放課後――つまり部活!

 可愛いマネージャー、ちゃん(オレの天使)がマネジのお仕事頑張ってる姿を見守りつつ、オレは今日もバスケに励むのだ。ふふふ、今日という今日こそはカッコイイとこバッチシ見てもらって、ちょっとでもいいからオレのこと意識してもらう! そんで青峰っちに(バスケでもちゃんのトクベツ的な意味でも)勝って、最終的には黒子っちを(精神的な意味でも力関係的な意味でも)超える!! そしていつの日か……そう遠くない未来に、ちゃんの彼氏!!!!  というポジションをゲットしてみせる!!

 そう、数十分前のオレはものすごく張り切ってたわけなんスけど……。

 「キャー!黄瀬くぅんっ!」
 「あーん、こっち見てぇー!」

 こんなのはいつものコトなんだけど、今は部活の真っ最中なわけで。オレはバスケ――そしてちゃんを振り向かせることに一生懸命で、正直ファンの女の子たちのことまで考えているヒマはない。……というのがなんかこう、念みたいな? なんかで伝わっちゃってるのか、最近はこうして部活中の体育館に押しかけてきて、あちこちからオレに声援を送ってくる。いや、ありがたいコトなんスけどね。それは分かってるけど……。

 「……うるせーなァ。……オイ黄瀬ェ、アレどうにかしろよ。気ィ散んだよモデル(笑)くん」
 「いや、オレも言ってるんスよ! 部活中はやめてって……でも聞いてくれなくて……!」

 ごもっとも。

 でもこうなってしまった女の子たちって、恐ろしいことに団結力がマジでパない上にこっちの話を聞きゃあしない。オレのファンだって言ってるのに、そのオレの話も聞いてくれないとかちょっと意味分かんないッス!

 ホントにものすごくウザそうな青峰っちの顔を見ると申し訳ない。青峰っちだってオレと同じくらい――それ以上に練習に集中したいはずだから。ちらっと入り口付近に目をやると、ますます悲鳴のような声が大きく響いた。でも何よりオレが気にしてるのは……。


 「こ、こんなトコちゃんに見られたら……! オレ生きてけないッスぅううう!!」


 そうだ。ちゃんだ。超絶かわいいオレの天使、ちゃんにこんなトコ見られちゃったら……!! オレの誠実な恋愛感情を疑われてしまう!! 今のところなんとかちゃんが居合わせることなく済んでる(これについてはホントにオレマジでツイてる)。今だって体育館の外でお仕事がんばってるはずだ。でも、こんなラッキーがいつまでも続くわけがない!! それに何より……。

 ちゃんが今ココにいないことがものすごく残念です。まぁいたとしても、黄瀬君のファン(笑)なんて 全く 気にしないと思いますけどね(嘲笑)」

 そう! ちゃんの大親友、黒子っち……!! 黒子っちがちゃんにちゃん、黄瀬君は――」なんて言ったらもうオレは完全に終わりッス……。ちゃんは黒子っちの言うことなら絶対なんでも信じちゃう!  オレはそのことを確信している!!  そうなる前に、なんとしてでもこの問題を解決しなければ……!

 やっと「黄瀬君」って呼んでもらえて、存在もそれなりに認識してもらえるようになったっていうのに!! こんなトコじゃ終われない……。せめて告白……いや、そんな弱気なことじゃダメッスよね! ちゃんの彼氏!!!! になるまで、オレは何がなんでも、どんな障害であろうと乗り越えてみせるッス!!!!

