「、すまないが、この案件に関わる過去のデータはどこにある?」 デスクまでやってきた福本さんに、は美しく咲き誇るお花ですら無理アカンこれは勝てない……と萎びそうな笑顔で「それなら先に、資料室のD3にある記録に目を通してみたほうがいいと思います。その案件のクライアントは……ちょっと難しい方なので。お持ちしましょうか?」と、にこにこしながら首を傾げた。 「ああ、頼む。手間をかけてすまない」 “鉄仮面”と噂されるのも納得の鉄仮面ぶりを発揮している福本さんだが、「いえ、とんでもないです。それと、今回のデータ資料は私がまとめたものなので、参考になるものもお送りしておきますね」と言いながらマウスを動かして、ファイルの準備をテキパキするちゃんの姿には「……きみは本当に優秀だな。うちに欲しいくらいだ」と言って口元を緩めた。 すると、うちのウルトラスーパーエンジェルちゃんから嬉しい! すっごく嬉しい! という光り輝くオーラが眩しく放たれ、完全無敵のキュートさ全開最高かわいい。私のパシャりたさも全開。 「福本さんのような方にそう言っていただけると嬉しいです! ――データの送信、完了です。では、資料お持ちしますね」 そう言って立ち上がるに、福本さんが「データのチェックをしておく。急がなくていい」とデスクに戻ろうとすると、はまたもお花以下略の笑顔を浮かべた。 「いえ、何かありましたら、なんでも仰ってください。お役に立てれば、わたしはそれでいいので!」 福本さんが、じっとを見つめる。 「そうか。……三好が気に入るだけあるな、きみは」 この言葉に顔を真っ赤にして、は早口に「え……、っあ、あっ、し、資料! すぐにお持ちしますので! 失礼します!」と応えて頭を下げつつ、ばびゅんっとオフィスを出て行った。……ヤバイ……このたったの数分間で三好さんにもお裾分けしてあげたいちゃんがいっぱい……え? いくらこの場にいないとしても、三好さんはの正式な彼氏なんだからお裾分けも何もないって?? いやいやいや三好さんがの彼氏に奇跡的になったとしても、この私とはレベルってのが違うから。ちゃんのキュートを間近で拝む一番の権利があるのはこの私。三好さんは良くて二番手。ちゃんには完全無敵の至上主義第一人者のパパはもちろん、結城のおじさま(スーパーエリート養成予備校の校長)というとんでもスペックのスポンサーがついてるから、割とマジに二番手かどうかも微妙だから。 ――とかいうのは今はいいとして。 ……ちゃんのお仕事頑張るモードは今日も大変素晴らしい……この世の賛辞という賛辞すべてを捧げたい……さすがうちの子アンタがナンバーワンでオンリーワン…………いやだから今はそれ違う。いやまぁそうなんだけど……やっぱり福本さんみたいなデキるッ!! って人に褒められると、は嬉しくて嬉しくてしょうがないんだな……フェアリー度が天井知らずに高まっていく……。はあ……かわいい……。でもかわいいけどつらい……三好さんが留守にしている間(の)を預かっている私としてはツラい……。だってもし仮にこのシーンに三好さんが立ち会ってるとしたら、かわいい大好き無理つらい好き……ってなりながらも、福本さんに対する敵意(という名の殺意)も無理どうにもできないおまわりさん現場はここですってなるじゃん? ……でもさ? 落ち着いて考えるとさ?? が進んで福本さんを気にかけてるのはさ……三好さんの部下として認められたい、そして自分のその働きによって、三好さんがどれだけ仕事できる人かっていうのをもっともっと評価してもらいたいって気持ちが大前提の行動なのよ……。私はそうだって分かってるから、状況知ったら三好さんがグチグチ言って女々しくくっだらねえ嫉妬するとしても、のこの頑張りはホンット健気だしかわいいし、もういじらしくて天使すぎて微笑ましいし愛おしいじゃん?? ……つまり何が言いたいのかと言うと、なんだかんだ私も見守るしかないな……ってことよ……。 ちらっと、いつもは三好さんが使ってるデスクに視線をやると、福本さんが液晶と資料とを交互に確認していて……いや、なんかもうオーラがすごいっていう。