、わたくしの(強調)愛らしい天使ちゃん(強調)のことがお好きなんじゃなくって?」 「?! なななっ、なんでそんなコト知ってんスか!?」 部内ではもう(たぶんちゃん以外――あんなに思いっきりアピールしてんのに――)みんなが知ってることだと思うけど、なんでこの人知ってんの?! 口をあんぐりさせてびっくりを隠せないオレなんかどうでもいいです。そんな具合にサユリさんはうふふ、なんてますますその微笑みを深くした。 「いやですわ、わたくしはこの帝光バスケ部のファンクラブを任されているんですのよ? 帝光バスケ部のことに関しては、全て容易に知れることですわ」 「……! な、……な、」 言葉にならない声しか出てこなかった。ちゃんの友達(ここは重要なトコだ……)で、あの赤司っちのイトコ――そしてバスケ部ファンクラブの総監督……じょ、情報網がヤバイ!! い、いや、でもポジティブに捉えれば! ちゃんと(認めたくないけど)あんなラブラブ(ギリィッ)なこの人なら! 黒子っちの鉄壁のディフェンス破る方法知ってるかもだし、ちゃんにオレの気持ち伝える手段だって教えてくれ「でも残念でしたわね。彼女はわたくしの(強調)愛らしい天使ちゃん……。……貴方のような……(ちらっ)顔しか取り柄のなさそうな方にお任せする気はありませんの」 訂正。この人オレの敵ッス!!!! 「なっ、あ、アンタに関係ないじゃないッスか! オレはちゃんが大好きだし、ちゃんに好きになってもらう努力だってする! つか、アンタ天使ちゃんのなんなんスか!!」 「あら、わたくしにそのような物言いをなさるの? ……バスケ部ファンの総監督を務めるわたくしが一言、「黄瀬涼太をわたくしの天使ちゃんに近づけないで」と言ったら……」 「すんませんッス!(そうだ……この人の感じ! た、対オレのときの黒子っちにそっくり!!)」 気づけばオレは土下座していた。 ヤバイ、この人ヤバイ!! 黒子っち同様、この人の前で下手なことしたらガチでちゃんに近づけなくなっちゃう!! そんな予感ビシビシ!! これはヤバイ!! 分かってたはずが理解できてなかった……。恐ろしいことにこの人、ちゃんの友達だったッス……!! 「あらぁ……頭が高いんじゃなくって?」 「すんませんッスぅううう!!」 何度も冷たい体育館の床に額を打ちつけながらも、視界には黒子っちとちゃんの姿が映った。 ……やっぱり超絶仲良し……。いや、それはもう慣れてきたんで(瀕死状態にはなるけど)大丈夫ッス……。……しかしなんてこった……。 「分かって頂けたのなら結構ですわ。うふふ、わたくしと“仲良く”して下さるかしら?」 「もちろんスすんませぇえええんッ!!」 ヤバイッス黒子っちと同じニオイがする人と……出会ってしまった……! |