「俺の何が悪いのか、はっきり言ってくれ」

 直す努力はいくらでもする。そう付け足すと、はきゅっと握った拳を口元にやって、うーんと唸った。そこへ昏田が通りかかって、「狡噛さん、またやってるんですか。いい加減諦めたらどうです?」と言うと、はぱっと顔を明るくさせた。俺といるときには大体難しい顔をしているのに、昏田にはよく笑顔を見せる。俺と昏田、一体何が違うのか。違いといえば、監視官であることと執行官であることくらいしか思いつかない。だがそれが原因とは考えにくい。何故ならは、ギノにも昏田と同じ――もしくはそれ以上に笑顔で接している。俺とギノ、一体何が違うのか。そんなことを考えていると、が「あっ、待って昏田くん! おいてかないで!」と声を上げたので、はっとした。昏田は呆れたような様子で「嫌です。じゃ、頑張ってください」と言うと、さっさと食堂を出て行った。

 「あああ……昏田くんひどい……」
 「昏田には俺から邪険にしてやるなと言っておく。それで、俺の何が悪いんだ」
 「え、あ、言わなくていいよそんなこと……。昏田くんはいつもああだもん…………え? またその話になるの?」

 は重苦しい溜息を吐くと、「あ、あの、狡噛くん……」と口を開いた。ようやく、長く疑問に思って、それでいて心底辛いと思っていたことが解決する。いつもなんだかんだとうやむやになってしまって、理由を聞けずにいた。それがやっと解決しようとしている。理由さえ、何が悪いのかさえ分かれば、俺は本当に直す努力くらいいくらだってする。


のそばに――そばにいられるなら、どんなことであっても。


 「――狡噛も一緒か」
 「伸元くん……! いいところに! 座って座って! わたしの隣ね!」

 どこが“いいところ”なんだか。これ以上にタイミングが悪いことなんてない。そうは思うが、がギノを座らせようとしているわけだ。俺もギノが一緒じゃ嫌だとか、話をしにくいというわけでもない。

 ちらっと視線をやると、眉間に皺をよせながらも、ギノは大人しくの隣へ座った。

……いや、隣の席よりも向かいの席のほうがいいに決まってる。顔を見て話ができるし、表情が分かれば心情を予想することもできなくはない。……そうだ、向かいの席のほうがいいに決まっている。


 とギノ、そして俺は同期になるわけだが、何故だかは俺をずっと警戒しているようで、何かとギノの近くにいる。俺のほうはというと、のことを好ましく――まどろっこしい表現はやめよう。つまりは、一人の女性として好意を寄せているわけだが、がそういう態度でいるのでどうにもうまくいかない。

 食事でもどうだと誘えば、「伸元くんも一緒だよね、うん、それなら行く」と言う。俺の気持ちが伝わっていないのか。それならもっと分かりやすくと思って、どこかドライブにでも行こうと言えば、「ドライブ……あっ、ごめんね、その日は予定があってね、」だなんだと断られてしまう。ギノとはふたりで食事に行くことがあるのは知っているし、ドライブだってそうだ。何かとうまい理由をつけて、昏田を外に連れ出すことだってある。俺とギノ、俺と昏田、一体何が違うのかまったく分からない。だから悪いところがあるのなら、はっきり言ってほしいのだ。俺がそこを直すことで一緒にいるというなら(もちろん、いずれかは“恋人”として)、そのくらいの努力は――何度でも言うが――いくらだってしてみせる。せめて俺のこういった誠意さえ伝われば、も態度を軟化させてくれるのではないか。そんなことを考えながらぼんやりしていると、が思い出したというように口を開いた。