真面目さと優秀さがこれでもかってほどに溢れまくってるっていう。……こんな人に優秀って言ってもらえたら、そりゃ嬉しくもなるし、それが三好さんの評価にも繋がるだろうって思っていればが一生懸命になるのも仕方ないっていうかさ……? …………三好さんに合点承知之助とは言ったものの、のしてることは全部三好さんのためなんだよなぁ〜〜健気〜〜かわいい〜〜〜〜!!!! としか思えない私は、こうなりゃただただ見守るしかないじゃん???? だっての今の行動原理、全部が全部三好さんのためなんだもんよ……ダメッ! よしなさいッ! とか言えることある???? ないでしょ???? 逆でしょ褒める要素しかなくない???? この健気さといじらしさに拍手送る以外になんかある???? なくない???????? ……すんげえ長い語りになったけど要するに……今さらだけど(三好さんの斜め上思考のことを考えると)めんどくせえこと安請け合いしちゃったな〜〜! としか思えないのが現状……。 はあ……と溜め息を吐いた瞬間、パソコンがメールの受信を知らせてきた。…………送信元のアドレスが三好さんのものである……。タイミングがすげえなやっぱに関することへのセンサーの性能の良さだけはヤバイ……っていうか監視装置でもどっかに隠されてんのかとすら思うわ……。あの人拗らせすぎてるからやりそうじゃん……そしてメールの内容も大体分かる……と思いつつ、私はしゃあねえなとメールを開いた。 内容はやっぱり、はどうしてるか、自分がいなくて寂しがってはいないか、体調はどうか、やっぱり寂しがって泣いてたりしないか、そんなようなこと――特に自分がいなくて寂しがってないか――ばかりだった。なのに無駄に高い語彙力と表現力で結局はリピートなのにスラスラ読めてしまうのがなんか腹立つ〜〜〜〜! ……っていうか!!!! 「いやなんっでそれをわざわざ社用メール使ってまで私に送ってくんだよ!!!! に直接送ればいいだろうが!!!!!!!!」 オフィスだというのをすっかり忘れて声を出してしまった私に、福本さんが「何か問題があったか?」と言いつつ、わざわざこちらへやってきた。……すんません……いつもの調子でつい……。 「い、いえ、なんでもないですすみません……」 三好さんだったらものすんげえ嫌味言ってくるやつ自分がにデレデレしてる時のこと棚に上げて……と思いつつペコペコ頭を下げる私だったが、福本さんはさして気にした様子もなく、サラッとした口調で「なら構わないが……就業中だ、あまり気を散らすな」と、またデスクのほうへ戻ろうと背を向けた。 「……仰る通りです……」 くそ……三好さんのせいだぞ……。心の中で悪態をついていたところで、福本さんがくるりとこちらを振り返った。 「きみも結果を出せる社員だと聞いている。と同様に、きみにも期待しているんだ。三好の留守で、これまでと勝手が違って戸惑うこともあるだろうが……励んでくれ」 …………やべえ。これでは不真面目代表な私でも……いや、だからこそ福本さんを尊敬せざるをえない……。 それからの展開は早かった。他人に厳しい――自分にはもっと厳しいけど――仕事の鬼である三好さんと比較すると、福本さんという人は全体の進行をまずは把握して、それぞれに無理のないように仕事を振り分け……まぁ、三好さんとはまったく違った方針で仕事をこなすタイプだ。三好さんはほら……仕事に全力投球(しかも、そこがの三好さんに対する尊敬ポイント)だから……こう、徹底して完璧を求める人なんでね……普段とは勝手が違いすぎて困惑してしまう……。 三好さんは、一度失敗したらチャンスは二度と与えない……なーんて言われているが、実際は本人にやる気さえ見られればいくらでも指導してくれるし、これで挽回しろとでも言うように似たような仕事を持ってくるので、この部署で三好さんを悪く言う人間は一人もいない――というのは建前で、単純に三好さんの片思いを部署の人間全員が根気強く見守り続けやっとこさそれが実って三好さんがの“彼氏”という座を勝ち取ることに成功したおかげで、このオフィス在籍社員の士気はうなぎ登りとしか言いようがなかったのだ。