 オレが固く決意していると、「でも」と黒子っちが口を開いた。ビクッとする。ちゃんが関わることだと、黒子っちは違う人じゃないの? ってくらい人格が変わるので、ちゃんの名前が出た時に黒子っちが口を開いたら用心すべき、と最近脳みそが覚え始めた。

 「これじゃあ練習どころじゃありませんね。黄瀬君のせいで。
ちゃんがこれを見たら何て言うことでしょう……」

 憂い気な雰囲気を漂わせながら、黒子っちがこめかみを押さえる。
今まさにオレが恐れていることである。
そしてそれをちゃんに伝えられたら非常に都合が悪い。

特に黒子っちにそれを言われてしまったら……。

 「やめてえええ黒子っちさまそれはやめてえええ」
 「(シカト)あ、桃井さん、赤司君は?」

 バインダーに何か書き込みながら歩いている桃っちに、黒子っちが声をかける。桃っちは、ぱあっと笑顔を浮かべてこちらへ走り寄ってきた。恋する乙女って感じッス。俺もちゃんに対して、こんな顔してるのかな……。ちょっと恥ずかしい。だって好きってバレバレの顔だ。いや、それでも伝わってないんだろうけどね!

 「あっ、て、テツ君……! 赤司君? 週末の試合のことで先生と話があるって言ってたけど……。っあ! 赤司君!」

 きゃあきゃあ騒いでる女の子たちが占領する体育館の出入り口に、海が二つに裂けるかのようにしてズザッと道が一本。そこから、王者って感じの赤司っちが現れた。一瞬だけ不機嫌そうに顔を歪めたであろうことが、この距離からでもオーラで分かる……っていうかどんどんこっちに向かってくる!! どんな表情か?  ……無表情ッス!!  ……ヤバイ! 怖い! 赤司っちの無表情とかマジ怖い! いつもそうは表情変えるタイプじゃないけど、これはコトのヤバさがめっちゃ伝わってくる……!

 どこからか「桃井さーん」と声がした。すると桃っちは「あ、ごめんね、呼ばれてるから行くね! テツ君ほんとにごめn「さっさと行けよブス」青峰君うるさい!!」と青峰っちとやいやい言い合いながらどこかへさっさと消えていった。というかなぜ青峰っちも消える。待って待って待って! (いつも敵の)黒子っち、さらには(ヤバイ)無表情の赤司っちにオレ一人が太刀打ちできるワケないじゃないッスか!! と桃っちの背中へ手を伸ばすも、「……黄瀬」と低い声でオレに声をかける赤司っち登場。マジ青峰っちずるいどこ行ったんだよあの人!!

 「は、はいっス!」

 一体何を言われるのか……とぶるぶる震えていると、赤司っちは無表情のまま言った。

 「お前は自分のファンすら手懐けることができないのか?」
 「(て、手懐ける……!)す、すんませんッ! オレもっかいちゃんと言ってくるんで!」

 ヒィ! 思わずそんな情けない悲鳴を上げてしまった。ヤバイ、マジ赤司っちヤバイこわい。でもこれは完全にオレが悪いし、どんな方法でもいい! なんとかしないと命ない ッス!!!! 指先が冷たくなっていくのを感じて、なんかイイ案ないのオレの頭がんばれ!! と普段使ってない部分までフル稼働させようと頭を抱えていると、赤司っちはもうこんなことには興味ない、というような顔でさらっと言い放った。

 「いや、その必要はない。もう手は打った。さあ、今週末は試合だ。練習試合、それも格下相手だが、中身のない勝利は許さないぞ。練習に戻れ」

 「へ?」
 「あー、やっとマトモに部活できるわ。じゃ、さっさとやろーぜ!」

 腕を回しながら、ニカッと笑う青峰っち。ちょっとアンタ!! オレ残して消えたくせにいつこっち戻ってきたんスかセコイ!! そして青峰っちの言葉に賛同して、黒子っちは「そうですね、始めましょう」なんて言って練習に戻ろうとしている。そして「それに、ちゃんが黄瀬君ファン(笑)に嫌味を言われる心配がなくなってボクは心底ホッとしました。そういうわけですから黄瀬君、彼女に 金輪際 近づかないで下さいね」……オレを打ちのめすセリフも忘れない!! まぁその辺は(いつものことなんで)ともかく!!

 「手は打ったってどういうコトッスか? あと黒子っちヒドイ! いつもだけど! つか、オレだってちゃんに嫌味なんか言わせないッスよ!」

 「あー、ハイハイ、お前がファン(笑)に対して役に立たねーのは分かったから」

 「けどよ」と青峰っちは言葉を続けた。

 「赤司がアイツ呼んだんなら大丈夫だから、そう心配すんなって」

 アイツ……? だ、誰それ……。全然安心できる材料じゃないんスけど!!