 「ねえ、伸元くん」
 「なんだ」
 「うちで一緒に観た映画あるでしょ?」
 「あぁ、あれか」
 「?! おいギノどういうことだッ!!」

 思わず大きな音を立てて立ち上がってしまった。の口ぶりからして、その場にはギノと――ふたりっきりだと考えていいだろう。そうでなければ、のいつもの話し方から考えると“みんなで”と言ったはずだ。分かっていたことだが、ギノとふたりっきりというのには何の躊躇いもないのか、と頭を抱えそうになったが、問題はそこではない。は“うちで”と言った。それが指すのは、“わたしの家で”ということだろう。つまりだ。ギノはの部屋に快く迎え入れられ、あまつさえふたりっきりで映画を楽しんだということだ。

 「大きな声を出すな、狡噛。食事中だぞ」
 「わ、悪い……いや、そうじゃなくてだな!」

 ギノも俺がのことを好きだというのはよく知っているのに、どうして何かとふたりでいるのかということだ。食事やドライブのこともそうだが、そもそもどうして俺は“狡噛くん”でギノは“伸元くん”なのか。いや、俺との距離感を考えれば妥当だと納得してしまうが、そうなるとどうしてこの距離感なのかという話になる。俺は俺なりにのことには慎重にしてきたし、嫌われるようなことをした覚えもなければ、特に「これは嫌われた」「これで嫌われた」と感じたこともない。俺がのことを好きだと自覚したときには、既にこうだった。が変わったのではなく、俺の意識が変わったので捉え方がおかしいのかとも思うが、やはり俺と昏田、俺とギノとではあまりにも態度が違いすぎるのだ。このままでは堂々巡りで仕方ない。結局はに直接理由を聞くしか他にはない。手がかりが何もないとなると、こちらとしても手の施しようがないのだから。

 ちらりとの様子を伺うと、目が合った。が小さく、「うっ」と呻いたと思うと、「伸元くん、ごめん。わたしもう行くね。また後で」と早口に言ってトレーを持ち上げ立ち上がった。ギノは特に気にしたようでもなく、「あぁ」と顔も見ずに返事をして、さっさと食事を再開した。俺を除いて話は完結してしまったので唖然としていると、ギノが言った。


 「追いかけなくていいのか」
 「は、」


 思わず溜息のような声を出すと、ギノは面倒そうに「いつも何かとのことを追いかけ回しているだろう」と言ってメガネを外すと、そのレンズを拭きはじめた。何かととふたりになっては仲良くやってるギノに、俺の気持ちが分かってたまるかと思いつつも、周りからするとそう見えるのか……と表情がこわばるのを感じた。居心地悪くなって、「……おい、なんだか人聞き悪いぞ」となんとか絞り出したが、それさえもギノは「事実を言ったまでだ」と切り捨てた。だが、「それで、追いかけなくていいのか」と言葉が続いた。俺は今度こそ溜息を吐いた。

 「……追いかけてどうしろって言うんだ。は俺のことを避けてる。理由が分からない以上、どうにもできない」
 「……揃いも揃って面倒だな。いいからを追いかけろ。今ならまだ捕まるだろう」

 神経質に何度もレンズをこすっていた手を止めて、ギノは俺の目をしっかりと捉えた。ぐっと喉の奥が詰まったような感覚がしたが、そんなことを言われたって手がないのはどうしようもない。なんだか米神のあたりが疼くようで、髪をぐしゃっと掴んで「俺は無理強いしたいわけでも、ましてや迷惑をかけたり、不安にさせたりしたいわけじゃない」と喉の不快感もなくなればいいと吐き出してみたが、ギノは「なら尚更だ。早く行け」と言って、やっとメガネをかけ直した。ギノの言うことの意図がさっぱり分からない。手は何もないのだ。

 「さっきからなんなんだ。俺の話を聞いてるか? 俺は――」
 「いいから行け。それから『好きだ』と言ってこい」

 誰が聞いているかも分からないのになんてことを、と思わずぎょっとしたが、落ち着きはすぐに取り戻せた。無理難題をこうも簡単にふっかけられて、はいそうですかと言えるはずもない。ギノと俺は違う。少なくとも、にとっては。俺は彼女に――。

