そんな風に見つめないで。 そんな風に呼ばないで。
そんな風に囁かないで。
そんな風に誘わないで。
そんな風に触らないで。
そんな風にしないで。
そんな風に扱わないで。
そんな風に愛さないで。
そんな風にお前は、俺のする事にいちいち難癖を付けてくる。
顔を真っ赤にして、目が溶けてしまうんじゃないかというくらいに、ぼろぼろ涙を零して熱っぽく俺を見つめながら。
俺は別に泣かせたいと思っていないし、純粋に彼女を可愛がっているだけなのだが、どうやら彼女にとってはそうは取れないらしい。
白い項を隠す髪をそっと指に絡めてしまって、露になったそこへ唇を落とす。
びくりと震えた肩にくつり、笑ってそのまま、耳元で低く名前を呼ぶ。
、そんなに泣いたら、瞳が溶けてしまうかもよ。
そうしたら、それを舐め取ってしまってもいい?
彼女は言う。
そんな風に囁かないで。
そんな風に甘い言葉をくれないで。
俺も負けじと言う。
そんな風にっていうのは、こうして耳元でという事?
そんな風にっていうのは、君とひとつになってしまいたいという事?
熱っぽい身体を抱きすくめて、反応を楽しむ。
彼女がどういうつもりで俺を拒むのか、解らなくはないが、かといって直してやる気はない。
そんな必要はないのだ。
俺は元々こういう気質の人間でなかったのだが、彼女が俺を変えた。
いや、俺達は出会うべくして出会ったのだから、俺が変わる事は必然。
彼女は俺を変える為に俺の前に現れ、俺は彼女の為に変わる為、彼女と出会ったのだ。
全ては初めから決められていた。
俺が彼女を愛する事も、彼女が俺を愛する事も。
だから、どうあっても彼女が俺を本当に拒絶する事は出来ないし、俺は彼女を愛する事を止められないのだ。
つまり、今こうして俺が君を寝室へ連れていく事もまた、必然と言えるわけだ。
「……そんな風に難しいことを言わないで」
「難しいことなんか言っていないよ。と俺の関係、そのままじゃないか」
「そんな風に誤魔化さないで、理由にならないもの」
「そうかな、俺達が愛し合う動機にしたら、充分すぎやしないかい?」
「そんな風に、簡単に言わないで」
ならば一体どうして、君への愛を形に出来るのだろう。
どれだけ愛しても、君がそれを受け入れない。
言葉や仕草で伝わらないなら、いっそひとつになってしまうしかないでしょう。
そんな風に簡単に言わないで?
さぁ、それはどうかな。
簡単かどうかは分からないよ。
俺次第、君次第だ。
とにかく、そんなにも不安なのに、それ故に俺を信じられないと言うのだ。
大人しく寝室まで、抱かれておいで。
話の続きは、ベッドの上で。