 「――アイツ? って、誰ッスか?」

 「あ? あぁ、そっかお前まだ知らねーよな。
もうくんじゃねェの? ――あ、ほらアレだよ、アレ」


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 「あーん、やっぱ黄瀬くんちょーかっこいい!」
 「はやく休憩になんないかなー? 差し入れ持ってきちゃったー!」

 きゃあきゃあと黄色い声を上げながら話し合う二人組に、長いストレートヘアを風に揺らしながら近づく影が一つ。

 「失礼ですけど、貴女方は転校生かしら?」

 一言にすれば、彼女は美しかった。
 濡れたようなその黒髪は艶やかだし、それに反して色白だ。目は切れ長で涼やかで、鼻も高く、この歳の女子にしてはすらっとした高身長だ。脚も長い。黒いタイツに包まれたその先を、ぜひとも拝ませていただきたい。
 しかし、黄瀬に一直線。他は一切目に入らない二人にすれば、そんなことはどうでもよかった。

 「はあ?」
 「なんなのいきなり。てゆーかアンタ誰?」

 二人は眉間に深いシワを刻み、「気分を害しました。あなたのせいで」というのを隠しもしなかった。場は一気に鋭く剣呑になったが、彼女はにこやかに、そしてすらすらと話した。

 「あら、違いました? ごめんなさい。そうだとばかり……。そうでなくては、このような愚かな振る舞い、この帝光でなさるわけがないですもの」

 内容はというと、こちらは鋭いものだったが。

 「ちょっと、それどういう意味よ!」
 「アンタになんでそんなコト言われなきゃいけないわけ?!」

 さっぱり理解できないとばかりに、彼女は小首を傾げた。
そしてこれまたすらすら言葉を続ける。

 「どういう、とは? そのままの意味ですわ。……帝光の生徒ならば、バスケ部の基本理念はご存知でしょう? 今週末は試合がありますのよ。今回は一軍の皆さんもおいでになるそうですから、貴女方のように練習の妨げになる振る舞いをされる方の見学は控えて頂きたいの。……お帰り下さる?」

 お帰り下さる? これに二人はもう鬼の形相といった具合に表情を変え、彼女に食ってかかった。これは仕方のないことだ。二人はこの時、“彼女”という存在を知らなかったのだから。

 「なっ、なんなのよアンタ!」
 「なんで指図されなきゃなんないの?! 意味分かんない!」

 「あら、本当にお話が通じないのね。征十郎さんに伺ってはおりましたけど……困りますわ。貴女方のような見学者を許していると噂されてしまいましたら、輝かしい帝光バスケ部の歴史にキズがつきますもの」

 なんてこった、こりゃヤバイ。


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 「ちょ、ちょっとあの空気まずくないッスか?! てか、青峰っちのいう“アイツ”って、女の子じゃないスか!」

 なんかこう、バスケ部にすっごい話のうまいヤツがいて、穏便にコトを収めるのかと思いきや!!  女の子!!  意味分かんない! なんで?! 女の子じゃ余計に話こじれるじゃないッスかバカなの?! いや青峰っちバカなのオレ知ってるけど!! いやマジやばいって! あの子たち、オレ見覚えあるんスよね……こう、そんなイイ意味じゃなくて。
 でも青峰っちはだるそうな表情(もうあくび寸前)で、「あ? だいじょーぶだよ。アイツ、“アレ”だから」とかまた意味分かんないこと言い出す!! この人マジバカだな!! バスケに関しては天才なクセに!!!!
 すると誰より頼りになる(主にちゃんのコトに関して)黒子っちが、「大丈夫ですよ」と一言。その後さらに「けどそれじゃ分かりませんよ、青峰君。黄瀬君、彼女は小百合さんです。本名じゃなく、あだ名ですけどね」と続けた。