 「ギノ、俺はに嫌われて――」
 「何度も同じことを言わせるな。ぐずぐずしていると、他に取られるぞ」


 ただ、「他に取られる」というのには大いに心当たりがあるので、俺は食堂を飛び出した。俺が思っているようなことにならなければいい。もう、それだけでもいい。今はまだ、俺はのことを諦めるなんて考えられないのだ。いつか諦められるという日がくるまでは、苦手だと思われていたっていいから、せめて今のまま、誰のものにもなってほしくない。


 俺が恋愛だので、こうまで振り回される日がくるだなんて、自分のことであるのにまったく予想していなかった。




 ギノの言ったとおり、はすぐに捕まえられるところにいた。もう仕事に戻る時間が近い。ほっと息をつきそうなところで昏田がその先の角を曲がってきて、あ、と思うまえにに声をかけた。そして開口一番「さん、今度の非番、またどこか連れてってくださいよ」と細い肩に手をおいた。の後ろ姿は特に気にした様子も見られず、「ええ、またぁ? 言い訳これ以上ないよ……出し尽くした……」と困ったような声だけが正確に把握できた。

 「さんにしか頼めないから言ってるんじゃないですか。執行官にも息抜きって必要でしょ」
 「んん〜……」

 ふたりの会話を聞いていて、やはり俺は――と思ったが、ギノの言葉を思い出して声を張り上げ「!」とふたりに(正確にはに)駆け寄った。すると昏田はあからさまに嫌そうな顔をして「あ、狡噛さん。じゃ、俺はこれで」と俺たちに(正確には俺に、だろう)背を向けてさっさと歩きだそうとしている。そこへが「え?! く、昏田くんまたおいてくの?! 待って待ってお出かけ連れてくから待って!」と今にも泣きだしそうな声を上げたが、ギノの言葉がどうしても離れないうえに、大いに心当たりのある昏田が一緒なのだ。このタイミングを逃すわけにはいかない。とにかく、ギノが言っていたことをまずは――と思って、「昏田、どうしても外出したいなら俺が付き添う」と声をかけたあと、すぐさま「それから、俺はおまえが好きだ」と続けた。

 「……え、」
 「うわぁ、こんなとこで告るとかどんな公開処刑だよ……エリートこええ」
 「あっ、あのっ、わたし、」

 はカッと顔を赤くすると、おろおろと俺と昏田の顔を交互に見る。昏田が溜息を吐いた。
しかしそんなことに構ってはいられない。これは大事なことだ。昏田がいるなら、尚のこと。

 「おまえが俺のことを苦手に思っているのは重々承知だ。だが、だからといって諦められない。俺の苦手なところがあるなら、正直に言ってくれ。直す努力はいくらでもする。それから――」

 俺がすべて言い切らないうちに、は「もっ、もういいです……! わ、分かったから!」と言って隣に立つ昏田をずいっと俺の目の前に押し出した。ちょっとさん! と昏田が抗議の声をあげたが、は昏田の後ろで小さくなって首を左右に振っている。どうしてそんな反応をされるのか分からない。
 
 「? いや、俺はまだ言いたいことが……」
 「あ、あのっ、わたし、狡噛くんのこと苦手とか思ったことないよ、ほんとに!」

 昏田の腕にぎゅっとしがみついてが言う。その様子を見たら、こう言わざるをえない。

 「え、あ、いや……気を使わせてしまって、悪い……」

 昏田を放すまいとしている、されるがままでいる昏田を見て、俺の言葉は尻すぼみに消えていくようだった。
しかしが勢いよく昏田の陰から飛び出してきたので、思わず目を丸くした。

 「ほ、ほんとだよ! ただっ、ただわたしっ、狡噛くんのこと、ず、ずっと、あ、あの……好き、で……、だから、うまくおしゃべりできないし、そもそもわたしじゃ狡噛くんと一緒にいるのって不自然っていうかっ! ……狡噛くん……?」

