「――にしても、今日はいつになく着飾ってるじゃあないか、おひいさん。きみが進んでこんなことをするなんて、一体どういう風の吹き回しだい?」 あれよあれよという間に部屋に入れられたは、しげしげと自分を見つめる鶴丸国永に首を傾げた。 さて、が着飾っている理由を知らぬ鶴丸――もちろん、他のものも皆――と、肝心の事情を話す機会をすっかり失っていた。お互いに前提を共有していないので、既に話は食い違っている。 「え? え、いや、そりゃあ下手な格好で行くわけにはいかないじゃないですか」 からすれば、大切な友人の結婚式に出席するのであれば、それにふさわしい装いでなければならないから着飾ったわけだが、を迎え入れた鶴丸を代表としてこの本丸に在籍するものは皆、そうとは知らない。 わざわざ着飾って会いに行く相手――つまり、が好いている男、もしくはひっそりと交際している男のために着飾ったものだと思っている。しかも、それを隠すために何も言わずに出て行った。挙句、やっと戻ってきたと思えば涙に濡れているときた。こうなると、すれ違いは止まらない。 「……へえ、そうかい。それで?どうだった」と言った鶴丸は、美しく着飾って会いに行った男は、どういうわけできみを傷つけたのか、という意味でそう尋ねた。――が、これを聞いたは、感動的だった結婚式の話を聞いてくれるものだと受け取った。 「き、聞いてくれるんですか鶴丸さん……!」 濡れた睫毛に目を細めて、鶴丸は言った。 「もちろんさ、きみの話ならいくらでも」 いくらでも聞いて男の正体を突き止めてやる。そういうわけだ。 そのすぐ隣に座る一期一振が、「お嬢様、どうぞこちらを」とハンカチをに差し出す。だが、礼を言って目元を拭う様を見た一期は、堪えきれぬとばかりに自らもハンカチを取り出し目に押し当てた。 「ああ、なんてことだ……お嬢様が、このような……っく、」 さめざめと泣きだした兄の背中を、前田藤四郎がそっと撫でる。それから、「いち兄、お気持ちはもちろん、この僕も分かります。ええ、もちろん。でも、僕たちがそのようでは、お嬢様がお話しできませんよ」と言って、さらにティッシュ――箱のままで――をそっと差し出した。 「しかし前田……あんまりじゃないか……お嬢様のどこに不足があると――」 が卓袱台から身を乗り出した。 「いや、本当に一期さんの仰る通りでして、わたし一目見てすぐ大泣きしちゃって、情けないばっかりでしたよ〜! ……うっ、また泣きそう……!」 これは、大切な友人の晴れ姿に感動しきって一目見ただけで胸がいっぱいになり、涙を堪えることなど到底無理だった……という意味なのだが。 「お嬢様……! ……前田、今すぐ主の元へ行きなさい。議論の余地などない、即刻行動すべきだとお伝えしてくるんだ」 この本丸の尊ぶべき姫が、情けないなどと言って強がる事態――それを引き起こした男を許すわけにはいかないと、一期はハンカチを強く握り締めた。すると、兄のこの言葉に席を立とうとした前田を、鶴丸が「まあまあ、落ち着け」と視線で制す。ただし、鶴丸のほうも我慢ならないのは同じことだった。 「しかし、だ。情けないとは聞き捨てならん話だな、おひいさん。こんなに美しく着飾ったきみを泣かせたんだ、相手のほうに問題があるとしか思えんが……そこはどうなんだい? なに、きみがここで何をどう言おうと、俺たちには関係ないんだ。ほら、素直に話してみろ」 そうだ。この本丸にあるものは皆、を傷つけた不届き者が“どうなろうと”関係ない。大切なことはただ一つ、なぜが泣くような事態になったのか、これだけである。その原因さえはっきりさせることができれば、大広間に集まっている男士全員で男を“片付ける”心積りでいるし、そのために待機しているのだ。慎重に、しかし詳しく聞き出すつもりだった。 ――が、が本丸を黙って出たのは面倒を避けたい一心で、行った先は友人の結婚式の会場だ。話が噛み合わないのも当然である。 「問題なんてそんな! あ、あんなに綺麗な彼女を見て、泣くなってことならそっちのほうが問題ですよ……! ほんとに、ほんとうにきれいで!