審神者になったばかりのわたしは、今日が初めての演練参加だった。 五戦して、なんとか勝てたのは一戦だけだったけど、負けた試合もすごく勉強になったから大満足である。それから、せっかくだからとその後もあちこちの試合を見学していた。 連練場はどこを見ても珍しかったけど、一番気になるのはやっぱり他本丸の部隊だし、まだうちにはいない人がたくさんいるその部隊を見て、うわぁ〜! と興味津々だったのは言うまでもない。そうじゃなくても、いわゆる難民ホイホイなレアがいるのでは目立っていた。 とにかく、目を引くメンバーを連れてるなぁ〜と思ったので、そもそも印象に残る審神者だったと言っていいと思う。 でも、決定的だったのはどう考えてもアレだった。 「うっしゃあッ! 全戦完全勝利Sキメるぞッ!!!! ご褒美は……ちゃんからのなでなでだッ!!!! ちなみに誉トップには今日の夕飯でちゃんの隣を約束するぞオラァッ!!!! 勝てねえとかほざくヤローいるかッ?!?!」 怒号と言ってもいい突然の大声に、わたしの隣に立っていた加州が「わっ、何あの部隊……」と肩を揺らした。けれど、それに対する答えを持っていないわたしは、「さ、さあ……?」と首を傾げる他にない。 そのまま二人でなんとなくその部隊を見つめたままでいると、慌てた様子でわたしの本丸の担当官さんが駆け寄ってきた。今日が初めての演練だから、様子を見にきてくれると言っていたのだ。 「すみません、お待たせしました! 一勝、おめでとうございます。まだ演練は早いかと思いましたが、この分なら積極的に参加したほうがいいですね。どんどん経験を積んでいきましょう!」 「あっ、いえ、みんな助けてくれるし、当たった審神者さんも親切にしてくれたので大丈夫です! むしろ、担当さんが演練を見にきてくれるってないって聞いて……わたしがとろいから、ご迷惑おかけしてるんじゃないかと思って……あの、お仕事、平気ですか?」 担当さんは慌てた顔をして、ぶんぶん首を横に振った。 「えっ?! あっ、いえいえ! あなたはとても優秀な審神者ですよ。むしろ楽させてもらってますから! ……きょ、今日はその……どうしても見ておきたい本丸が参加すると聞いてまして……」 見ておきたい本丸、と聞いて、ちらほら話を聞いたことがある“ブラック本丸”というのが頭を過ぎった。なんでも、刀剣男士たちに酷いことをする審神者がいるらしい。心優しい刀剣男士たちにお世話になりっぱなしのわたしには、そんなことをする人の気持ちなんてさっぱり理解できないけれど、実際にそういう被害があるのだ。 わたしは思わず、「……そ、それって、ええと、ブラック本丸、って言うんでしたっけ……その確認とか、そういう……」と担当さんの顔を窺ってしまう。すると目を丸くして、さっきよりずっと力一杯に首を振って否定した。 「へっ?! いやいやとんでもない! あの審神者様は素晴らしい審神者様です!!!! 問題なんて一つも――ま、まぁ身内には誰でも多少は……多少……? とにかく甘くなりがちですし、はい、問題という問題はないんですよ、変わってはいると思いますけど。でも成績は優秀ですしね! 『ザ・審神者』の上位成績欄にはほとんど毎月載ってますし、本当に素晴らしい審神者様です!」 拳を握りしめながら、興奮ぎみに上擦った声で熱弁する姿にちょっと体を退きながら、わたしは「は、はあ……」と溜め息のような返事をする。 担当さんは照れくさそうに頬をかきながら、ぺこっと頭を下げた。 「個人的に、その審神者様のファンで……一度は戦いぶりを見てみたくてですね。……すみません、ダシに使ったようで……」 この担当さんはまだ現場担当官としては新人だと聞いているけれど、とても頼りになる人である。そんな担当さんが素晴らしいと絶賛する審神者なら、きっとわたしが学べることもあるはずだ。 「いえ、それならわたしもぜひ拝見したいです! ご一緒しても構いませんか?」と言うと、担当さんはぱあっと表情を明るくして、力強く頷いた。 「もちろんです!!!! どうも次がそうらしくて――あっ! あの部隊です!!!! 歌仙様は本丸の留守を預かっているとして……うわあ〜今剣様がいらっしゃる……つまり今日は全勝ちする気ってことかぁ〜……」 担当さんが指差す先にいる部隊を見て、わたしは口元を引きつらせてしまった。“あの”部隊だったからだ。 「……えっ? えっと、あの……今剣と大倶利伽羅、江雪左文字、それから……ええと、大典太光世……あと、小烏丸、巴形薙刀の部隊ですか……?」 