……ここまでホント、長かったッス。スッゲー邪魔されつつも(ほとんど黒子っちに)地道にアタックしててよかった。中学二年の時からずっと片想いで、しかもオレなんかまっっっっっったく眼中にナシだったけど、それでもめげずに片想いし続けてよかった……! だってそうじゃなかったら……。 あのミラクル天使なちゃんの彼氏 になんてなれなかったから!! オレはきっとこのために生まれてきたんだと思う。ちゃんと出会って恋をして、それで、ちゃんの彼氏(照れるッス……!)になるために!! そうだ。やっと、やっと……!! やっと!!!! オレは大好きなちゃんの彼氏になれたんスよ!!!! 「なんだってキミが、ちゃんの彼氏なんでしょう。 別れてください」 なのにこんなのってないと思うのは、絶対オレだけじゃないはずだ。 ちゃんの大親友、黒子っち。超がつく大親友の黒子っち。ちゃんの中でオレよりも大事であろう黒子っち……。ちゃんに近づく全てのヤローに対する鉄壁のディフェンスはマジやばい。 オレはその鉄壁をいかに崩すかということをずっと考えてきたけれど、もうそれは諦めた。凄まじい黒子っちの親友パワーに対抗できるもんはない!! なんにもない!! だって中学の時からずっと探してるけど全然見つかんないもん!! そういうわけなので、オレは大人しく黒子っちのサンドバッグになるしかない。彼氏なのに。ちゃんの彼氏(や、やっぱり照れるッス!!)なのに!! でもこういう煽りに反応しちゃうと、ちゃんに黒子っちがないコトないコト吹き込むかもしれないのだ。そしてちゃんは黒子っちを心の底から信頼してるから、きっとそれをそのまんま信じるに違いない。悔しいケド、「黄瀬君、そんなこと思ってたの? ……信じられない。もう別れよう?」とか言われてる場面ハッキリ想像できる!! オレはやっと、念願のちゃんの“彼氏”というポジションを手に入れることができたのに、名前が変わっただけで関係性の進歩はほんの少し。なのに別れることになっちゃったらジョーダンじゃないッス!! ……ちょっと盛ったッス!! ほんの少しどころか、進歩は“まったく” ないッス!!!! 「ま、真顔でなんておそろしーコト言うんスか黒子っち! つかヤに決まってんじゃんそんなの!!」 黒子っちはオレに特別冷たい。それはよーく分かってる。しかもちゃんの彼氏になれた今、黒子っちが以前にも増して冷たいのも分かる。でもそれを「じゃあ仕方ないッスよね! ハハハ」と受け入れられるかというと、それとこれとは全くの別問題だ。いや、そんなコト当たり前なんスけどね! でもオレちゃんと別れたくなんかないし!! 物語はまだまだこれからだし!! ちゃんとラブラブしたいし!! だからサンドバッグでも切られ役――殴られ役か、この場合。いや、名前なんかなんでもいいッス――でもオレは我慢しつづける!!!! たとえ何を言われたってオレは全然「キミがイヤだとかそうじゃないとか関係あります? ないです(キッパリ)。 キミみたいなどう見ても頭も下半身もユルイ男はちゃんに相応しくありません。よって、別れてください。それか死んで下さい」 だい、じょう、ぶ……。 「あるから!オレにも人権あるから! っつーかオレちゃんしか好きじゃないしッかかかっ、下半身だって! ちゃんにしか許してないッスよ!! ヒドイ!」 やばい、言ったそばからノっちゃった。 「ボクのちゃんをそういう気色の悪い妄想で穢すのやめてもらえます? 死んでくれます?」 そういうの返ってくると思った! 思ってたけどなんっでそうも鋭い攻撃ばかり繰り出す!! オレだって……オレだって傷つくし、そもそもなんでちゃんの友達……大親友の黒子っちにそんなコト言われなくちゃならない!! でもこれは思うだけで、口が裂けたって絶対言えない。言ったら最後、オレはちゃんと別れなくちゃいけなくなるかもしれないのだ。しかも高確率で。ちゃんのコトこんなに大好きで、やっとちゃんの彼氏になれたのに! 