心の底からよかったって思いました! あんなに良い子、他にはいませんからね、だ、誰より、しあわせに……! ううっ、ご、ごめんなさい、鶴丸さんたちには関係ない話なのに……いやでもですね、この感情をどこにやったらいいか、わたしももう分かんなくなっちゃって! さすがに泣きすぎて、みんなに笑われちゃいましたよね〜、あはは」 の台詞の意味はこうだ。 少しずつ、しかし着実に愛を育んできた恋人と、やっと一緒になった大切な友人の晴れ姿を前に、感動するなと言うのは無理な話である。何せ素晴らしい友人だ。その幸せを祝わずにいられようか。愛する人と、誰よりも幸せになってほしい。 ただ、その友人のことは何一つ知らぬ鶴丸たちにこんな話をしても、確かに関係のないことである。いやいや、それでもこの感情を吐き出さずにはいられない、なんたって本当に幸せに満ちた時間だった。 しかし、入場してきた二人を一目見ただけで大泣きしてしまったものだから写真を撮ることすらままならなかったわけなので、友人たちにいくらなんでももう泣き出すなんて早すぎるでしょ、と笑われてしまった。 ――が、前提からして食い違っているのだ。伝わるわけがない。 神妙な顔つきで、前田は言った。固く決意した、とも見れる。 「……いち兄……すみませんでした、やはり主さまに今すぐお伝えしてまいります。……このような、このような……! 決して許されていいことではありません!」 すれ違いから生まれてしまった勘違いは加速し、が会いに行った男には別にも女がいて、その女との幸せを願っては身を引いた。心優しいは男を責めることはもちろん、女のことを褒めまでして心を守っている。 ――が、浮気などをする男に蔑ろにされるなど、あってはならない。 この本丸に在籍する刀剣男士たちは皆、自らを励起した審神者の影響を受けて偏った物の考え方をするものばかりであるが、中でも前田は一度こうだと決めたこと――思い込んだこととも言う――からは絶対に逸れない頑固さを持った男士である(恐らく、審神者にとって初めてのドロップ刀であり、その分長くここにあるからだろう)。すくっと立ち上がり、部屋を飛び出そうとした。――が、それを慌ててが止める。は友人の結婚式に出席したとは、もう話した気になっているのだ。しかし(特殊な事情により)、それが“あの”兄の耳に入ってしまうのは避けねばならない。 「え゛っ、ど、どうしたの前田くん……ってお兄ちゃん?! お兄ちゃんはダメ! 絶っっっっ対だめ! 言っちゃだめだよ待って前田くんお願いだからここにい――」 最後まで言い切ることはできなかった。いよいよ我慢ならなくなった一期が、今にも己を召喚せんとばかりの勢いで立ち上がったからである。 「お嬢様というものがありながら……! よくお聞きになってくださいお嬢様。あなたが、他に劣るなどと誰が思うでしょうか。もし、もしそのようなことを口にするものがあれば、この一期一振が……!」 黙っていられなくなったのは、鶴丸も同じだった。の話し振りからして、こう解釈したのだ。 ただでさえに対する所業は許されるものではないというのに、わざわざ、人前で、そのような屈辱を味わわされたのかと。 「……。きみ、わざわざ、人前で、恥をかかされたって言うのか? きみが?」 鶴丸のこの言葉に、これはどうもおかしいとがやっと気づいた。 「……はっ? えっ、いや、恥ずかしいとは思いましたけど、恥をかかされた……? いや、そんなこと思うわけないじゃないですか! 友達のお祝いごとですよ?! えっ? なんですかさっきから! わたしの友達の結婚式の話、聞いてくれるって言いましたよね?! えっ違うの?!」 一期、前田がぴたりと動きを止める。目を丸くした鶴丸が、安堵したような決まり悪そうな、なんとも言えぬ表情で頬をかいた。すれ違いにすれ違ったが、ようやっとお互い(というよりの)話が通じた瞬間である。 「……おっと、こりゃあ一大事だな……。前田、今すぐ大広間へ行け。