「そうです! いやあ〜、ここ最近の演練は、練度上げに集中してるって聞いてたんですけど――」 担当さんはものすごく嬉しそうな笑顔を浮かべて熱視線を送っているけれど……あの部隊……なんか……変、では……? 「いいか野郎どもォ! 今日は絶対に勝たなきゃならねえ大戦だ……。なぜか分かるな?」 審神者はそう言うと、キリッと眉を吊り上げた。すると、その目の前で今剣がぴょん! と飛び跳ねる。 「もちろんです。ひめがせんじつ、あたらしいぷろじぇくとのりーだーにえらばれたとのこと。ぼくたちはこんげつのえんれんらんきんぐで、かならずや、いちいにならねばなりません。そして、そのほうしゅうで――ひめのりーだーしゅうにんを、ぱーっとおいわいしてさしあげる。そのために、ぜったいにまけるわけにはいきません」 ふんす! と腕を組む今剣に、審神者は神妙そうに頷く。 他人が聞けば何を言っているんだ? と思うだろう。 今この場にいるのは、歴史修正主義を掲げる時間遡行軍と戦う審神者、そして、その審神者が率いる刀剣男士たちだ。彼らは実際の戦場を模したこの演練場で、その戦いを生き抜くための模擬試合を行うべくここにいる。つまり、審神者の一人であるこの男も、彼が率いる刀剣男士と共に、この演練で経験を積むためにやってきている。 しかし、彼らの本当の目的は別にあった。 ――そう。日夜仕事に励む審神者の妹・のために、その努力が実ったお祝いとして豪勢なパーティーを開きたい。その資金稼ぎのためだった。 毎月発表される演練勝利ランキングのベスト3には、それぞれ報酬(資源や刀装など)が出される。前提条件として、開催される演練すべてに参加することが求められるが、経験を積むことが本来の目的だ。参加しない本丸のほうが少ないと言える。そして一位の座に輝いた本丸には、報酬とは別に特別賞与として賞金も用意されているのだ。そのおかげもあってか、毎月多くの本丸が鎬を削り、トップに輝くために励んでいる。 しかし、繰り返しになるが、本来の目的は経験を積むこと。なので、報酬も賞金も演練への参加を促すためのものであって、あくまでもこれは“おまけ”と考える審神者が多い。 しかし、この審神者が率いる本丸は、その“おまけ”こそを目当てにここにいる。 「そうだ……ちゃんのためのパーティーを開けるこのチャンス……お祝いだからという理由でちゃんを大いに甘やかせるこのチャンス……逃してたまるかッ!!!! 江雪ッ! 今日の作戦は?!」 江雪左文字はすうっと目を細め、静かに言った。 「……立ち塞がるものは、すべて地に伏せます……」と。 彼は戦いを厭う傾向にあるのが一般的だが、この本丸の江雪は違った。本丸の刀剣男士総出で可愛がっているの幸福のためなら、戦うことも当然必要であるし、勝利こそ和睦(の幸せ)。そのためには徹底的に、というのが彼の信条である。今回の演練ランキング一位を目指す理由が理由なので、もちろんやる気は満々だ。 審神者は深く頷く。 「その意気だッ!!!! 俺たちの目指す和睦……すなわちちゃんになでなでしてもらう未来を手に入れるには、まずこの演練で相手をボコることだ。――小烏丸、ちゃんに何をしてやりたい?」 小烏丸は口元をゆるりとしならせると、「ひいじじは、にちよこれいとを買うてやりたいぞ」とゆったりと言った。 “ひいじじ”について補足すると、小烏丸は刀剣男士たちの父を公言しているので、三日月宗近がのじじいを自称するのを聞くと、では我はの“ひいじじ”だな、ということになったのがその背景である。そうは言うものの、本人はに“ぱぱ”と呼ぶように促しているが。当然戸惑ったが、彼を“パパ”と呼んだことは一度もない。 審神者はこれにも「そうだな、ちゃん絶対喜ぶ。そのためには勝利あるのみ」とうんうん頷き、それから「光世、おまえは何をしてやりたい?」と大典太光世に視線をやった。 「……俺はぬいぐるみを、買ってやりたい……。よりも、大きいやつだ。抱きつけるような、ぬいぐるみだ」 大典太はいつもと変わりない顔つきで、そう答えた。審神者はぱあっと表情を明るくする。 「絶対喜ぶしおっきいぬいぐるみをもふもふしてるちゃんを俺が見たいから採用。巴形、おまえはどうだ?」 こちらもいつもと変わらぬ冷静沈着な表情で、「新しい通勤バッグを贈りたいと思う。班長となるなら、姫にふさわしいものを持たせてやるべきだ」と言うと、審神者は衝撃を受けたように口を開け、それから額に手をやった。 「それは盲点だった……ちゃんの嬉しそうな笑顔が目に浮かぶ……絶対買ってあげような……! よっしゃ、大倶利伽羅はどうだ?」 「……興味がないな」 呆れたような溜め息の後、そう言ってふいっと顔を背けた大倶利伽羅を、審神者は生ぬるい表情で見つめた。 