付き合って早々に黒子っちのせいで別れなくちゃいけなくなったらオレは死ぬ。ホントに死ぬ。 なのに……!! 「てゆーか! なんっで黒子っちにンなコト言われなきゃなんないの!? ちゃんと付き合ってるのはオレなんス。ちゃんが! オレを選んだんスよっ!?」 「あんなに毎日しつこく付き纏われたら誰だって諦めます。ちゃんは選んだのではなく、選ばざるをえなかっただけです。そしてボクは彼女の親友です(ドヤッ)」 しつこくなんか! ……して、ない……ッスよ!!!! (※お付き合いできる前を回想しています) ★★★ 「あっ、ちゃん!」 「? 黄瀬君……なんで誠凛に……あ、テツくんになにか用事?」 「黒子っち?! 違うッスまさか今どこかに黒子っちが?!」 「……ううん、テツくん……今日は委員会があるから……暗くなったら、あぶないから、さきに……帰っててくださいって……(しゅん)」 「ぃよっしゃああああああああああああああああ!!!!」 「(びくっ)え、あの……じゃあ、わたし帰るから……。テツくんにしんぱい……かけたく、ないし」 「オレがおうちまで送るッス! 黒子っちいないならオレ送るッス! 送らせて!!」 「え、ううん、へいき。黄瀬君も気をつけて帰ってね。じゃあ、ばいば「いや! オレが送るッス!!!!」い……。え、で、でも、あの、黄瀬君にめいわく、かけちゃったら、テツくん、怒っちゃうかもしれないし……(しゅん)」 「大丈夫ッスよ! 黒子っちちゃんが何してもぜっっっっっっっっっっっっっっっっったい怒んないスから!!」 「え、でも、でもね、」 「オレが送るッス!!!! 送らせてくんなきゃ送らせてくれるまでずっと帰さない!!!!」 「(びくっ)う、うん、わ、わかった。じゃあ、あの、おねがい、します」 「うん! やっぱりちゃん大好きッス! オレと付き合って! お願い!!」 た、確かにこの時はちょっと強引だったかもしんないけど! ・ ・ ・ 「あーっ! ちゃんみーっけ!」 「黄瀬君? なんでここに……」 「気安くボクのお姫様に話しかけるのやめてもらえますか? 帰って下さい。それか死んで下さい」 「やっぱり黒子っち! っていうか! なんでふたりでファッションビルなんかにいるんスか!」 「なんでって、ちゃんのお買い物をするためですけど。時間もったいないのでさようなら」 「ちょっと待った! 洋服ならオレがちゃんに似合うの選ぶッス! モデルだし!!」 「結構です。キミ、ちゃんの好みとか知らないでしょうボクは知ってますけど。 だから邪魔ですさようなら」 「わ、分かったッス……! じゃ、じゃあ荷物持ち! 荷物持ちするんで!!」 「結構です。ボクがいるのでキミはいりませんさようなら」 「あ、あの「なんのために黒子っちんち行って、さりげなく今日の予定聞いてきたと思ってんスか!! ……あ」え……?」 「偶然を装ってここへ来たんですねそんなことだろうと思ってましたけど。ボクの家まで来るなんて死にたいんですか? 帰ったら玄関周りに殺虫剤でも撒いておきます死んで下さい。さ、ちゃん、ストーカーとちゃんがお話しなんてしたら危ないですからね。行きましょう」 「うん」 「ちょ、ちょっと待って……!! 好きなんスちゃんのコト! だから待って!!」 ついてってちゃんにずっと不思議そうな顔されたけど!! ・ ・ ・ 「……あ、黄瀬君」 「またですか。帰ってもらえます? ボクとちゃん、これからデートなので」 「帰らないッス! デートならもっと帰らないッス!! てゆーか付き合ってないじゃん!! てゆーか放課後制服デートとか羨ましすぎるんスけど!!!! ……でっ、デートではないッスけど!!!!(※自分で言ってちょっとショック)」 「……え(付き合って、ない…?)」 「ちゃんを傷つけるなんてキミは本当にどうかしてますね。 知ってましたけど」 「え、だってホントのことじゃ……」 「テツくん、あの、わたし、」 「大丈夫ですよ、ちゃん。