 の言っていることの半分も理解できなかったが、俺の耳は自分に都合のいいところだけは簡単に拾った。

 「すまん……もう一度言ってもらえるか」
 「え? な、何を?」
 「俺のことを、どう思ってるのか、もう一度聞かせてくれ」
 「え……あ、えっと……」

 また昏田の後ろに隠れようとするので、細い腕をぐっと掴んだ。力の加減を間違えてしまったら、折ってしまいそうだとすら思った。俺は慎重に力を緩めた。もちろん、簡単には逃げ出せないように。それでも、が本気で抵抗すれば外せるようにはしておく。これで嫌われたら世話ない、という話だ。

 視線を泳がせるの目をなんとか捕まえて、俺ははっきりと口にした。

 「おまえが言わないなら、俺が先に言う。俺はが好きだ。おまえに嫌われていると思ったら苦しい。だが、おまえも俺と同じ気持ちだと言うなら、これ以上に嬉しいことはない。俺は、の恋人になりたいんだ。嫌か」

 嫌か、と言った俺に、は驚いた顔で「いっ、嫌なわけないよ! わたしだって狡噛くんのこと、あの、好きって……言った、でしょ……?」なんていじらしく上目遣いで言うので、俺はちらっと昏田に目をやると、「……その割には昏田と仲が良いな」と言った。ついでに「ギノともだ」と付け足す。は今度は戸惑った様子で、「へ? あ、うん。だって、ふたりともわたしの相談に乗ってくれるから……」と答えた。

 「俺ではダメなのか」
 「だめっていうか……相談の内容、狡噛くんのことだから……」
 「なら尚更だろう。俺に直接聞いたほうが早いと思うが。……俺には言えないことか?」
 「……そうじゃないんだけど……うう、なんて言えばいいの……」

 歯切れが悪い。

 「……やはり俺に悪いところが――」
 「ちっ、違うよ! あの、だから、つまりね?」

 は苦しそうな――いや、困ったような顔で「狡噛くんみたいなすごいひと相手じゃ、わたしなんかって、思って、だから、」と目を伏せた。よく分からないが、俺とでは何かいけない理由がある。の今までの態度はそれが原因だと捉えていいんだろうか。となると……。

 「それはどういう意味だ? 俺がに釣り合わないというなら――」

 「ちょっと待ってなんでそうなるの?! 狡噛くん自分のこと全然分かってないね?!」

 「? あ、あぁ、そうか……すまん……」

 「あ、謝ってほしいんじゃなくてね? ……なんて言えば伝わるのか分かんないけどっ、とにかくわたしは狡噛くんのこと好きってことだから、苦手とかそういうのは全部誤解だってことなのっ!」

 好きってこと。苦手だというのは誤解。これを聞いただけで、俺は心底ほっとした。そうなると、欲が出てくる。たとえ俺は昏田(そしてギノ)にはまだ追いつかないとしても――現に今、は昏田をどこへも行かせまいとしている――いつかは、と希望が持てる答えだ。


いつかは、俺が、の恋人に――と。


 「……そうか、なら、いいんだ。……
 「は、はい……っ!」
 「次の、非番なんだが」
 「……はい」

 のなんとも言えない声音に、昏田が面倒そうに溜息を吐いた。

 「昏田ではなく、俺とどこか出かけないか」
 「え……」
 「だめか」
 「えっ、だ、だめじゃないけどっ」
 「『けど』、なんだ」

 それは……と言葉を詰まらせるに、俺はたたみかけるようにして「……俺がおまえに苦手だと思われているのが誤解だと言うなら、断る理由があるか? ……いい加減、『その日は予定があるから』は通用しないぞ。それに、ギノとはふたりっきりでも構わない、昏田とは出かけられる。それでいて俺とは無理だと言うなら、やはり俺はには苦手だと思われている、嫌われているんだと捉えるぞ」とこの物言いは少しきついか、と思いつつも、昏田のそばを離れようという気がまったく見られないので仕方ない。嫌われていないというのなら――少なくとも、自分が好きだと思う女性から「好意がある」のだと言われて浮かれない理由が俺には思いつかない。ここまで随分と苦労した。ずっとつれない態度だったのだ。意地の悪いことの一つでもしたくなるというものだ。