「……そうか。おまえはなでなでが――そして隣でご飯の権利しか見えてないんだな、大丈夫だ、分かってる」 ばっと審神者に向き直り、「っ興味がないと言っているだろう……!」と吠えたが、今剣がすかさず言う。 「あるじさま、おおくりからははんかちと、ぽけっとてぃっしゅのけーすを、すでによろずやでみつくろってあります」 「っち、」 審神者は深く深く、何度も頷いた。そして「だろうな」と口元をにやつかせる。大倶利伽羅はまた舌打ちをして機嫌悪そうに顔を顰めたが、皆どこか微笑ましそうにするだけだった。 審神者はぐるりと面々を確認すると、キリッと表情を引き締めた。歴戦の名将という気迫がある。 「――よし、全員の気力は充分だな。……オラァッ! 行くぜ野郎どもォッ!!!!」 まぁ彼らの目的とは、演練ランキング一位の賞金だけなのだが。 「……え、えっと……」 思わず戸惑った声をこぼしたけれど、わたし、そして清光も確実に引いていた。だって絶対変と言い切っていい部隊だ……。 担当さんは焦った様子で、身振り手振りを交えて一生懸命にフォローをし始めた。 「あっ、仰りたいことはよく分かります!!!! でも、あの審神者様の実力は本物です! ただちょっと……ちょっと……? とにかく変わってはいますけど、審神者としてはものすごく立派な方ですよ! きっと参考になることがありますから大丈夫です!!!!」 ……あ、あんまりフォローできてないけど。 「は、はぁ……」 生返事するわたしに、担当さんは「あっ、始まりますね!」と笑顔を見せた後、「うわぁ〜、なんか俺が緊張してきた……!」と居住まいを正した。 ……疑う気持ちは正直あるけれど、担当さんがここまで褒める本丸だ。一応……とわたしもフィールドに視線を向けた。 「これより対戦を行っていただきます。戦場を想定して、実りあるものにしてください。……それでは――始めッ!」 開始の号令がかかった次の瞬間、すぐに遠戦が始まった。そして互いの攻撃が終わると、すぐさま今剣が飛び出す。気づいたらもう敵陣地にまで迫っていて、まるで瞬間移動でもしたんじゃないかと思うスピードだった。 高く飛び上がった今剣は、刺すように攻撃を繰り出しながら、「とうそうは、たーんとそぎますよ!」と赤い瞳をギラつかせている。 すると今剣の後ろから、巴形が大きく薙刀で空間を裂く。 「すべてを薙ぎ払うのみだ」 あっと思う前に、江雪がしなやかに剣を振るう。……いくら騎馬兵(それも特上らしい)を装備していても、ちょっと機動速すぎじゃないかな……? 「――とにかく物理です……。これも、我々の目指す和睦のため……」 その脇では、小烏丸がひらりひらりと舞うように戦っている。 優美な動きに思わず見惚れてしまいそうだったけれど、「ひいじじも、には良い菓子を食べさせてやりたい。そのためには致し方ないことよな」というセリフが聞こえてしまって首を振った。 「……大きいぬいぐみが、いいんだ。――悪いな」 気を取り直して、重い一撃を容赦なくぶつけていく大典太光世に視線を向ける。戦いぶりだけを見るなら、すごく頼りになりそうだ。 ぬいぐるみについては触れず、いつかはうちにも来てくれるといいな……なんて思っていると、問題の審神者さんが怒鳴り声を上げた。 「オラッ大倶利伽羅ッ!!!! 気合い足りてねえぞおまえ!!!!」 その檄を受けて、大倶利伽羅がうざったそうな顔をする。 ……うちの大倶利伽羅は気難しいというか、すごくクールな性格をしてるし、基本的にそういうものだって聞いてるけど…。 「ちっ、うるさい……! ……俺は、見繕ったものを無駄にしたくないだけだ……ッ!」 ……あれはうざったいとは思ってそうだけど、なんかちょっと……違うような……。 ほんとに変わってる……と口元を引きつらせる私の隣で、担当さんは感心したようにしきりに頷いている。 「は、はぁ〜……やっぱりすごいな……相手をちっとも寄せつけない……。さんのためだとしても――いや、だからこそあそこまでの戦いが……」 わたしはもう我慢できなくなって、「あ、あのっ、なんだか刀剣男士の様子、おかしくありませんか? うちにはいない人たちばかりですけど、でもっ、なんていうかこう、」と口を開いてしまった。 すると担当さんはなんとも言えない表情を浮かべて、重々しく応えた。 「……分かりますけど、分かりますけどあの本丸は……大分特殊な本丸なので、あれでいいんです……」 「と、特殊……」 た、確かに……変わってるという意味ではものすごく特殊だと思うけど……。 