 「は、はあ、サユリさん……いや、名前聞いてるんじゃないッス! や、マジやばいって黒子っち! あの子たち……とにかく、なんかあったら困るから!」

ダメだこの人もダメだ!! ちゃんのコト以外には興味ないんスか?! オレがこんな言ってんのに!! しかも青峰っちとおんなじこと言い出した。

 「小百合さんなら大丈夫です。いくらあの子たちが無知だとしても、“小百合さん”と聞いたら大人しくなるはずです。それに――もう赤司君が行ってしまったようですしね」


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 「アンタいい加減にしなよね。どういう立場でアタシらに指図するわけ?」

 一人が攻撃態勢に入ったところで、彼女はなんと表情を明るくさせた。

 「まあ、やっと分かりましたわ。貴女方、お話が通じないんじゃなくって、ただのお馬鹿さんでしたのね。安心しましたわ。人間の使う言語はお分かりよね? わたくしは帝光バスケ部キャプテンである赤司征十郎さんに、バスケ部に関するこういった面倒事の処理をお願いされている者ですわ」

 「はぁ? だからなんなワケ? 赤司くんとか別に関係ないんだけど! ウチら黄瀬くん応援してるだけだしっ!」


 「その黄瀬が所属する帝光バスケ部キャプテンのオレが“関係ない”とは、一体どういう了見だ?」


 そこへ登場、帝光バスケ部の絶対君主、赤司征十郎。
これにはさすがの二人も顔色を悪くさせた。
 中学バスケ界に名を轟かせるこの帝光バスケ部でキャプテンを務めているだけでなく、成績優秀で教師からの信頼も厚い。おまけに容姿端麗、あの“赤司”の御曹司ときた。
 彼に目をつけられたら黄瀬の応援どころではなくなる。
そのことは無知な二人にも分かった。

 「あっ、赤司くん……!」
 「あっ、ちが、あ、アタシたち――」

 慌てふためく二人に、彼女はますます笑みを深めた。

 「あら、征十郎さんのことはご存知でしたのね、よかったわ。なら、わたくしのこともお分かりになるんじゃないかしら?」

 この言葉を聞いて、赤司はぴくっと眉根を寄せた。

 「……黄瀬のファンを注意してくれと頼んだはずだが。遊んでやれなんて言った覚えはないぞ、小百合」

 ――小百合。そう、彼女の名前は(正確には黒子の言った通りあだ名だが)小百合。
 一人がサッと一歩後ずさりすると、鬼の形相から一転、もう終わり。アタシたち終わり、というような悲壮感溢れる表情で「……さっ、サユリ!」と声を上げた。

 「サユリ?」

 こちらは本当に無知らしい。
 声を上げた女子が、もうこの場を離れようと言わんばかりに相手の腕を引っ掴んでぐいぐいと引く。

 「バカ! ほらっ、赤司くんのファンが言ってたの聞いたコトあんじゃん! あ、赤司くんのイトコの話! あの子たち、さ、サユリさんて……!」

 「じゃ、じゃあコイツ! ……っ、こ、このヒト……!」

 「ふふ、バスケ部の方はもちろんですけれど、バスケ部ファンの方々もわたくしのことをご存知と仰る方が多いものですから、つい」

 彼女がにこやかな表情を崩さなかった理由の一つはこれである。
小百合と呼ばれる彼女は、“あの”赤司征十郎のイトコだった。
 非の打ちどころのないような完璧な彼女の笑顔を赤司は無表情でじっと見つめ、そして口を開いた。

 「……まぁいい。君たちは黄瀬の加入までバスケ部を見学したことがなかったんだろうが、バスケ部のファンクラブだとかいう類いは、全てこの小百合を通してルールに則る場合のみ活動を許している。黄瀬に対する応援や差し入れなどのファン活動は、今後小百合を通してくれ。――いいな?」

 赤司は疑問符を付けたようにそう言ったが、二人には絶対的な命令としか受け取れなかったし、赤司もそのつもりに違いないだろう。
 二人は顔を真っ青にして、「は、はい、」「……す、すみません……」とそれぞれ頭を下げた。実に正しい判断である。
 小百合は「うふふ」と鈴が転がるかのような声音で呟くように笑った。

