「ではしょくいんしつでやすみなさい。わたくしがきょかしましょう」 謙信せんせいだいすき!乙女週間に入ると、きっかり終わるまで地獄みたいな腹痛に悩まされるわたしを毎回やさしく保護してくれるかみさまだ。うぅ、謙信せんせいが担任でよかったぁ。少し先を歩く謙信せんせいの後姿にうっとりしながら、よろよろ進む。やばい、ちょっと意識があやうくなってきた。なんだか今月のはいつもよりひどい気がする。あたまがくらくらするし、きもちわるい。嫌だなぁ、と溜息をこぼすと、ぴたりと謙信せんせいが足を止める。つられてわたしも止まると、振り返った謙信せんせいがにこりとやさしく笑った。あぁ、かすがせんぱい、これですね、せんぱいがいつもゆってる慈愛に満ちた輝く微笑みというのは。納得です、これはすてきだ。なんてことを思ってると、ふわりと身体が浮いた。……、え? 「っ、け、けんしんせんせっ、」 「はい、なんでしょうか」 「いえっ、あの、なんで、」 「あるくのがつらそうですので、しょくいんしつまではわたくしがはこびましょう」 「っうえええ、いっ、そ、そんないいですけんしんせんせ!っ、あ、う、」 「あまりこうふんしてはいけませんよ。はらにさわるでしょう」 「う、あ、はい、すみません、」 「いえ、よいのですよ」 うああぁ、なんだか心があらわれるようだ……!かおがあつい。というか道ゆくひとびとの視線が痛いのはわたしだけなんでしょうか、せんせい。まばたきするめのおくが、とてつもなく熱い気がする。ちらっと謙信せんせいを盗み見ると、どうかしましたか?と微笑まれる。だめだ、悪循環!もう謙信せんせいのほうはみちゃだめだ。職員室につくまでなんだから、目でもつぶってればすぐだもん。ぎゅっとかたく目を閉じると、うえからくすりと笑う声がきこえた。……め、めぇつぶっててもはずかしいばあいどうすれば……!! 「、わたくしのくびにつかまっていなさい」 「あぁっ、けんしんさま!」 あ、かすがせんぱいのがうつってしまった。ちょっとはずかしいな、と思ってしまったわたしは黙って聞こえなかった振りをすることにしたのだけれど、謙信せんせいがまた笑い声をこぼしたのが分かったので、素直に腕を回させてもらうことにした。うっすら目をひらいて、謙信せんせいの白くて細いくびを確認する。ゆっくり腕を回すと、ふれた部分がじんわり熱くなってくる。しかしはずかしい。真田くん風にゆうと破廉恥でござる!だ。かあっと顔が熱くなってきたので気を紛らわそうと、少しだけ伝わってくる振動にまたうっすら目をあける。階段がいちだんいちだん、とおくなっていく。なんだか一定のリズムがきもちよくて、ゆらゆら柔らかい眠気にさそわれてしまった。う、わ、まぶた、おもい。 「、もうじきしょくいんしつにつきますよ。……おや、ねむってしまいましたか」 そんなような優しい声を、聞いたような、聞いてないような。その時にはもうとっくにふわふわした空間に意識をもっていかれていて、まさにあれだ、ゆめごこち!それにしても、ああ、このこと知ったらかすがせんぱい、おこるかなぁ。やだなぁ、かすがせんぱいは怒るとすごくこわいって、前さすけせんぱいゆってたもん。怒られたことないから分かんないけど、かすがせんぱいびじんだしなあ。美人は怒るととびきり怖いよって、けーじがゆってたし、まつせんせー、おこるとこわいし、でも、ねむい。 |