ちら、とフィールドにまた視線を戻すと、すでに号令と一緒に両部隊が礼をし合っていた。 「うっしゃあオラァッ!!!! 目標達成ッ!!!! よし、さっさと帰るぞ! そんでもってすぐにちゃんになでなでしてもらうんだッ!!!!」 意気揚々とフィールドを後にする審神者さんを見て、担当さんが慌てて立ち上がった。そして駆け足で彼のそばへと近づいていく。 「あっ、審神者様! お久しぶりです!」 審神者さんは担当さんを見ると愛想良く笑った。笑ったけれど――。 「あ? あぁ〜! おまえか! 元気か? 元気だな! 俺も元気だ! じゃ、俺急いでっからまたな!!!!」 「えっ、あっ、審神者様ッ、待っ――ああ……ダメだ、聞こえてない……」 刀剣男士たちの機動はともかく、審神者さんもちょっと人間離れしすぎでは……? もう姿が見えない……。 わたしは担当さんの隣に立って、「あ、あの、あの審神者様って……その……本当に……」と声をかけた。 「立派な方なんです! ちょっと、ちょっと変わってるだけで! 審神者としては本当に素晴らしい方なんです!!!!」 …………担当さんのことは信頼してるけど……でも……でもなあ……。 こうしてわたしの初の演練は、経験だけでなく大きな謎も持ち帰ることになって終わった。 「ちゃんただいま〜〜! お兄ちゃん帰ってきたよ〜〜!」 居間でお茶をいただいていると、お兄ちゃんが機嫌良さそうに中へ入ってきた。 機嫌良さそうなのはいいんだけれど、そもそも――。 「え、お兄ちゃん出かけてたの? おかえり」 ぴしっと体を硬くしたお兄ちゃんの陰から、いまつるちゃんがぴょんっと飛び出してきた。そしてわたしの目の前でくるくるっと回ると、にこにこ愛らしく笑う。今日も大変かわいい。 「ひめ! ぼくもばびゅーんとかえりましたよ!」 いまつるちゃんは昨日、明日は出かける予定があるけどすぐに帰ってくるから待っててほしいと、何度もわたしに念押ししていた。その時にどんな予定なのか、その内容も教えてくれたのだけれど、わたしにはさっぱり分からなくて……なんだっけ、え、えん……? まぁともかく、嬉しそうに笑っているいまつるちゃんの表情からして、とっても楽しかったんだろう。 「おかえりいまつるちゃん〜。どうだった? えーと……えん……えん……エンレン! 楽しかった?」 そうだそうだ、“エンレン”だ。思い出したところで、そのエンレンがなんなのかは分からないわけだけど。遠足とかそういう……? 小さな手がわたしの手をぎゅっと握りしめて、「もちろんです! みーんなたたきのめしてやりました!」と……た、たたき……のめす……とは……。 いまつるちゃんは本当に本当にかわいいちびっ子だけれど、時々反応に困ることを無邪気に言うのでドキッとする。今も「な、なるほど〜!」なんて何がなるほどなのか自分が分かっていない状態で発言してしまって、発言にはしっかりと責任を持たなくてはいけない大人だというのに情けない……。 そんなことを思いつつも、繋がれた手を動かしていまつるちゃんとにこにこしていると、静かだったお兄ちゃんがずんと重苦しく口を開いた。 「……お兄ちゃんがお留守にしててさみしくなかったのちゃん……」 …………。 「……何を言ってるのお兄ちゃん……」 そこに歌仙さんがやってきた。 「あぁ、戻ったんだね。それで、どうだったんだい?」と言う表情はにこやかだけれど、目がなんとなく……笑ってない……。え? 何か仕事のことで出かけてたの……? 歌仙さんはお兄ちゃんの“ショキトウ”だそうで(よく分からないけど)右腕的な存在だから、この本丸でもかなり重要な立ち位置にいるんだと聞いている。実際、歌仙さんはお兄ちゃんの仕事に対してはすごく厳しい人で、いつもきちんと仕事をしているかどうかをチェックしているそうだ。まあ、わたしはお兄ちゃんの仕事はまるで分かっちゃいないというか、そもそもまったく知らないわけだけど、いくら社長だとしても、だからと言って好き勝手しないで真面目にやってほしいというか、社長だからこそしっかりしてほしい。じゃないと長谷部さんみたいな社畜という悲しい存在が増えてしまう……。 思わずわたしもお兄ちゃんの顔を確認すると、輝かんばかりの明るさでそれに答えた。 「全戦完全勝利Sキメてきた! で、今日の誉は大倶利伽羅だから、晩飯はちゃんの隣にしてやってくれ」 お兄ちゃんの言葉を聞くと、歌仙さんはちらりと自分の後ろへ視線を滑らせた。静かに佇んでいた伽羅くんが、ぴくりと眉間に皺を寄せる。 「へえ、大倶利伽羅が」 歌仙さんの意味ありげな声音に、「……何か文句でもあるのか」と伽羅くんが不機嫌そうに返す。 ……あ、あれ……? この二人が一緒の場面ってそういえば見たことない気がするけど……そ、それは単に相性が悪いとかそういう――。 「いいや? ただ、きみにも思うところがあるのだと思っただけさ」 「っち、」 あ、相性が悪いんだなこれは〜〜! 悪い人じゃないんだけれど、ちょっと言葉に棘があったりする時もある歌仙さんと、いい子なんだけど、傍目にはそれがとても分かりにくい上に非常に無口な伽羅くん……ちょっと考えればすぐに分かる……この二人、相性が悪い……! みんななんともない顔でいるけれど、わたしはこれでもかってほどに気まずい……。ど、どうしよう、何か言ったほうがいいのかな……いやでも何を???? と思い悩んでいると、ぬっと岩融さんが現れた。 「おおっ! 今剣! 戻ったか!!」 いまつるちゃんがぱあっと表情を明るくして、ぴょんっと彼に飛びついた。うう、かわいい……やっぱりちびっ子って世界を救う……わたしの感じてた気まずさが一瞬でどっかいっちゃったよ……。 「いわとおし! はいっ、もどりましたよー! このぼくがせきにんもって、ぜんせん、かんぜんしょうりえすをおさめました!」 岩融さんは簡単そうにいまつるちゃんを肩に乗せて、「がははッ! それは僥倖ッ! 姫、今剣をよく褒めてやってくれ」とわたしに笑顔を向けた。正直何を褒めたらいいのか分かっていないわたしだが、嬉しそうな顔をするいまつるちゃんを褒めずにいる理由がない。 「はい、それはもちろん」 そう返事したわたしに、いまつるちゃんはぴょんっと岩融さんから飛び降りて(心臓がドキッとした)駆け寄ってくると、にこにこしながらわたしの手を自分の頭へと持っていく。 「わーい! それではひめ、あたまをなでてください!」 「いいよ〜〜!」 よしよし〜〜! と撫でると、いまつるちゃんはますますにこにこ笑ってくれるので、ついついわたしのほうまでにこにこしてしまう。大変かわいい。 「、次は我の番だぞ。ぱぱの頭を存分に撫でるがよい」 …………。 「……はい?」 呆然とするわたしだが、小烏丸さんは構わず続ける。 「我もおまえのために尽くしたぞ。ひいじじは孫を可愛がってやるものだ。それゆえ、遠慮することもなし。我のことは“ぱぱ”と呼んで構わぬぞ。立場はひいじじということになろうが、我は“ぱぱ”のほうが気分が良い。それで? 撫でてはくれぬのか」 そういえばこの人何かとわたしのパパを名乗りたがるけれど、そもそも他人様だし、じじいを自称する三日月さんよりもお若いのでは……というかどう見てもわたしよりお若い……。だけど格好からして平安っぽい(?)し、やっぱり貴族の間ではそういう遊びが流行っている……? 混乱しながら、うっかり「……な、撫でてほしいんですか……?」と言ってしまってそれから、いや何を言ってるんだわたしは……と思い直したけれど、小烏丸さんが「ぱぱもよく働いた」と言ってわたしの目の前でにこにこするので……もう……これは……。 「は、はあ……じゃ、じゃあ、」 そろそろと手を伸ばして撫でると、小烏丸さんはご機嫌そうに「ふむ、これは快い。良好良好」と頷いた。どう反応すればいいんだかサッパリ分からない。 「はあ……そうですか……」 ぼやっと応えると、すすっと江雪さんがわたしのそばへ寄ってきた。……とても、嫌な予感がす「姫、次は、私です……」…………。 「え゛、江雪さんもですか……?」 江雪さんは冷たくも見える美貌で、静かに言った。 「これもまた、和睦です……」 ……え……ワボク……和睦……? え、ワボクって何……。 わたしが「わ、ワボク……ですか、」と繰り返すと、江雪さんは頷いた。そして身を屈めて、「……はい。……お願いします」と言うので……わたしには、大人しく撫でさせてもらうしかなかった……。 「……こ、これでいいでしょうか?」 江雪さんは微かに口元を緩めて、深くお辞儀をした。 「……励んだ甲斐がありました……」と仰るけれど、わたしには何が何やらである。とりあえずわたしもお辞儀するしかない。 「そ、そうですか……」と呟いた声は、とんでもなく困惑しきってしまっているけれど。 すると、ぬっとわたしに影が落ちてきた。思わず見上げると…。 「……え、えーと、巴さんは……その……」 巴さんは何も悟らせてはくれそうにない表情で、「俺は姫の役に立ちたかった。俺なりにやったつもりだが、足りなかったか」と言ってわたしの目をじっと見つめてくる。わたしは咄嗟に、そんなことはないです! と口を開いたのだが。 「い、いえっ! そんな……ことは、な……い……?」 