すべて勘違いだ、俺が責任持って説明するから待てと、そう伝えてくれ」 鶴丸の言葉に「はい、すぐに」と応えた前田が、を見つめながら愛らしく笑顔を浮かべる。 「……そうですか、お嬢様のご友人の……。お優しいお嬢様が、ここまで祝福なさっているのです。そのご友人も、大層お喜びになったでしょうね。おめでとうございます! それでは、僕は失礼いたします」 ぴりぴりしていたのが嘘のような様子で部屋を出ていく前田の背中に、は首を傾げた。あれ? やっぱり何かおかしなことになってる……? と。 「えっ、う、うん、すごく喜んでたよ……え?」 すると、涙に暮れていた一期も落ち着きを取り戻し、もうすっかり冷めてしまった紅茶をゆっくりと飲み下した。 「……いやはや、我を失って取り乱すなど、お嬢様の御前でとんだ失礼を……」 ――が、その後に優しすぎる微笑みを浮かべて続けた。 「しかしながら、安心いたしました。お嬢様をお相手とするものならば、やはり我々が責任持って選別したものがよいですからな。せめてこの私を折ってみせねば、主を含めて認めるものなどおらんでしょう。ふふ、本当に、本当に安心いたしました」 何がなんだかやはり分からないが、折る? 一期さんを? は兄が審神者であることはもちろん、本丸のものの正体はすべて知らない。しかし、何かにつけて折るだとか折れるだとか耳にしたことのあるは、ビクッと体を弾ませた。 「?! ん゛?!?! えっ、ど、どういう……」 常とは違う様子でいたはずの鶴丸も、そんなことは嘘だったと言わんばかりに機嫌良さげに笑う。 「すまんすまん、すべてこの俺が悪い。あってはならん勘違いだった。……そもそも、起きるはずもないことだ」 をこの世の誰よりも可愛がっている兄が、そしてその兄によって励起された刀剣男士たちの目の黒いうちは、確かにそんな“間違い”は起きないだろう。のほうはもちろん、縁があれば恋人にしろ伴侶にしろ、いたって構わないわけだが。 まあしかし、そんな“縁”に恵まれることは(今のところ)ない。なんたって兄がいる。加えて、その兄の刀剣男士たちも後ろに控えているのだから。 「いや、本当に悪かったな、おひいさん。ああ、きみを信用していないわけじゃあないんだぜ。ただな、」 「ちょ、ちょっと待ってください、えっ? な、何がどうなって……?」 帰って早々に部屋に押し込まれたと思えば、どうしてだか話が食い違っていたことにやっと気づきはじめただったが、「うんうん、それも今から説明しよう。ちょうど皆が大広間に集まっているんだ。そうだ! 友人の祝い事できみがそんなにも喜ぶなら、今日は本丸でも宴を開こうじゃないか。うん、それがいい!」などと言って眩しい笑顔を浮かべる鶴丸に対して言えることは、たった一つきりだった。 「ん〜?! 全然意味が分からないな〜〜〜〜?!?!」 べそべそしていたお兄ちゃんは、わたしの姿を捉えるとさらに泣き喚いた。いや、確かに黙って出て行ったのは悪いと思っているので宥めようとしたのだけれど、彼氏がどうの、悪い男に騙されてどうのと言い出すので、鶴丸さんがあれこれと説明をして――わたしは洗いざらい話すことになってしまった。……ああ……。 けれど、わたしの友達(ミーコちゃん)の結婚式に出席したと知ったお兄ちゃんは明るい表情で、「なんだ〜〜〜〜! ミーコちゃんの結婚式かぁ〜〜〜〜! それならお兄ちゃんもお祝いに何か送ったほうがいいね? ちゃんの一番のお友達だもんね〜〜!」とかなんとか言い出すので頭が痛い。 「ちょっと! “ミーコちゃん”は仲良しの間だけで呼んでるんだから、お兄ちゃんは呼ばないでって前から言ってるでしょ!」 「いいじゃん〜〜ちゃんのお友達ならお兄ちゃんにとっても大事なのは変わんないんだから女の子なら〜〜」 ……お兄ちゃんがそうだから黙って出て行ったんだよわたしは……。 「……聞こえなかったことにするね! ――で、なんでこんな仰々しいことに……?」 大広間に全員が集まると壮観である。やっぱり本丸って不思議空間だ……だってお兄ちゃんの部屋だよほんとは……。 