みんなだいすき、なんてつまらないことを吐く薄情な唇など、塞いでしまいたいのに。
おまえのことが、狂おしいまでに愛しく、愛おしいほどに私は狂ってゆく。
緩やかに、速やかに。無邪気に笑うおまえを後ろから抱き込む私のこの狂気など、おまえは気付かない。
私はおまえをこうして少しずつ、蝕んでゆく。
「ん、くすぐったいよ、」
耳の後ろをぺろりと舐め上げると、は身を捩って笑い声を零す。
ああ、それすら飲み込んでしまいたい。私の中に、おまえを全て取り込んでしまいたい。
そうすればきっと、この上ない。ああ、至福。ああ、言葉にし難いこの悦楽、おまえは私を蝕んでゆく。
――――このまま、おまえの全てを喰らってしまおうか。
「、あっ、」
の携帯から陽気な流行歌が流れ出すと、彼女は声を上げてさっと私の腕から逃れ、
すぐに携帯を開いて何度かボタンを押してしばらく、笑った。
瞳には純粋な楽が見られ、私の胸の内は瞬く間に激しい憎悪の念で燃え上がった。
、おまえはいつもそうして、私の手から擦り抜けてゆく。
おまえを愛しているのにどうにも出来ない私を、孤独に置いて。
「ふふ、ねえ光秀さん、慶次がね、」
おまえのその無邪気さが私を悦ばせ、私は嫌悪する。
思い通りにならないことが気に入らないのではない。
おまえが私だけのものでないことが、我慢ならない。
「」
「え、は、はい、」
「おまえは、私のことを愛していますか?」
「っ、は、はい?!」
全身に火でも纏ったかのように、全てが赤く染まった。
閉じ込めてしまいたいくらい?いいや、殺してしまいたいくらい、愛らしい。
ずい、と身体を前のめりにに近づくと、彼女はますます赤くなった。
ああ、ああ、そうだ、そのようにもっと私に、おまえを毒に浸らせて。
「っ、あ、み、みつひでさ、っち、ちかい!で、す、」
「おまえは私の恋人です。近づいていけないことがありますか?そんなことよりどうなのです。、おまえは私を愛していますか?」
逃れようとするの身体を腕を引っ張って引き寄せ、耳打ちするように言葉を直接脳天へ注ぎ込む。
産毛が粟立ち、羞恥に小さく震える身体。食べ尽くしてしまいたい!肉も!骨も!血の一滴すら残さずに全て!
「み、つひで、さ、」
「さあ、どうなのです。全て吐き出しておしまいなさい。その吐息すら残さず、私が食べてあげますよ」
かわいい。やさしい。きれいな。この世の者は夢想する。この穢れない少女に、己の安らぎを。
そして彼女はその欲望に塗れた名ばかりの安らぎを、何の躊躇いもなく受け入れると言う。
みんなのことが、だいすき。
愚かな。かわいそうな。あいらしい、私の。おまえは知らない。
この世の全てが嘘偽りばかりの仮初めの幸福に満ち満ち、おまえのような者を喰らい尽くしてしまおうと、
すぐ目の前の暗闇で大口を開けていることを。
無論私も、
「、おまえを愛しています。おまえの全てが、私は欲しい」
「、わたし…、ずっと、ずっと光秀さんの傍に、いたい、」
ああ、おまえのその曇りなき眼が、私の与える絶望で輝きを失う時、私はどれだけの享楽に身を焼かれるのだろう。
「――――そうですか、ふふふ、嬉しいことですねえ、……」
おまえを失うかもしれない恐怖に怯えながら、それすら楽しもうとする快楽主義。
ああ、ああ、おまえを縛りつけておけないのなら、刹那の為に――――――
おまえを殺してしまおうか?
それが世界のセオリー