いやそもそも何がなんだか分かってないです……いまつるちゃんはともかく、わたしはどうして大の大人の頭を次々と撫でさせられているのかな……? けれど、一応そんなことはないと言ってしまった感じだし、「では撫でてくれ」と巴さんが律儀にも屈んでくれるものだから……。 「わ、分かりました……」 そう言うと、巴さんはすっと頭をこちらに向けてくる。その様子がなんだかかわいくて、ほんのちょっとだけ口元が緩んでしまった。 巴さんはすごく背が高いし、それに表情もなかなか変わらない人だから、つい遠巻きにしてしまいそうになるのだけれど、この人自身は人と関わることがとても好きなようで、わたしを見つけるとよく後ろをついてきては何か用はないか? なんて聞いて…………待って……? と、巴さんも順調に社畜への道を……? ……ん、んなわけ〜〜! ……巴さんの教育係(?)が長谷部さんだったということは忘れておこう……。 巴さんの頭からそっと手を離して、わたしは小さく溜め息を「次は俺だ」……お、大典太さんもか〜〜! 頭を撫でてほしいなんて絶対言い出さないって思ったのにな〜〜〜〜! でも、あまりにもナチュラルに頭を下げて、そして私の手をそこへ誘導するものだから、こちらもついナチュラルに「あ、はい、」と大人しく撫でてしまうことに……。 ただ、とりあえずみんな満足(?)してくれたようだし、まぁいっか、と思ったのだが。 「……」 伽羅くんが仏頂面で、けれど何か伝えたいことがあるんだろう、まっすぐにわたしの目を見つめている。こういう時、わたしが彼の意を汲んであげられるスキルがあればいいと思うんだけれど……ごめんね、全然分からない……。 「……うん?」 なんとなくへらっと笑うも、伽羅くんはやっぱり無言でわたしを見つめるだけである。 すると、いまつるちゃんがぴょこっと伽羅くんの後ろから顔を出した。 「ひめ、おおくりからもなでてやってくださいませんか? きょうのほまれは、このおおくりからなんです。ひめのために、いっしょうけんめいやっていました!」 わたしが何か言う前に、伽羅くんが「っち、」と舌打ちしたので、わたしはそちらを気にしながら「え、いやでも……」と言って、なんとか伽羅くんはそんなことされたくないよ〜〜といまつるちゃんにソフトに伝えたようとしたのだが、それを伽羅くんが止めた。 「早くしろ」とたった一言、短く言って。もちろん「え゛っ?!」と目を剥いたけれど、伽羅くんはわたしのそばまでくると、黙ってわたしをじっと…………。 「……えーと、じゃ、じゃあ……」 恐る恐る手を伸ばすと、指先に柔らかい髪が触れる。わあ、サラサラっていうかふわっとしてるっていうか……とにかく髪質がとてもいい……。どこのケア用品使ってるんだろう……いやでも、こういう綺麗な髪の持ち主に限って何もしてなかったりとか……なんて考えていると、伽羅くんは「……ふん」とそっぽ向いて、そのままどこかへ行ってしまった。……やばい、無遠慮に撫ですぎちゃったかなっていうか……。 「…………えっと、ほ、ほんとに撫でたりしてよかったのかな……?」 わたしの言葉に、歌仙さんはおかしそうに笑った。 「ふふ、あれは照れ隠しさ。かわいいところもあるじゃないか」 わたしは「怒ってないならいいんですけど……」と言いつつも、でもやっぱり……と思ったわけだが、いまつるちゃんがわたしの腕を取ってにこっと笑った。 「まさか! おおくりからは、ひめとおしょくじしたくて、ほまれをとってきたんですよ。もちろん、いつものせきはこのぼくです!」 うん? 食事……? え、いつもみんなで食べてるよね……? と思いつつ、誇らしげにドヤッとするいまつるちゃんが大変かわいいので、わたしは「うんうん、いまつるちゃんがいつもお世話してくれるもんね」と言って頭を撫でる。 「とうぜんです!」 にこにこのいまつるちゃんを微笑ましく見つめていると、歌仙さんがぱんぱんっと手を鳴らした。 「それじゃあ、早速夕餉にしようか。きみたち、演練だったとは言えきちんと手入れして、それから湯浴みをするように」 それを聞くと、エンレンに参加していたらしい面々が、ぞろぞろと出て行く。……結局エンレンってなんなんだろう……。まったく想像がつかないぞ……。 まぁ、キリッとした表情で「それではひめ、またあとで。すぐにおそばにいきますから、まっていてくださいね!」と言って駆け出したいまつるちゃんがやっぱりかわいいので、わたしは「はーい」と返事をすると、そのことについて深掘りしようとは思わなかった。 しかし、みんな出ていったというのに、お兄ちゃん一人がぽつんと立っている。