なんてったって待ちに待った三好×が楽しめるから。ところがどっこい……ってわけなので、なんとなーく……なんとなーく残念……これからだと期待していた分、余計に辛い……と、仕事はもちろんこなすが、落胆するなというのも無理な話……なんだけれど、肝心の三好さんの愛しの恋人・はケロッとした顔でいつも通り真面目すぎるほど一生懸命仕事に力を注いでいるし、福本さんは三好さんの同期で“あの”D機関卒のエリートとなれば、仕事ができるのは当然。お仕事熱心、そして三好さんに誰より認められたい! という健気なちゃんが、三好さんが戻ってきた時に満足してもらえるように、ここでさらなるステップアップをしたいと張り切って――福本さんの手伝いは率先してやるし、逆に気になることがあれば指導をお願いするしで…………平たく言うと、二人はとてもいい関係を築いている。いや、険悪だったりするより全然いいんだけどね?? 三好さんの性格とか面倒さをよ〜〜く知ってる分、こりゃバレたらアッカンな〜〜! という予感ビシビシなのだ。 そんなことを考えながらも帰り支度を終えて、と二人でエントランスに向かっていると、恋愛マスター・甘利さんに遭遇した。こちらももう退社するようだけれど、珍しく取り巻きの女子たちがいない――ということは、親戚の子だというキュートな女の子・エマちゃんがお泊まりにでもくるのかな? なんて思いつつ、「あ、お疲れさまでーす」と軽い調子で声をかける。 「あぁ、きみたちももう帰り? 三好の留守中は福本がいるって聞いてるけど、どう? 寡黙なほうだからねえ、やりにくいとかない? 何かあれば相談に乗るけど」 のほほんとした調子でにこにこ言う甘利さんに、なんと答えたものかと迷う……。この人ガチのマイペースなくせに、あえて空気読まずに鋭いこと言うから……。いや、実力で同盟入りを果たしただけあって、その情報収集力は頼れると思ってるけど、こう、うま〜〜い具合に引っかき回すとこあるからさ〜〜っていう。その場では気づかんけど、冷静になって振り返ればいい仕事してくれたなってシーンは意外とあるんだけどね実は。 「あ〜〜……いや、すごくデキる人で助かってますけどね……」 結局モヤモヤっとした答えしか出せなかった私だが、うん聞かなくても初めからそうだと思ってたから大丈夫〜〜〜〜みたいなテンションで「あはは、分かってるよ、三好でしょ?」とか言うから、私が深読みしてるだけでガチもんのただのマイペースか???? やっぱ今の語りナシの方向で……と思ったところで、甘利さんが意味深な笑顔を浮かべた。 「でも、せっかくちゃんと付き合えたっていうタイミングでの出張だから、毎日毎日連絡してきてるんじゃないの?」 私が、いやそれどころかこっちの業務時間中に社用メール使ってまでの様子聞いてくるくらいですよ今に始まったことじゃないけどあの人ヤバくないですか?? と言う前に、がなんともないという顔で言った。 「そんな時間、三好さんにないですよ。わざわざ呼ばれたってことは、三好さんじゃないと務まらない仕事だってことですし」 その言葉に、甘利さんは「ふぅん?」との目を見つめる。そして、「まぁ、ちゃんがそれでいいならいいんだけど。あ、エマが来るから、もう行くね。それじゃ、二人ともお疲れさま〜」と言って、ひらひら手を振りながら去っていった。 チラッとの表情を窺うと――なんだか困ったように眉根を寄せている。 「?」と声をかけると、ハッとした様子を見せて「あ、ごめん。ねえ、急だけど何か食べて帰らない?」と笑った。 ……これは……と思いながらも、甘利さんの言う通り、の意思を尊重すべき場面なんだろうなぁ……と思った私は「オッケーオッケー! 何食べる〜?」といつものテンションでそれに応えた。 三好さんがドイツへと旅立って一週間が過ぎたが――は相変わらずお仕事熱心で、福本さんとの関係も非常に良好である。つまり超平和。