ぴんと背筋を伸ばしてきっちり正座していた皆さんの中から、乱ちゃんが飛び出してきた。いつもながら熱烈に、ぎゅうっとしがみついてくる。 「だぁって〜! ちゃん、いつもは宗三さんたちがお世話焼かなきゃこんなオシャレしないのに、急に出て行ってこーんなにかわいくなってたらビックリもするよ!」 すると清光くんもそばへと寄ってきて、「そーそー。っていうかほんとかわい〜〜! 平野〜! 写真撮ってー!」と……さ、さすがは本丸のオシャレ番長……褒め上手にも程がある……。 乱ちゃんの背中をぽんぽんしていると、清光くんに呼ばれた平野くんがサッと目の前に現れた。う、うん、今日も残像を残すような超スピードだね……。いやしかし、その目元がなぜか赤くなっている。 「もちろんです! お任せください!」と笑顔を浮かべてカメラ(プロ仕様)を構える姿は微笑ましいけれど。 そこへすすっと宗三さんがやってきて、わたしの姿をじっと見つめた。……上から下までじっくりと。そして溜め息を吐いたので、嫌な予感が「まったく、僕に一言寄越せばいくらでも綺麗に仕上げたというのに……、まさかその髪を結ったのは男だなんて言いませんよね」…………???? 「えっ? いや、いつもお世話になってる美容師さんですけど……?」 「だからそれは男なのか女なのかと聞いてるんです」 えっ……な、なんで宗三さん怒ってるの……? と思いつつ、眉間の皺の深さに慌てて「じょ、女性です!」と声を張って応えると、すぐにスンといつものアンニュイな感じが色っぽいお顔に戻ってくれた。 「ならいいんです、ええ、女性ならね」 ……え? ほんとになんだったの……? と思ったのも束の間、宗三さんはまたわたしの姿をじっくり見つめると……さっきよりももっと深い溜め息を吐いた。そして隣に並んでいた蜂須賀さんにちらりと視線をやって、「――それよりどう思いますか、蜂須賀。この髪飾り、僕はもっと淡い色のパールが良かったと思いますけどね、には」なんて言うので、さ、さすが豪華絢爛な時代を生きたのかな??と思わざるをえない(超高級嗜好)の美的センスが……と喉がごくりと上下してしまう……。 わたしもちらっと蜂須賀さんの様子を窺うと――。 「いや、そもそも形が気に入らないな。結婚式だったなら、もっと華やかなものでも浮かなかったはずだ。歌仙、この間きみが買った髪留めがあっただろう。あちらのほうがいいんじゃないかと思うが、どうだろうか」 や、やっぱりね〜〜〜〜???? 頭を抱えたくなったが、着せ替え衆の一員であり、本丸のまとめ役でもある歌仙さんまでもが「そうだね、あれなら華やかさの中にきちんと品があるし、宗三の言うパールの色合いも問題ない。うん、持ってこよう」とか言い出すから、一気に血の気が引いた。 「え゛っいやもう結婚式終わったので!! いらないです!!!!」 出て行こうとする歌仙さんの腕を引っ掴む前に、いまつるちゃんがわたしの腕を引いた。 「ひめ」 「あっ、いまつるちゃん! わたし髪飾りなんていらないよ……! わたしのお祝いごとではないんだよ……!」 こ、ここは頼れる賢いちびっ子・いまつるちゃんヘルプを使う時……! と思ったのだけど、いまつるちゃんはにこっと愛らしい笑顔を浮かべて言った。 「いいえ、おいわいごとですよ。しゅやくは、もちろんひめです。ああ、よかった! ぼくも、あんしんしました。どこのみのほどしらずが、ひめをたぶらかしたんだかと、きがきじゃなかったんですよ! いざとなれば、もよびよせようとおもってたんですからね!」 ……?!?! 「ちゃん?! もう自分の本丸で頑張ってるんだよね?! そっとしておこう?!?!」 高校生ながらもこの本丸に研修にやってきていたちゃんは、研修後に受ける……予備校? 資格センター? みたいなところの最終テストに見事合格して、つい先日には自分の本丸――という名の会社だよね?――を立ち上げたのだ。