そして…。 「……ちゃん、お兄ちゃんにはなでなでないのかな……?」 …………。 「……何言ってるのお兄ちゃん……あるわけないでしょ……? バカなこと言ってないで、早く部屋行きなよ。疲れてるんじゃないの?」 わたしの言葉に何を思ったのか、お兄ちゃんは眩しいほどの笑顔を浮かべた。 「……! お、お兄ちゃんを思いやってくれてるんだね?! うんっ、すぐ着替えてすぐちゃんと遊べるようにしてくるね〜〜!」 ……我が兄ながら、あの人どうかしてる……。 「……ほんと何を言ってるのかなあの人……」 あんな感じで本当にちゃんと社長なんて務まってるのかな……と額を押さえていると、「姫、茶は欲しくないか?」と声をかけられた。お茶のお誘いといえば、大体は鶯丸さんか三日月さんなのだが、珍しいことに膝丸さんだ。 「あ、膝丸さん。いえ、大丈夫です。ありがとうございます」 せっかく声をかけてもらったのに申し訳ないけれど、どうやらもうお夕飯みたいだし、とわたしは頭を下げた。 膝丸さんは残念そうに、「そうか。兄者が、きみと茶を飲みたいと言っていたので声をかけたのだが……」と声を落とした。……うん? 髭切さん……? いや、言い出しっぺのその髭切さんがいないこの状況は一体……? 「……その髭切さんはどこに?」 「ああ、厨で茶菓子をもらってくると言っていた」 「え、ご飯の前にそれは怒られるんじゃ……」 というか、自分のことをなんでも膝丸さんに押しつけるのはどうにかならないのかな、あの人……。いくら膝丸さんが嫌がってる様子ではないにしても、ちょっとパシリにしすぎではないかな……? っていうかそれで膝丸さんのお名前を覚えていられないって、ほんとどうなってるの……。 ちょっと背筋を冷たくしていると、そこに明るい声が聞こえてきた。 「だから言ったじゃないですか〜。これから夕餉なのに、燭台切さんがお菓子なんか出してくれるわけないですよ」 「うーん、姫とゆっくりお話ししたいだけなんだけどなぁ」 そんな会話をしながら現れたのは、鯰尾くんと髭切さんである。……ほんと髭切さんのマイペースさってすごいな……。そしてそれをにこにこしながら受け流してる鯰尾くんもすごい……。 鯰尾くんはわたしに気づくと、たたっと駆け寄ってきて笑顔を浮かべた。 「お嬢さん! 夕餉の後、みんなで映画観ようと思うんですけど、一緒にどうですか?」 映画鑑賞会は二週間に一度くらいのペースであって、基本的にちびっ子たちや鯰尾くんたち中学生、高校生組は獅子王くんあたりがよく参加している。たまに三日月さん、鶴丸さんあたりも顔を出しているようだ。 わたしは清光くんと乱ちゃん、安定くんと過ごすこともあれば、参加しないちびっ子たちと遊ぶこともあるので、毎度参加しているわけではないけれど、もちろん声をかけられれば別だ。 「そうなの? うん、いいよ。何観るの?」 「動物がなんやかんやするアニメです!」 「す、すごいアバウトな説明……いや、いいんだけど……」 動物がなんやかんやするアニメって色々ありすぎて、結局何を観るんだか全然分からないな……。 以前、人形と遊ぶ映画です! って聞いてたのに、蓋を開けてみたら人形に殺されそうになる外国映画でビックリした記憶がある。……こ、今回は何を観るのかな……ほんとに……。 「姫! そろそろ飯だぜっ!」 さっと華麗に登場したのは貞ちゃんだ。今日もとっても華やかな装いだけれど、それに負けない眩しい笑顔である。 「呼びに来てくれたの? ありがとう、貞ちゃん」 貞ちゃんはにこにこしながらわたしの隣に並ぶと、「今日は俺が厨当番なんだ、いいってことよ! それより、今日は伽羅が姫の隣だろ? いやぁ、羨ましいねえ」と言って、わたしを上目遣いに見つめる。え? 今日伽羅くんが隣なの? あ、そういえばいまつるちゃんが、伽羅くんはわたしと食事するのがどうって……あ〜、なるほど! そういうことか! まぁでも、隣で一緒に食事することくらい、別にいつだってできるのに。 わたしが「貞ちゃんがよければいつでも一緒に食べるよ」と言うと、口元をにやりと吊り上げて、貞ちゃんはぱちんとウィンクを飛ばした。 「なーに言ってんだ。お姫さんの隣で飯を食うなんて褒美は、それこそ誉をいくつも取らなきゃ贅沢すぎちまう。ってわけで、今日は伽羅のこと、可愛がってやってくれよ?」 綺麗な金色の瞳が、きらっと光ったように見えた。まだ支度があると走り去っていく貞ちゃんの後ろ姿を見つめながら、わたしはつい「……さ、さすが光忠さんと鶴丸さんの身内……」と呟く。 