 「可愛らしいお嬢さん。制約はいくつかありますけれど、従って頂ければある程度の見学も認めておりますのよ。先程は厳しい物言いを致しましたけど、今後も見学にいらしてね」

 先に説明したが、小百合は美しかった。赤司のイトコと聞けば納得の美貌だ。言われてみれば、似たような顔立ちをしているようにも感じられる。

 二人の表情はまた変わった。今度は何かに恋い焦がれるかのように。しかし、黄瀬の応援をしていた先程とは、少々違って見える。

 「はっ、はい……! サユリさん! ……いえ、サユリ様……!」
 「私たち、サユリ様に従います!」

 どういうこった。
しかしながら、こういったことは“よくある”ことであった。

 「うふふ、ありがとう。助かりますわ。帝光バスケ部の皆さんをお支えする為には、貴女たちのような可愛らしいお嬢さんの応援も必要不可欠ですもの。……では、征十郎さん、わたくしはこれで失礼しますわ。彼女たちにお教えすることが沢山ありますので」

 小百合の言葉に一瞬、赤司は顔を歪めたがすぐさま感情の読めない表情で言った。

 「そうか。そちらのことは全てお前に任せる。
――が、遊びが過ぎると……いや、いい。早く行け」


 小百合はやはり笑顔だった。

 「あら、いやですわ征十郎さん。全てバスケ部の為ですのに。……ふふ、さあ可愛いお嬢さんたち、いらっしゃい」

 「「は、はい……!」」

 黄瀬はきっとこの光景にこう言うに違いない。
 なんスか、アレ!


 :::


 「……な、なんスか、アレ……!」

 オレの言葉に、黒子っちはいつも通り冷静沈着、何事にもそうは動じません(ちゃんのことは除く)。そういう顔で言った。

 「小百合さんは赤司くんのイトコで、バスケ部のファン活動を取り締まってるんです。ですからああいう人達は随分見なかったんですけど……キミがバスケ部に入ってから見学に来る人は知らなかったんですね。彼女、結構有名なんですけど」

 「じゃなくて!」

 青峰っちはやっぱりあくびでもしそうな顔をして、「まァ気にすんな」とオレの肩にポンッと手を置いた。

 「言いてぇコトは分かるけど、お前役に立たなかったんだし(笑)お前のかわいー天使チャンがこっちくる前に解決してよかったって喜んどけよな。ま、とりあえずこれでうるせーコトねぇしよくね?」

 何がいいんだか! いや、ちゃんに知られる前に解決? したらしいのは確かにラッキーだけど!! 納得いかないッスよ!! 何それ!! ココどうなってんの?!

 「いや、よくな「黄瀬」

 そこへやっぱり無表情の赤司っちがやってきた。ウワワ、ヤバイ。 ヤバイ。
 ブルブル震え始める体……黒子っちのときとはちょっと違うけど、これもヤバイ。赤司っちヤバイ。

 「っ、あ、赤司っち……! あ、あの、すんませんした、オレのファンの子たちが……」

 とりあえずまずは謝罪! ゆ、許してもらえるかはともかく(赤司っちはものすごくストイックな人だから)、誠意を! 誠意をね?! とりあえずは示さないことにはなんとも……!! と思いつつも、やっぱりオレはブルブルだった。けれど、赤司っちはなんでもない顔をして言った。言葉の内容には疑問符を浮かべることになったけれど。

 「既に済んだことだ。ただ、彼女達……もうお前のファンじゃなくなる可能性がある。
すまないな。お前にはモデルの仕事があるというのに」

 「え?」

 「さあ、時間がもったいない。練習を始めよう」


 「……え?」


(え、なに?! どういうこと?!)
(どうもこうもあの通りです)
(いや全然分かんないッスよ!!)
(そんなことボクに関係あります? ないです。じゃ)
(……え?)


赤司っちのイトコ、サユリさん



Photo:十八回目の夏