 は眉を情けなく下げると、子どもが言い訳をするときのような口調で、「……だ、だって……あの、伸元くんとはずぅっと一緒にいたお友だちだし、それに相談にも乗ってくれるし、あと優しいし――」と俺の表情を窺っている。

 「……俺は優しくないか? それなら昏田は?」
 「ここで俺の名前出すのやめてくださいよ。ていうかさん、いつまでひっついてるつもりですか」

 昏田がぎゅっと絡んでいるの手に、そっと手をやる。振り払うつもりはないのが丸っきり分かる。女性の細腕を乱暴に振り払えというわけではないが、を中心に考えた俺と昏田との立場では、考えるところがなくもない。なんだか胃のあたりがカッカと熱をもっているような感覚がする。しかしそんなことは俺以外に知れることではないので、は一瞬きょとんと目を丸くさせて、「え? そ、そんなことないよ!」と慌てた様子で言った。それから「狡噛くん、いつもわたしのこと、あの、き、気にして、くれてるのは、分かってるので、あの……」と唇を噛んだ。いじらしいな、とまた思う。

 「昏田は?」

 「え、昏田くん? ……昏田くんは、ええと、話しやすいし、色々、経験豊富っていうか……アドバイス上手で……ね? そうだよね昏田くん!」

 「ハイハイ、それでいいですから離してくださいよ」

 がくがくと昏田の腕を揺らすに、昏田はうんざりだというように投げやりに応えた。
なるほど、と俺は納得する。

 「……確かに俺は、まだ現場での経験は浅い。おまえの悩みの相談に乗ってやるには、力不足だと思うが――」
 「あっ、その“経験”ではないんだけど……」
 「……狡噛さんエリートとかいってバカなんですか?」
 「?」

 どういうことだ? と俺が聞き返すまえに、は気まずげな顔をした。

 「ご、ごめんなさい、そうだよね、狡噛くんはそうだよね、ごめんなさい……。え、えっと、えーと、とにかく、」

 俺に「好意をもっている」というのを聞けただけで良しと思うべきところだろうが、この流れは「それはそれで、これとは別」というような感じで進展には繋がらないのでは? と、ふと思った。そうとなれば、今この場で何かチャンスを掴まなければ。と、俺が口を開こうとしたとき、昏田が「さん、『うん』て言うだけのことにどれだけ時間かけてんですか。さっさと頷かないと、次の非番はまた俺に付き合ってもらいますよ」と言って、そっとから逃げ出した。……その仕草が妙に優しいところに、もやっとする部分がある。

 「だ、だって昏田くんんん……!」

 そんな泣き出しそうな顔で、昏田に甘えて見せるにも。

 「おい昏田、非番には俺が付き合うと言ってるだろう。にばかり負担をかけるな」

 俺がそう言うと、昏田はやはり面倒そうに溜息を吐いた。先程よりも嫌そうな顔をしている。それから「じゃあとりあえずさんに『うん』て言わせてくださいよ。この際もう多少強引でもいいんで」と言って、ひらひら手を振りつつ立ち去っていった。その後ろ姿に必死に手を伸ばすには悪いが――。

 「く、昏田く――」
 「そうか。何度もを誘い出すことに成功している昏田がそう言うなら、間違いはないんだろうな。――
 「ひっ、え、は、はい!」
 「次の非番は俺とドライブ、そのあとは食事だ。いいな」
 「う、あ、は、はい……」

 「よし、仕事に戻るぞ」


 どこへ出かけよう。食事は何がいいか。イタリアン? フレンチ? 和食もいい。は一体何が好きだろうか。
何事も初めが肝心だ。そうだ、予定はふたりで立てたほうがいい。たとえばの部屋で、とか。

 そこまで考えてみて、これからがとても楽しみだと俺は思わず笑った。






画像:はだし