三好さんが私にはどうしてるかっていう定期連絡を毎日入れてくる以外は超平和。 ……というわけで、今日も今日とてうちの子にはおいしいものしか食べさせないというモンペ上等な信条を持つ私は、数ヶ月前に潰れたチェーン店の跡地にできて早々に話題になったカフェでラブリーなちゃんを堪能しつつ素敵なランチタイムを過ごし、大変ご機嫌である。 「ああ〜〜! あそこのホットサンドめっっっっちゃくちゃおいしかったね!! 大正解!!!!」 はにこにこしながら、「うんっ! また行きたいねえ。次は別のやつにしてみよう。えーと、なんだっけ、わたしが迷ってたやつ……」と上目遣いに首を傾げたが問題ない。なんたって私はちゃんガチ勢のモンペだから。 「大丈夫私が覚えてる。あれは――」 ――と、メニュー名を正確に伝えようと口を開きかけたのだが、前方に見える姿に思わずポーチを落っことした。 「あっ、先輩! 僕です、覚えてらっしゃいますか?」 「?!?! じっ、じつっ、じっ、」 が、ぱあっと表情を輝かせて“彼”に駆け寄った。 「わぁ! 久しぶりだね、実井くん! うちに入社したとは聞いてたけど、全然会わないから……」 「ふふ、ちょっと出向してたんですよ。先輩たち、お変わりなく仲がよろしいようで安心しました。ちょうど今日戻ってきたんですよ。ご挨拶しに行こうかと思ってたんですが、お会いできてよかった」 ………………。 「じっ、じっ、実井ちゃあああぁああん!!!!!!!!」 落としたポーチを拾うことすらせず、私も駆け寄ったというか突進した。だって……だってさ?!?!?!?!?!?! そんな私の姿を見ても、彼――実井ちゃんは愛らしい笑顔を浮かべたまま、「あはは、もう高校生ではないのに、まだ僕をそう呼ぶんですか?」と言うがちょっと待ってねまずすることあるから。 私はスマホを取り出した。 「とりあえず実井ちゃん、ちゃんと並んでくれる? 久しぶりにWエンジェル通称エンジェルーズの写メ撮りたいからお願い」 実井ちゃんは優しい笑い声をこぼして、「それも懐かしいですね。先輩、こっちに寄ってください」と言いつつ、自分からすすっとの隣に並んだ。うあああああもうかわいい〜〜! すでにかわいい〜〜〜〜! やっぱこの二人の組み合わせ無理み激しいしんどいかわいい〜〜〜〜〜〜!!!! 昔っから――そう、私と、そして実井ちゃんがまだ高校生だった時から、私はこのツーショットが好きで好きで好きすぎて、二人の写真だけのアルバムすらあるほどなんですねこれが……。 実井ちゃんは私たちが三年の時の新入生だから、学校生活を語る上では外せないイベントを(と実井ちゃんの二人が)一緒に過ごせるのはたった一回しかない……となれば、私もありとあらゆるシーンを写メりまくるしかなかった。もちろんイベント事だけではなく、二人の微笑ましい瞬間そのすべてを記録したのは言うまでもない。 いや、ちゃんだけでも天使すぎて神様ありがとうございます状態なのに、まるで天使みたいにかわいい男の子が入学してきたと聞けば……まぁ最初は、言うてウチの天使には勝てっこないでしょ、とか思ってたんですけどね……実際見てみたらなるほど分かる神様ありがとうございますだったわけである。実井ちゃんと知り合えたのは本当にラッキーで、くじ引きで決まってしまった図書委員会がキッカケだったんだけど、決まった時はと一緒に帰れないって文句タラッタラだったの手のひら返して喜んだよね。ちなみにちゃんは用事がない限りは私のッ! ことをッ! ちゃんと待っててくれました。好きがすぎる。 ――それはともかく……。 「うん。ふふ、実井くん変わらないねえ。ずっとあの頃のままみたい!」 の言う通り、実井ちゃんてばホンットに変わってない。なんたってお顔がかわいい。ちっとも衰えてない。相変わらず天使。 「……そうですか?」 にこりと笑う実井ちゃん、そして思わぬ再会に嬉しそうなちゃんというエンジェルーズにスマホを向けて、私はベストショットのために構わずその場に膝をついた。 「撮るよ〜! ハイッ! 笑って〜〜! 