酷いお人。こんなに、欲しがっているのに。あなたが望むように、ねだっているのに。一体何が足りないというの。意地悪く笑うあなたの手が、私の髪をそっと梳く。どうしろと言うの、私に、これ以上どうしろと。ああ、あなたという男は、沢田綱吉、あなたは、鬼畜「欲しいならねだれよ。得意だろ?男に媚びるのは」「そんなっ……、ど、うすれば、ご満足、いただけますか、」「そんなの、俺よりお前の方がよく知ってるだろ?」「っ、」真っ赤な革張りのソファに、ゆったりと足を組んで座っている男は、にたりと笑った。細く長い指が、革を叩く。楽しんでいるのだ。私を見下して、なぶって、どこへも行けないようになればいいと思っているのだ。恐ろしい!激しい動悸に震える二酸化炭素を吐き出して、ゆっくり、彼に近付いていく。目の前までくると、足元に跪いて、縋る。どうか私を、愛して下さいませ。男に媚びるしか脳のない哀れな女に、どうか慈悲をお与えになって下さいませ。視界はすっかり霞んでしまって、彼が今どんな顔で私を見ているのかさえ、分からない。それでも私は悔しくて、強く唇を噛んだ。どうして、私がこんなことを!「お前にはもっと相応しい誘い方があるんじゃないのか?」「っ何を仰せになりますかっ!」「……お前こそ、誰に物言ってんだ?お前はボンゴレに逆らって麻薬の売買をしていたファミリーのボスの娘。本来なら殺されてる所を助けてやったのは誰だったかな、。物覚えのいいお前は、ちゃんと分かってるよな?」「っも、もちろん、です、な、生意気なことを……っも、申し訳、ありませんでした……っ、」「なら、どうすればいいか分かるよな?」「あっ、」組んでいた足を勢いよく解かれて、私の身体は簡単に床に倒れた。もちろん彼は、私が床に伏すのを見たくて、その為に長い足で私を蹴飛ばしたのだ。こんな、屈辱。確かに父は、同盟ファミリーの中で禁止されている麻薬の売買を行なっていたようだけど、私は彼にここへ連れて来られるまで、そんなことは一切知らなかった。ファミリーのことだ、流石に関係ないとは言わない。けど、私がこんな目に遇う理由にはならないはずだ。ひんやり冷たいガラスの床に爪を立て、歯を食いしばる理由には。しかしだからと言ってここで彼に逆らえば、命はない。だから、爪を立て、唇を噛み、心の中で恨み言を吐きながら、媚びるしかないのだ。ああ、優しい顔をしているくせに、言うことは意地が悪く、やることはえげつない。私は返事の代わりに、彼の足の間に自分の右足を滑り込ませて、両手を彼の肩に置く。ゆっくり腰を下ろして、右太股に跨がって、耳打ちをする。気持ちが悪くなるような甘ったるい声色で、綱吉さま、と彼の名前をなるべく愛しそうに呼んで、そのまま舌で耳に水音を流し込む。私の背中を、大きな手が行ったり来たりしながら、反応を伺ってくる。知らないわ、そんなこと。「、欲しい?俺が」「……、ほ、しい、です、」こんな屈辱ってないのに!私が日に日に、あなたへの殺意を忘れてしまう程にあなたを愛しはじめていることまで知った上で、こんなつまらないお遊びをしているというのなら、沢田綱吉、あなたって本当に、
鬼畜なひと。