すると、鯰尾くんがひょこっと顔を覗き込んできて、意味ありげにわたしをじぃっと見つめる。 「何せ、“伊達”組ですからね〜。やっぱりお嬢さんは、伊達の刀がお好みですか?」 面白がっているのは分かっているけれど、わたしの「え゛っ、いや、そういうのとは違うよ〜」いう言葉は、情けないくらいにひっくり返っていた。 いつも通り、大広間にみんなが集まると、お兄ちゃんが号令をかける。 「全員揃ったな。それじゃ、食うぞ! ――いただきます!」 わたしの隣には、いつも通りいまつるちゃん――そして、伽羅くんが座っている。 伽羅くんがわざわざ隣でと言うなら、何か話したいことでもあるのかな? と思ったりもしたのだけれど、席についてからずっと、いつも通り無口である。その代わり、わたしの向かいに座っている光忠さんのほうがとても上機嫌で、ずっとにこにこと嬉しそうだ。 「ちゃん、今日は伽羅ちゃん一生懸命頑張ったから、たくさん褒めてあげてね! 伽羅ちゃんが一番だなんて、もう僕まで嬉しくって!」 確かに、光忠さんって伽羅くんの保護者というか、彼の言葉少ななところをいつもフォローしている節があるけれど、それにしても伽羅くんとの対比がすごい。なんだかよく分からないけど、とにかくエンレンで一番だったらしい伽羅くんより、光忠さんのほうがテンション上がってるっていうのがこう……。 「おい、余計なことを言うな」 面倒そうな溜め息を吐く伽羅くんに、いまつるちゃんが「ほんとうのことじゃありませんか」となんてことないふうに言って、かわいい星型になっているにんじんをぱくりと口にした。好き嫌いがなくて大変いい子である。 そんないまつるちゃんの向かいに座っている鶴丸さんが、「そう言ってやるな、今剣。せっかく伽羅坊が大人しく座ってるんだ、優しく見守ってやれ」と言いつつ、とても愉快そうに肩を揺らしているので、伽羅くんの眉間の皺がますます深まった。 「……余計なことを言うなと言ってるだろう」 伽羅くんの隣に座る貞ちゃんが、ばしん! と広い背中を叩いて「そう照れるなって伽羅! 姫、あれやってやってくれよ! ほら、あーんってやつ!」と――。 「え」 「おい、貞……!」 そ、それはいくらなんでも、とお行儀には厳しい光忠さんに視線を向けたが、彼のほうこそ目を輝かせている。こ、これは……。 「お行儀は良くないけど、今日は大目に見るよ。ほら、歌仙くんが見てないうちに!」 やっぱり……! と思いながら、わたしはなんとか笑って誤魔化そうと「えっ、い、いや、そんな、あはは、」と応えたけれど、いまつるちゃんまでもが「きょうのところは、ぼくもゆるしてあげましょう。さ、ひめ! おおくりからに、ほうびをあたえてやってください!」なんて言うので……。 わたしは恐る恐る伽羅くんの様子を伺いつつ、「い、いや、そんな……伽羅くんだって嫌だろうから、ね?」とへらへらっとしたのだが、まさかだけれど伽羅くんは言った。不機嫌そうな顔で、「……煮物がいい」と。 「へ?」 思わず呆けた声を出すわたしに、伽羅くんはますます難しい顔をする。 「煮物と言った。……早くしろ」 ものすごく不本意そうな顔をしている伽羅くんに、わたしは曖昧に笑う。 「えっと、伽羅くん、そんな無理しなくてい――」 「何度も言わせるな。早くしろ」 ……この場を収めるには、やっぱりそれしかないのかな……。ご、ごめんね伽羅くん……! と心の中で何度も頭を下げながら、わたしは箸で里芋を掴むと――。 「……あ、あーん、」 ゆっくりと咀嚼して飲み込む姿を見て、ああ、これでみんな納得し「……もう一口だ」……うん? 伽羅くんは視線こそ逸らしているものの、口を開けて待っている。わたしはそれにあまりにもビックリしてしまって、つい「え゛?! あっ、はい!」と二口目を慌ててその口元に運んでしまった。 「よかったね伽羅ちゃん……!」とどこか感動しきった様子で呟く光忠さんに、なんとも言えない複雑な感情が湧いてくる……。 次はこれだ、とどんどん指示をしてくる伽羅くんの要望に応えつつ、わたしは貞ちゃんの「俺も頑張んねえとなぁ。来月の誉一位は俺だ! 気合い入れてくぜ!」という元気な言葉にちょっと怖くなってしまった……。いや、貞ちゃんはともかく。鶴丸さんが「ははっ、こりゃ俺も笑って見てはいられんなぁ」なんて言うからそれがほんとに怖い。 ……今後は“エンレン”に出かけると言われたら、その後に何があるか分からないし警戒しておこう……。 でもまぁ、いつも無口な伽羅くんとコミュニケーション――コミュニケーションなのかな……? まぁ仲良くできた(?)のはよかったと思う。いや、お行儀は悪かったけれども。 |