天使の微笑みして〜〜!! ファンサプリーズッ!!!!!!!! いくよ〜? ハイッ! チー……………………ズ…………?!?!」 …………ちょっっっっっっっっと待とうか???????? 「――あの頃のままみたいだって、先輩が言ったので。あ、先輩、撮れたもの、僕に送ってくれますか? ラインのIDも変わったので、ついでに」 実井ちゃんはかわいい笑顔を浮かべたまま話を続けるが、マジでちょっと待ってほしい。確かに、高校時代と何も変わってない。は当たり前すぎるけど今でも天使というかもはや女神だし、実井ちゃんもプリティーフェイスのままである。 ……が、あの頃とは決定的に違うことがあるしそれがどちゃクソにやべえことだから、昔のノリで恋人繋ぎしてほっぺたくっつけたポーズで写メとか撮っちゃダメなんだ……。 「…………ご、ごめん実井ちゃん言うの忘れてたっていうかタイミングが合わなかったごめん……。あのね、今彼氏いるから、実井ちゃんを信用してないわけじゃないけど、その彼氏ってのがのことについてはマジでやべえヤツだから……この写メは送れない……」 私のスマホには残しとくけどもこれをちゃん好き好きいっぱいちゅきな三好さんに何らかのアレで見られてしまっ「ああ、三好さんと付き合ってるんでしたね、先輩。聞きましたよ」…………なんて???? 「知ってるの?!?!」 ガバッと立ち上がった私に、実井ちゃんはサラッと「ええ、予備校――D機関の先輩と後輩ですからね、一応。あそこは上下関係は特になかったですけど」と言うので、私は思わず真顔になった。 「…………実井ちゃんが常に学年トップ爆走してたの納得……」というわけである。……まぁね、まぁそれはともかくね……? 「――ってことなら話は早い。の彼氏はその三好さんなのよ。で、今ドイツ行ってるのね。嫉妬の鬼だからホンッッッット気をつけて!!!! 分かるでしょ?!?! あのめんどくせえ性格ッ!!!!」 ズイッと顔を寄せて力説する私に、実井ちゃんがしょんぼりと眉を下げた……。 「え……でも、僕……本社に戻ったら、また先輩たちと一緒に――あの頃とは違いますけど、ランチとか、飲みに行ったりだとか、できると思っていて……」 …………。一応もう一回言っときますけど、私ちゃんと実井ちゃんのエンジェルーズ激推し人間なのよ……。 「……ちゃん…………三好さんにはバレないようにガッチリ協力するからとりあえず三好さんがいない間は実井ちゃんとランチしよう飲み行こう?!?!」 の両肩を掴んで迫ると、きょとんと首を傾げられた。 「え? 別に三好さんは関係ないじゃん。実井くんは、わたしたちの後輩だし、そもそも三好さんにとっても後輩でしょ? 何も問題にならないよ〜〜」 もっかい真顔になった。 「ゔっ……うん……いや、そうなんだけど……そうかもしれないんだけど……」 それは一般論であって常に持論でしか行動しない唯我独尊摩訶不思議ワールドの創造主には通用しないと思うの私……。 だがしかし、の言葉に表情を輝かせる実井ちゃんを見たらもう私は……。 「よかった! 先輩がそう言ってくれるなら、大丈夫ですよね。それじゃあ、早速今晩どうですか? 僕、しばらく地方に出てたので、この辺りのお店とか、よく分からなくて……オススメのところ、連れて行ってください」 「そうだね! せっかくだから今日行こう! 実井くんが帰ってきたことと、久しぶりに会えたお祝いで。ねえ、金曜日だし、いいよね? 元々そのつもりだったんだし」 二人が昔と変わらずにこにこ笑い合ってる姿が尊すぎて涙出そうになりつつ、私は何度もうんうん頷いた。 「もちろんオッケーいつものとこ行こ。実井ちゃん、先輩たち行きつけのお店連れてくからね!! とりあえずお互い仕事殺したら連絡するってことで! あっ、ID交換しよ交換しよ!!」 そういうわけだから、実井ちゃんと我々(というか私)のはしゃぎっぷりをたまたま見かけた波多野が、「――あいつ……どうして本社に……。っち、面倒事はごめんだぞ俺は……」とか……そんな不穏なことを呟いていたとは、もちろん知りもしなかった。 |