ボクとちゃんは、ちゃんと(親友として)お付き合いしてます」 「(ぱあっ)そうだよね! ちゃんと、(親友として)お付き合いしてる、よね」 「そんな! ちゃん! オレ、昨日もメールしたッスよね?! 好きだよって!!」 「え、えっと、あの、」 「したッス!! じゃあ今もう一回言う!! 好きッス!! 付き合って!!」 「黄瀬君、もうこの際お願いしますから死んで下さい。それかちゃんに近づくのをやめて下さい。 どっちがいいですか」 「(聞いちゃいない)ちゃん! オレ……オレ!! ちゃんが付き合ってくれないなら死ぬしかないッス!! だから!!」 「(イラッ)じゃあ死ぬということでまとまりましたね。よかったです。さ、 ちゃん、今日はどこへ行きますか? どこでも好きなところでいいんですよ」 「えっとね、今日はテツくんが行きたいところがいいの」 「(きゅん)ボクのかわいい人、大好きです」 「(きゅん)う、うん! わたしもテツくんだいすき!」 「ちょ、待っ……! ちゃん待ってオレとも付き合って下さいッス!!」 ……くそ、どの場面にも黒子っちがいる……!! そしてオレは相手にされてない……!! でも、でもちゃんとこうやって付き合えるってコトになったし!!!! ……なった、し……。 ……あっ!!!! そうッスよ、告白したとき!! ちゃん笑顔で「いいよ」って言ってくれたし!! 「っちゃん! あの、に、日曜日に急に呼び出しちゃったりして、ごめんね! でも今日は黒子っちと一緒にいないって、昨日メールでゆってたから! ……あ」 「(じわぁ)う、うん、きょう、テツくんおうちの用事で、いなくって、」 「ごっ、ごめん! 泣かないで!! そ、そう! オレの用事! ね、オレの用事の話しよう!!」 「(ぐすっ)うん……」 「(黒子っちの名前はもう出さないように気をつけよう)そ、それで、なんスけど、」 「うん……(テツくん……)」 「あの、(くそっ、今日に限って言葉が!!)」 「……うん?」 「(きゅん)……オレと、オレと付き合って下さい!! オレ、中学ん時からずっとちゃんのことだいすきでっ、それで、ずっと付き合いたくて、でも黒子っちと誠凛行っちゃったし、オレ海常だし、だから付き合ってほしいんス!!!!」 「……うん、いいよ」 「(わ、わらった……!)…………?! ?! え?! いま、今なんて?!」 「(びくっ)え、い、いいよって、」 「ほ、ほんとに?」 「うん」 「……………っしゃああああああああああああ!!!!!! ちゃん大好きッス!! 超すきッス!! だいだいだいだいだいすきッス!!!!」 「うん、ありがとう」 「ほんとのほんとにいいんスよね?! オレの彼女、なってくれるんスよね?!?!?!?」 「(びくっ)え、う、うん。黄瀬君の、えっと……かの、じょ、なる」 「……大好きッス! オレの天使ッス!! ずーっとそばにいる!!!!」 「う、うん、」 ★★★ ……ちゃんてば照れ屋さんだから! だからオレと黒子っちとの対応に差があるんスよ!! …………。 「…………ぐっ……し、親友……!! た、確かに、ちゃんは黒子っちにすごいやさしいッスけど……! オレよりずっと黒子っちのほうが好きだよ感スゲーけど!! でも、でも彼氏になれたんスよ! ちゃんがオレと付き合ってくれるって! 「いいよ」って!!」 「まぁキミがどう思おうと勝手です。でも、ふふ、ボクとちゃんは親友 ……ですからね。キミはこの先に彼氏じゃなくなると思うので別れたらもう一生 、一切、彼女との関わりは持てませんが、ボクは親友ですから? いつまでも仲良しで、ずっと一緒です。友情って何物にも代えられない、一生の宝って言いますしね(ふふん)」 「……う、う……うわぁあああああああああん!! オレのコト好きって(100回に1回くらいは)ゆってくれるからぜんっぜん羨ましくなんかないっスからァアアアアア!!!!」 |