今がちょうど大変で大事な時だろうに、こんなことで呼び出すなんてことしちゃダメだよ……! ……いや、一番怖いのは、この本丸の人たちのいらぬ影響を受けてしまったちゃんなら勇んでやってきてしまいそうなところである……。 ――と、いうかだ。 「……あのね? ……わたしが結婚なんてするはずないじゃん……彼氏すらいないんだよ……い、今はね! 今は!!!!」 ……なんでこんな悲しいことをわざわざ自分で言わなくちゃいけないんだろう……い、いや、今は! 今は縁がないだけだし! 今は!! ……た、多分……と、ますます悲しい……と肩を落とす寸前、乱ちゃんがとんでもないことを言い出した。 「薬研がいるじゃん! ちゃんが結婚したいなら、今すぐにでもできるよ! ねっ、薬研! あ、薬研じゃなくてもいち兄がいるよ! どっちがいい? ちゃん」 「み゛っ、乱ちゃん! だめ! そんなこと言っちゃだめ!」 乱ちゃんわたし何度も言ってるじゃん〜〜! そんなことを言ってしまうと、というか聞かれてしまうと――。 「――だめ? 俺にならいつ嫁いだっていいと、何度も言ったつもりだったんだが。ああ、百夜通いが必要か? それとも簪か」 「やげんくんやめて……やめておねがい……!」 こういうことになっちゃうんだよおまわりさんわたしは、わたしはほんとに違いますからね……! 腕を組んで小首を傾げながら、やけに色っぽく唇をしならせて薬研くんが目を細める。う゛っ、し、心臓に悪いからやめてって何度も言ってるよね〜〜〜〜?!?! 膝ががくがくしそう……と、思わず前屈みになって膝を押さえながら踏ん張るわたしのそばに、一期さんが跪いてわたしを見上げた。……嫌な予感がす「では、私がお相手ということになりますかな? もちろん、お嬢様に不自由などは一切させません。粟田口は皆、喜んでお迎えいたします」…………。 「おっと、俺が先だぜ、いち兄」 「はは、順番なんてあったかい? どちらにせよ、お選びになるのはお嬢様だろう」 「まるで自分が選ばれるってな口振りだなぁ」 「それはもちろん。私は誰よりお嬢様に尽くしているつもりだからね」 どっちも選ばないよ……! とわたしが声を上げる前に、いつの間にかわたしの目の前に立っていた長谷部さんが「おい聞き捨てならんぞ一期一振ッ!!!! 様に最も尽くしているのはこの俺だッ!!!! そうですね様」とか言い出すのでもう……もう何がなんだか分かんないな?!?! えっ???? 「え゛っ、そ、えっ、う゛、う〜〜〜〜ん?!?!?!」 もはやへらへらっと愛想笑いするしかない……と、日本人にありがちな笑って誤魔化すを体現するわたし……。 「……お、おいっ!」 後ろから放たれた声にビクッと肩が持ち上がった。 「…びっ……くりした……。ど、どうしたの国広くん……」 国広くんはいつもの布をぐいっと引っ張り下げ、なおかつ顔までも俯かせながら言った。次の瞬間、空気が凍った。 「……は、俺が責任持って……、娶ると、母君に約束した」 「あっ、そうだ、前に母君にそう言ってお見合い取り止めにしてもらったよね」と、サラッと安定くんが言葉を足した。た、確かにお母さんの意向でそんなようなこともあったけど「山姥切なら、まぁ僕も考えるよ。少なくとも新撰組の野郎全部折れたらね」…………?!?!?!?!?! 「や、安定くん何を言うのかな〜〜???? っていうか国広くん! あんなのはその場限りの――」 「偽物くんが、を娶るだって? ああ、そうか、俺が来る前の話か。本物がいなければそうするしかない、分かるさ」 姿勢正しく、美しく座していた長義さんが、ゆっくりと立ち上がった。……も、もうやめましょう……。これ以上この話をするのはやめ「だが、今は違う。を、おまえが? 笑わせるなよ。俺が来た以上、その役目は俺のものだ。、こちらへおいで。きみが望むように話を進めよう。白無垢か? いや、きみはドレスのほうがいいのかな?俺はどちらでも構わないよ」……やめましょうよ……やめましょうよ……! わたしは頭を抱え、いよいよその場に崩れ落ちた。 「……待って……待って……いろんなものが大渋滞起こしてるから待って……」 |