「ったく、ツナの野郎はだらしねーな」
「まったくだわ。ねえ、やっぱりツナなんかやめておきなさい」


シャンパンを片手に笑うリボーンさんに寄り添う、ビアンキさん。

美男美女同士、このお二人は本当にお似合いなんだけれど…今はそうは言い難いかもしれない。なぜなら、ビアンキさんはこのプロジェクトのために、幽霊役としてそれらしい恰好をしているからだ。白いワンピースはどこか薄汚れていて、おまけに口には血のりがべっとりとついている。

「ふふ、でも、本当にその衣装も血のりも、よく出来ていますね。それにビアンキさんの演技も真に迫るものでしたから、綱吉くんがびっくりして倒れてしまうのも無理ないです。ディーノもそう思うでしょ?」

「確かに、こりゃハリウッドでも通用するような出来栄えだぜ。それにしたってひどいじゃねーか。お前、このパーティーがどんなもんか知ってて知らねーフリしてたなんて。オレにくらい教えてくれたっていいじゃねーか。仲間はずれなんて意地悪だぞ」

口を尖らせて拗ねた顔をしてみせると、ディーノはわたしの肩に顔をうずめた。

「ちょっと、もう子どもじゃないんだから!第一、あなた嘘がつけるタイプじゃないでしょ?だから内緒にしてたのよ。悔しかったらもう少し大人になりなさいよ、キャバッローネのボスなんだから」

「はいはい、分かったよ。で、ツナに種明かししねーでいいのか?
せっかくのバースデーなのに、このまんまじゃあんまりだぜ。」



ディーノのその言葉に、それもそうねと言ってビアンキさんは着替えに向かった。
リボーンさんはほんの少し、残念そうだったけれど。


「それにしても、ボンゴレ式のバースデーというのは規模からして違いますね。幽霊の格好をしたビアンキさんを本物に見えるようにホログラムとして空間に映し出したり、リアルな触感のある血のり…あのジャンニーニさんが開発して下さったものなら、綱吉くんが騙されても仕方ない気がします」

「いや、まだまだ修行が足りねーんだあのバカツナは。というわけで、来年はスケールアップするぞ」

「いやだわリボーンさん、今年のお祝いが終わらないうちにそんなことを言って」

「いいや、こういうのは綿密に計画を練ることが重要だからな。…ま、その前にツナを起こしてやれ。そういうわけでオレも忙しいからな、さっさとメインに入るぞ。京子とハルが控え室にいる。準備してこい」

「ふふ、綱吉くん、びっくりするでしょうか」
「そうでなけりゃ失敗だ。ま、バースデーが婚約パーティーにすり替わったらいくらなんでも驚くだろ」





リボーンさんのちょっと意地悪な笑顔に見送られて、わたしは純白のドレスが待つ部屋へ―――――。